*報告要旨は、第7回を除き各報告者が執筆したものをそのまま掲載した。執筆時期は各報告終了から1999年6月までの間である。第7回は幹事(長塚)が執筆し、苑原助教授の校閲を仰いだ。
第1回(通算第15回) 4月15日 報告者:長塚
真琴(小樽商科大学助教授)
「連載漫画の登場人物の著作権保護―ポパイ[ネクタイ]事件―」
最判平成9年7月17日(民集51巻6号2714頁)、いわゆるポパイ[ネクタイ]事件判決の評釈。本判決で判断の対象となった知的財産法上の多様な争点のうち、以下のように著作権法上の争点を中心に報告し、最後に不正競争防止法上の争点についても簡単にふれた。
報告者は、本判決が最高裁として初めて、漫画のキャラクターは漫画から独立した著作物ではないと明言したことに賛成した。また、被告のネクタイの図柄が、著作権の消滅した第1回作品を複製したものとされ、原告の請求が棄却された結論についても賛成した。しかし、その結論を引き出すために、後続の漫画は先行の漫画の二次的著作物であると述べている点については、そのような一般論を述べずとも同じ結論が得られたのではないかと疑問を呈した。さらに、被告による著作権の準占有・時効取得が認められなかったことにも賛成した。
引き続き行なわれた討論では、キャラクターの本質、キャラクターを漫画の著作権によって保護することの意義と限界、商標権と著作権との関係、著作権の準占有と賃借権の準占有との比較、等の諸点について、活発な議論が交わされた。
なお、この報告の後に脱稿した同名の判例解説が、ジュリスト1135号(臨時増刊・平成9年度重要判例解説)265頁(1998年6月)に掲載されている。
第2回(通算第16回) 5月20日 報告者:田中
康博(小樽商科大学助教授)
「判例研究:いわゆる位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権―最判1997年12月8日民集51巻10号424頁、判時1625号41、判タ959号153頁、裁時12010号4頁」
建築基準法42条1項5号による位置指定をうけ、現実に通路として開設されていた私道の通行妨害に対して、従前からこの私道を自動車通行を含め利用していた付近住民がその排除・予防を請求した事例に関して、最高裁として初めて積極に解した判決である。本判決以前に最高裁は2つの判決(最判1991年4月19日金商872号42頁、最判1993年11月26日判時1502号89頁、判タ875号100頁)は、排除請求を否定する判断を示していた。しかし、それにも拘わらず、91年・93年判決の事案との関係から下級審判決・学説は消極には解せずに積極的に解する従来の立場を維持していて、93年判決後であっても、建築基準法に所謂道路が現実に開設され、私人が通行している場合にこれが妨害され、妨害により、日常生活に支障が生じるときには、妨害排除請求を認める判決が最高裁により示されるということが予想されていた。このような意味では本判決は将に予想されたものであった。
本判決は、このような状況にあって、建築基準法に由来する反射的利益であっても、それが通行者にとって当該私道通行が日常生活に不可欠の利益となっている場合には、通行妨害の排除・予防を請求できる「人格権的権利」が生じるとして、通行妨害の排除・予防を認容した。本判決によって従来下級審・学説において争いがあったいくつかの問題は解決された:排除の法律構成がそれであり、また、権利内容もその一部について、解決を見たといってよい。しかし、本件は指定幅員(4メートル)が確保されていて且つ通行者が従来から自動車通行をしていた5号道路にについて自動車通行も権利内容に含まれるとしたにすぎないのであって、4メートルの幅員が確保されていない、したがって必ずしも、自動車通行が容易ではない建築基準法42条2項によるみなし指定をうけた私道についても、このような権利内容が認められるかは未だ不明である。また、本判決は、私道敷地所有者が通行者の「通行利益を上回る著しい不利益を被るなどの特段の事情」があれば、敷地所有者は通行を制限できるとするが、本件ではこのような事情はまったく認定されていないので、今後「特段の事情」の具体化及び制限の具体化が必要である。
なお、本報告は、判例評釈として判例評論474号(判例時報1640号、1998年8月1日号)に掲載されている。
第3回(通算第17回) 6月7日 報告者:田邊
宏康(小樽商科大学助教授)
「有価証券の効力発生に関する若干の考察」
手形については古くからその債務の発生原因が「手形理論」として論じられてきたが、いかなる時期にいかなる要件の下で権利が証券に表章されて有価証券の効力が発生するかという点はすべての有価証券について問題となる点である。報告においては、手形理論と株券の効力発生時期に関する議論の概要を紹介したうえで、上の問題点について以下の見解を示した。
排他性のない権利を表章する有価証券においては、その効力発生について権利外観理論あるいは創造説などの単独行為説の適用を認めてもそれ以前に存する権利に影響を生じないものと解することが可能であるが、排他性のある権利を表章する有価証券においては、その効力発生について権利外観理論などの適用を認めればそれ以前に存する権利に影響が生ずることから、直ちにその適用を認めることは妥当でなく、そのような有価証券の効力発生についてはそれ以前に存する権利を有する者の承諾が原則として必要なものと解すべきである。
討論においては、青竹正一教授、田中康博助教授などから有益な教示をいただいた。なお、本報告の内容は「有価証券の効力発生要件と設権証券性」という題目で、加藤勝郎先生・柿崎榮治先生古稀記念・社団と証券の法理(商事法務研究会、1998年12月発行予定)に掲載する予定である。
第4回(通算第18回) 6月17日 報告者:道野
真弘(小樽商科大学助教授)
<判例研究>
「株式会社の実質上の経営者に商法266条の3第1項を類推適用して損害賠償を認めた事例―東京地裁平成2年9月3日民事17部判決(判例時報1376号110頁)」
「取締役の会社に対する任務懈怠による損害賠償責任につき過失相殺の法理を類推して損害額が減額された事例―東京地裁平成2年9月28日民事6部判決(判例時報1386号141頁)」
昨今の不況に際して、最も厳しい責任追求をされているのは取締役および代表取締役である。株主代表訴訟の提起が容易になったこともあるが、取締役たる地位が、単にその俗的な意味での重要性(法的にいえばその地位の有する権限の大きさ)だけでなく、責任の重さが認識されたことは一方では喜ばしいことである。ところが他方では、アメリカの事例が典型的に指し示すように、その責任の重さゆえに取締役になり手がいないなどの問題も生じるようになっている(本報告と直接の関係はないが、経営判断の原則などの理論が生み出されていることは取締役の責任軽減のためである)。
さて、今回の報告で取り上げた判例は、ひとつめは取締役たる地位にないが実質的に経営を行っていたと認めうる者の責任を認めた事例である。「de facto director(事実上の取締役)」理論は、英米法で発展した理論であるが、まさしくそれは前述したように取締役たる地位の責任の重さを回避するために取締役たる地位につかずに取締役と同様の権限のみを行使する者の責任を追求する理論である。本判決は、当該理論を直接適用したわけではないが、実質上の経営者に取締役と同等の責任ありとしている点で重要であり、ここで報告する次第である。
ふたつめの判例は、代表取締役の責任を軽減する方向での判決である。内容的には従業員の職務懈怠も一因となって損害が生じているので、その分を損害額から相殺(過失相殺)している。しかしこの点は、従業員は代表取締役の部下として行動する者であり、その者の職務懈怠も代表取締役の責任であるともいいうる。そのように解すれば、この過失相殺は理由がないのではないかという疑問は残る。また、他の取締役が当該代表取締役の責任を追求しているが、彼らと当該代表取締役の責任の関連が定かでない(主張がない以上当然であるが)。過失相殺とは別に損益相殺理論による損害額の軽減も本判決では行っている。この点は本件が社会問題となるような内容ではなく当該行為の有益性もうかがえるので妥当といいうる。
両判決は別個の事例であって軽々に述べることはできないが、あくまで推測ではあるが(代表)取締役の責任につき重要性を認識し、総論としてその責任を広く認め、各論的にはケースバイケースで責任を軽減させようとしている意味で、ごく妥当な判決といいうる。
第5回(通算第19回) 7月1日 報告者:町村
泰貴(小樽商科大学助教授)
「新民事訴訟法の実務について」
本報告は平成8年に公布された民事訴訟法の全面改正について、その要点と実体法への影響とを紹介するものである。
1.新民事訴訟法の改正ポイント
新民事訴訟法のポイントは、(1)争点整理手続と口頭弁論の充実、(2)証拠収集手段の拡充、(3)少額訴訟手続の創設、(4)裁量上告・許可抗告制導入、の4点にある。
2.実体法からの注目点
実体法から見ると、不法行為訴訟における証明の負担に関連して証拠収集手続の拡充、鑑定の充実、そして損害額の裁量的認定の可能性が注目される。また定期金賠償を前提とした確定判決変更の訴えの創設も、その面の実体法解釈に影響を与えよう。
さらに消費者司法上の問題点として付郵便送達・公示送達が注目されていたが、今回の改正では効率的な事件処理を増進するためにかえって問題が深刻化することも予想される。ただし、管轄に関しては、約款による専属的合意管轄と移送可能性が明確にされたことや、当事者間の衡平を図るための移送が明文化されたことが実体的な消費者保護につながるものということができる。
3.医療過誤訴訟を例とした手続モデル
以上の改正点を織り込みながら、福永有利=井上治典『民事の訴訟』を題材にしてシミュレーションを行い、手続の迅速な解決が可能となることを明らかにした。
第6回(通算第20回) 7月15日 報告者:香山
高広(小樽商科大学助教授)
「フランス抵当法の基本的性格」
従来のフランス民法典研究における抵当法研究の問題点を指摘し、近代市民法の経済基盤をオイコスであることを前提に、新たな視点で抵当法の基本的性格を概観することを目的とする。その結果、近代法が決して商品交換の法ではなく、全く異なる理念で構成されていること、換言すれば、人格的利益を財産的利益に優越するものと捕えられていることを確認するであろう。なぜなら、抵当法が純粋な金融法としてではなく、家族法(夫婦財産法)の一部として成立しており、そのことが、当時の歴史的背景から十分に正当化され得るからである。
第7回(通算第21回) 9月12日 報告者:苑原
俊明(秀明大学助教授)
「先住民族と人権・環境」
いわゆる二風谷ダム事件判決(札幌地判平成9年3月27日判時1598号33頁・判タ938号75頁)を題材に報告した。同判決は、マイノリティの権利に関する自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約、国際人権B規約)27条をアイヌ民族に適用するとともに、その固有の文化を尊重する積極的な責務を政府に課し、それに反する建設大臣の行為を違法としたものである。
本報告では、上記判決において、自由権規約27条が締約国に上記のような責務を課したものと解釈されたことを、妥当と評価した。ただし、憲法13条の「公共の福祉」による制限を受けると判示されたことには疑問を呈した。
上記判決で、裁判所は、アイヌ民族を、民族的マイノリティであるだけではなく先住民族でもあると認めた。しかし、「先住民族としての権利」の適用については態度を保留した。本報告はこの点を掘り下げ、諸外国の裁判例や、先住民族の権利に関する国連宣言案の起草作業等を参照しつつ、アイヌ民族が先住民族としてどのような権利をもつか(特に、北海道に対するアイヌ民族の土地権原もしくは主権)について、詳しく論じた。さらに、環境影響評価制度について、「環境」概念に社会的・文化的文脈を反映し、環境影響評価への先住民族の参加を保障すべきことも論じた。
引き続いて行なわれた討論では、二風谷ダム事件がなぜ国内法の問題にとどまらず国際人権法の問題となるのか、先住民族の権利の帰属主体(個人のみに帰属するのか、それとも個人以外に帰属させることも可能なのか)、アイヌ民族が先住民族としての土地所有権を主張したらどうなるのか、等の点について、活発な議論が交わされた。
なお、本報告の最も重要な参考文献は、苑原俊明「マイノリティである先住民族の権利」ジュリスト1135号(臨時増刊・平成9年度重要判例解説)273頁(1998年6月)である。
第8回(通算第22回) 9月30日 報告者:道野
真弘(小樽商科大学助教授)
<研究報告>
「従業員株主たる地位」(私法学会プレ報告)
本報告は、1998年度の私法学会での報告にむけた予行として行わせていただいた。従業員持株制度は、上場会社ではすでに95%以上が実施しており、かなり普及した制度である。そこでは、従業員が、従業員たる立場で株主としての地位も有するという構図になる。一般的には、会社が中心となって福利厚生の一貫として行われているにもかかわらず、その従業員たる地位という特殊性を加味せずに、従業員株主も他の株主と全くかわらないと考えられている。しかし、果たしてそうなのであろうか、従業員株主は従業員として普通株主とは別の存在と言えるのではなかろうか、というのが私の偽らざる疑問である。従業員持株制度により、従業員は従業員の立場として利益を得ており、その反面で従業員株主は、職場だけでなく株式という自己の資産の面でも会社と「運命共同体」化することや、共益権の行使が容易でないなどの問題点も指摘されているところである。そのように、実際問題として利益の面と不利益の面で一般の株主と別個の存在である従業員株主を、どう保護していくか、というのが最終的な目標であるが、本報告では、株主平等の原則という伝統的理論をもとに、従業員株主の「不平等」性を述べようと思う。
第9回(通算第23回) 10月14日 報告者:片桐
由喜(小樽商科大学助教授)
「介護保険制度の概要と課題」
2000年4月より施行される介護保険法につき、その概要及び現在、考えられうる課題につき報告した。現在の介護体制、すなわち、現行老人福祉制度につき紹介した後、右制度に代えて新たに介護保険法を制定しなければならなかった背景につき、我が国の少子高齢社会等を中心として説明をした。
現在、高齢者が介護を必要とする場合、「措置」と呼ばれるシステムで一定の福祉サービスを受ける。この措置とは、行政庁による一方的な行為であり、高齢者にサービスを求める請求権あるいは選択権といったものは法律に規定されていない。それが、介護保険法においては、社会保険方式をとることにより、被保険者要件を満たす限り、サービスの受給権が確保され、どのようなサービスを得るかは被保険者の選択によることになった。
報告では、この従来型のサービス供給システムと介護保険によるサービスの給付を比較しながら、両者に内在する諸問題等につき指摘した。昨今、介護保険に関わるニュースがメディアに頻繁に登場し、大きな関心を呼んでいるところである。批判的な見解もあるが、報告者としては、介護保険制度の必要性は大きく、従来の措置制度では今日のニーズに十分に対応しきれないとの観点から、介護保険制度の創設につき評価する旨、述べた。
今後の課題としては、介護需要に対し、サービス給付を確保できるか、保険料負担の問題、地域間格差、マンパワーの養成等を挙げた。これらに対しては、諸外国の先行例を参照しつつ、あるいは、試行錯誤を繰り返しながら、我が国の実態にもっとも適した制度内容を作り上げていくことが求められているとした。
第10回(通算第24回) 11月18日 報告者:青竹
正一(小樽商科大学教授)
「新株の不公正発行と取締役の損害賠償責任」
本報告は、新株が著しく不公平な方法によって発行された場合、株主は発行を計画した取締役に対し、商法266条ノ3第1項にもとづき損害賠償を求めることができるかについて、私見を呈示したものです。
報告の骨子は、つぎのとおりです。
T 問題の所在
U 不公正発行と取締役の任務懈怠
(1) 不公正発行の判断基準
(2) 任務懈怠の有無
V 不公正発行による株主の損害
(1) 損害の性質
(2) 損害の発生と損害額
W むすび
本報告の詳細については、判例タイムズ997号に掲載予定の報告者の論文を参照して下さい。
第11回(通算第25回) 12月2日 報告者:神田
孝夫(小樽商科大学教授)
「神田孝夫著『新版・使用者責任』(一粒社・平成10年11月刊)の概説」
報告者から、平成10年11月に上梓された、自著「使用者責任(新版)」(一粒社、B5版、398頁)の執筆意図と、内容の特徴的な部分の説明がなされた。
執筆意図の点では、従来の判例上の問題点を摘示して実務家の反省を促すとともに、後続の研究者にとり参考となりうる資料をできるだけ多く提供することを目指したことが示され、加えて、その意図を達するために構成上ないし技術上の面で苦慮した諸点が述べられた。
内容の特徴点については、責任要件・効果のいずれについても、膨大な量の判決例の分析を基礎に、従来意識されなかった多くの分析視点を提示したうえ、紛争の類型ごとに問題の所在を浮き彫りにして従来の判例・学説に反省をせまるとともに、あるべき解決策の方向性が説かれた。
以上の報告をうけたのち、出席者との間で質疑・応答がなされた。
第12回(通算第26回) 1999年2月17日 報告者:本久
洋一(小樽商科大学助教授)
外国労働判例研究
「労働契約の自動的承継の要件としての経済的実体の同一性の概念」
EC司法裁判所1997年3月11日判決(Case C-13/95, Suezen v. Zehnacker Gebaeudereinigung, 11 Mar. 1997, ECR I-1259)を素材にして、労働契約の自動的承継の要件としての経済的実体の同一性の概念をめぐる、ECの立法と司法との相互交渉を検討し、1998年6月29日のEC指令(OJ L201, 17/07/1998, p. 88)1条1項の解釈の現段階を明らかにするもの。
報告者1:田中 康博(小樽商科大学教授)
「三ケ月章『占有訴訟の現代的意義』(法協79巻2号、1962年、民事訴訟法研究V所収)について〜学説史上の意義」
上記の論文の民法学説史上の意義について、簡単に考察した。
内容;
1.本論文以前の学界状況
2.本論文の内容
3.本論文以降の学説の展開
なお、本報告は、加藤雅信編集代表・民法制定百年記念民法学説百年史(三省堂)に収録される予定である。
報告者2:町村
泰貴(小樽商科大学助教授)
「サイバートラブルと裁判外紛争処理(ADR)」
本報告は、インターネットに関連する法的紛争について裁判外の紛争処理手続(以下ADRという)の必要性・有用性を提示し、そのあり方について検討を加えようとするものである。
ADRについては一般に、手続の簡易性、廉価性、迅速性、専門性、予見可能性、任意性、国際性などの便宜が指摘されるが、特にサイバートラブルにおいては、ネットワーク紛争の専門性に対応可能であること、ネットワークを利用した紛争処理が柔軟に可能であること、国境を越えた組織運営が想定可能であること、ネット村の村八分やメールボムなどの自力救済を法的にコントロールする仕組みとなりうること、そしてひいてはサイバースペースのセルフ・ガバナンスの不可欠なインフラであることが指摘できる。
ここで想定される紛争としては、定型的でかつ迅速な処理が必要な2000年問題、当事者間のコミュニケーションによる解決が特に必要な名誉毀損・プライバシー侵害紛争、ガバナンスの典型となっている商標権とドメインネーム、約款規制が可能な電子商取引に関してのトラブルなどがかんがえられる。
さて、実例としては以下のものがあげられる。
Online Ombuds Office <http://www.ombuds.org/> Last access: 99/02/18
Virtual Magistrate <http://vmag.vcilp.org/> Last access: 98/09/07
Le Cybertribunal
IRIS(Imaginons un Reseau
Internet Solidaire)
<http://www.iris.sgdg.org/mediation/index.html>
Last access: 99/03/09
WIPO Arbitration and Mediation Center
<http://www.arbiter.wipo.int/> Last access:
98/09/07
工業所有権仲裁センター
<http://www.nichibenren.or.jp/tyusai.htm> Last
access: 98/09/07
行政機関およびプロバイダの苦情処理窓口
〜小樽商科大学高度情報化委員会もめごと処理専門部会
以上の実例は実験段階のものが大部分であり、また実用性あるものとしてオープンしていても、必ずしも解決の実績が十分あるとは言い難い。これに対して次のものは弁護士法違反の疑いが濃いと思われる。
Victims Relief System <http://web110.com/service/index.html>
また有名なCyber Angels<http://www.cyberangels.org/>は、自警団的な活動であり、その正当性が問題視されざるを得ない。
以上の実例等の分析から、いくつかの問題点がADRについて指摘できる。まず、裁判外の手続によって解決するための誘因となる要素が必要であること、中立性の確保である。インターネット関係団体やセルフ・ガバナンスを現に担っている機関の下でのADRであることが望ましいが、このことは中立性と緊張関係をもたらす。また実効性を確保することが必要だが、このことは自主規制化の危険も伴う。
本報告の時点では、このように有用性があることは明らかにできたが、現実化するための方法論については、克服されるべき障害を指摘するにとどまり、具体的なあり方を提言することは今後の課題である。
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