小樽商科大学地域研究会は、文部科学省特別教育研究経費(研究推進)に採択された「グローバリズムと地域経済」を研究テーマに、過去2年間の研究活動を行ってきた実績を踏まえ、学内の重点研究をリードする研究組織として今年度整備したものである。
平成21年8月10日(月)、小樽商科大学札幌サテライトにおいて,韓国を代表する企業グループの一つサムソン経済研究所顧問Jung Ku-Hyun(チョン・グヒョン)氏を招いて、地域研究会主催公開講演会「世界金融危機と東アジア経済~北海道への示唆~」が、開催されました。
【スケジュール】
18:05 山本学長によるご挨拶
18:20 Jung Ku-Hyun 氏による講演(逐次通訳)
19:35 休憩
19:40 質疑応答
20:00 講演終了
【当日配布物】
リーマンショックで、トヨタをはじめ、日本の大企業も大きなダメージを受けた。特に経済基盤の弱い北海道は、そのあおりを大いに受けている。本日の講演会は、世界規模で大きな地殻変動が起こっている現在、この地殻変動をどう読み取ったかというヒントをはじめ、北海道に対する示唆点もカバーし、実体経済で大きなダメージを受けた日本、および北海道がダメージからの解決策を考える上で、一助となればと考えている。
(1)世界経済危機:原因と見通し
(2)韓国経済および政策への影響
(3)中国と日本への影響
(4)地域協力:金融部門と実物部門
(5)企業への影響:日本対韓国
(6)北海道経済への示唆
Q1 日本の政府が持つ「限られたオプション」についてもう少しお話いただきたい。
以下の理由等で日本政府がとれる対策が限定的であり、積極的な対策をとることが難しいこと。
ゼロ金利政策を長期間とっており、これ以上の通貨対応策が難しい。
財政赤字:累積赤字がGDP200%を超えている。
OECの中では一番大きい財政赤字を示している。
人口減少の問題もある。
Q2 韓国の培った「危機管理能力」について、韓国経済の対応の柔軟性の理由とは
政府、および企業の官僚主義的なところが少ないということ:危機に対して臨機応変的に対応できる能力がある。97年の金融危機の際に培われた能力、衝撃に耐えうる側面によるもの:例:保守的な運用ー負債比率等、経済政策に対して柔軟性が体質化されている。
Q3 北朝鮮問題について、韓国がどう考えているかについて。
北朝鮮には2つの問題がある。
1.核兵器製造問題→決して北朝鮮は核を放棄しない
2.金正日氏の後継者問題
Q4 地域内通貨協力の将来的な方向について。
アジア内通貨協力が必要だ。ただしアジア通貨基金や地域通貨ブロックは非現実的である。
理由としては、CMIの1200億USドルは、額が3か国の外貨保有高の総額(3兆円)に比較するとそんなに大きくないにも関わらず、日本と中国で合意を得るまで時間がかかった経緯がある。アジアの金融協力はナショナリスティックな対応が足をひっぱるような形で、本格的に協力体制にいたるのはなかなか難しいという見解である。
Q5 資本主義と経営哲学に新しい価値観が生まれるかもしれないとあるが、
日本やヨーロッパの哲学がどのように吸収されていくのか。
日本やヨーロッパは、中国やインドのように高度成長をずっと続けられる状態にない→高度成長を超えた社会である。成長の後の時期の価値観を見出さないといけない地域。
京都協定以降のアジアを考えた場合、先進国や新興国の価値観の対立をうまく回避していくか、というのが大きなイシューであり、韓国は日本やヨーロッパの次世代の価値観をモデルとして学ぶ必要があり、そのような学ぶ姿勢が大事なのではないか。
Q6 東アジアの経済的hubはどこであるかと、その具体的なイメージについて。
東アジアには6つの大きなハブがある。韓国:ソウル、日本:関西と関東、中国:上海、天津、香港。これからhub以外にもsubhubがたくさん出てくるであろうし、北海道もそのひとつである。人的ネットワークと物流も含め、いかにhub間を結び、連携を考えるのか。中国が今後台頭してくる間に、アジアの中でいかに連携をはかるか、ネットワークを強化するか、というのが大事な考え方だと思われる。
Q7 国際資本移動の世界的取り組みにおいて、どのようにお考えなのか。
IMFの役割をどう考えていくか。アジアの金融危機のときに、IMFから融資を得たが、その際にたくさんの条件を課せられたのも事実である。ただしIMFに代わる機関を作ったほうがいいかというとそうではなく、IMFのガバナンスを立て直すという議論に今後なっていくのでは、と、思われる。
「世界金融危機と東アジア経済~北海道への示唆~」(2009年8月10日開催)にご参加いただいた方からのアンケート結果及びご意見・ご感想を掲載いたします。(参加者60名中27名の方にご回答いただきました)
アンケート結果