ドップラー効果の式の導出

はじめに

真空中を伝わる光のドップラー効果については、次の式が成り立ちます。

\[ \frac{\lambda-\lambda_0}{\lambda_0}=\frac{v}{c} \]

ここで、\(\lambda_0\) は本来の波長、\(\lambda\) は観測される波長、\(v\) は光源が観測者から遠ざかる速度、\(c\) は真空中の光の速さ(約 \(3\times10^8\,\mathrm{m/s}\))です(これは、\(v\) が \(c\) に比べて十分小さい場合に成り立つ式です)。

このページでは、この式を導きます。

[1] 波の発生源が静止している場合

まず、波の発生源が静止している場合を考えます。波の発生源と観測者との距離を \(d\) とします。時刻 \(0\) において波が発生し始め、この時刻に発生源を出発した波が時刻 \(t\) において観測者に到着したとします。

[1]波の発生源が静止している場合

単位時間あたりに発生する波の「個数」を \(f\) とすると、距離 \(d\) の間に \(ft\) 個の波があることになります。よって、この場合の波長を \(\lambda_0\) とすると \[ \lambda_0=\frac{d}{ft} \tag{1} \] となります。

[2] 波の発生源が観測者から速度 \(v\) で遠ざかっている場合

次に、波の発生源が観測者から速度 \(v\) で遠ざかっている場合を考えます。時刻 \(0\) において波が発生し始め、この時刻に発生源を出発した波が時刻 \(t\) において観測者に到着したとします。時刻 \(0\) における波の発生源と観測者との距離は、[1]の場合と同じく \(d\) とします。

[2]波の発生源が観測者から速度vで遠ざかっている場合

単位時間あたりに発生する波の「個数」を、[1]の場合と同じく \(f\) とします。今度は[1]の場合と違って、時間 \(t\) の間に波の発生源は \(vt\) だけ観測者から遠ざかります。したがって、時刻 \(t\) では発生源と観測者との距離は \(d+vt\) となります。この距離の間に \(ft\) 個の波があるので、この場合の波長を \(\lambda\) とすると \[ \lambda=\frac{d+vt}{ft} \tag{2} \] となります。

ドップラー効果の式の導出

波の伝わる速さ(光の速さ)を \(c\) とすると、[1]、[2]いずれの場合も \[ d=ct \tag{3} \] が成り立ちます。

式(1)、(3)より \[ \lambda_0=\frac{ct}{ft}=\frac{c}{f} \] 式(2)、(3)より \[ \lambda=\frac{ct+vt}{ft}=\frac{c+v}{f} \] となるので \[ \lambda-\lambda_0=\frac{c+v}{f}-\frac{c}{f}=\frac{v}{f} \] したがって \[ \frac{\lambda-\lambda_0}{\lambda_0}=\frac{\,\dfrac{v}{f}\,}{\dfrac{c}{f}} \] すなわち \[ \frac{\lambda-\lambda_0}{\lambda_0}=\frac{v}{c} \] となり、ドップラー効果の式が導けました。