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◆ 2019/04/08 企業法学科岩本先生の本が出版されたよ!その(1) ◆

出版会から企業法学科岩本先生の本
「民事詐欺の違法性と責任」が出版されたので二回に分けて
紹介するね。

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岩本先生の専門分野は民法で、特に詐欺や錯誤などを
研究されているね。
 

この本はタイトルにもあるとおり詐欺について書かれているんだ。
「詐欺」とはどんなことかわかるかな?

民法第96条第1項には「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことが
できる」と規定されているね。
岩本先生の本は、この「詐欺」について書かれたものなのだけれど・・・。

ぼくにはちょっと難しいので、岩本先生に詳しく解説してもらったよ。

★具体的にはどんなことが書かれている本なのですか?

この本は、詐欺の歴史理論について書かれています。
詐欺とは、通説・判例の理解によると、間違った情報を「故意」に相手へ提供し、
この誤解した相手に意思表示(≒契約)させる行為
のことです。
問題は、なぜ故意が必要なのか、という点です。
 

  たとえば、中古車の売買契約の場面で、「これは事故車ではないですよ」という
売主の言葉を信じて買主は契約したのに、購入後に調べたら事故車だった場合。
 詐欺を証明できれば、買主は意思表示を取り消すことができて、契約から解放されます。
まず、「事故車ではない」という売主の発言が「間違った情報」であることは確かでしょう。
問題は「故意」です。
故意は個人の内面に関わるものなので立証がとても難しいのです。
売主が「私は事故車ではないと思っていたんです。わざと嘘をついたのでありません」
と言い訳すれば、故意が否定されてしまいます。

 この場合、詐欺は認められず、買主は契約に拘束され続けます。
これでは被害者は救済されません。
そもそも、現実に被害を受けた買主にとって、売主の態度が故意であるか
過失であるか、は重要ではない
はずです。

★確かにその通りですね。
 買主にとっては被害を受けたことには変わりはないですよね。

  人類が発展するにつれて、社会制度は複雑化します。
詐欺の手段はますます巧妙化し、被害は増える一方です
(電話・ATMが発明されたからこそオレオレ詐欺・振り込め詐欺が発生したと言えるでしょう)。
ところが、民法96条の詐欺と故意を結び付ける解釈は、2000年以上も昔の
(ローマ法に起源を持つ)古い解釈のまま、修正されてきませんでした

  なぜ修正されなかったのか?
「故意」にはどのような意味があったのか?
この本では、こうした疑問を解き明かしつつ、「故意」の代わりに「過失」
を設定することで救済ハードルを引き下げるべき理論的根拠
について書かれています。

★「故意かどうか」ではなく、「過失である」と設定すれば救われる人が
増えるということですね。

少し専門的なことを言えば、民事違法論の批判がこの本の主題であり、
「違法性」論争から故意要件の否定を導き出した点にこの本の独自性があります。
故意が維持されてきた原因の一つは、加害者の態度を重視する行為無価値的違法論です。
行為無価値論は戦前のナチズムに由来する全体主義的性格を持ち、
個人的権利よりも社会的利益を優先させるために生み出された考え方で、
たとえ個人の権利を侵害する行為であっても、それが社会全体にとって有用であれば、
その違法性を否定する結論を導きます


★個人よりも、社会全体の利益が重要視されるのですね。

行為無価値論にとって法解釈の基準は「社会全体」(>社会構成員の利益の総和)
であって、その利益を侵害する者には制裁を加える必要があり、その反射的帰結
として制裁を加えるに値するほどの行為態容、つまり故意が求められる、というわけです。

この本は、こうした旧来の違法論を否定し、
むしろ被害者の権利を重視する結果無価値的違法論を支持することで、
「相手方の間違った情報で誘導されてしまった」ことそれ自体を違法として捉え、
故意要件の排除を目指すものです。

日本の民法学は伝統的に行為無価値論に基づいています。
そのため、日本民法学は詐欺の故意要件を維持しながら、「騙された者にも落ち度がある」
という理由で被害者が救済されない実態を正当化してきました。


私には、これが正しい法解釈だとは思えません。
「騙した者勝ち」の世の中でよいのでしょうか?
皆さんはどう感じますか?


岩本先生ありがとうございました。
続きは後日、また紹介するね!

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