図書館から研究室訪問の記事が届いたよ。
今回は、アントレプレナーシップ専攻の内田 純一先生の研究室に訪問したそうだよ。
まずは、先生の研究分野についてお尋ねしたよ。
Q:先生のご専門の一つは観光学ですね、観光学について教えてください。
A:観光学は、多種多様な学問分野に隣接する学際学です。経済学、政治学、社会学、地理学、理系の分野では情報科学、生物学、環境科学など、様々な学問分野をバックグラウンドとし、それらの学問分野の研究手法を用いて、例えば観光現象や、ツーリズムによる問題解決を図ることなどを対象とする研究群の総称が観光学です。
Q:観光学はいつ頃成立した学問なのでしょうか?
A:日本で観光学の名称が四年制大学に正式に登場したのは、1967年の立教大学社会学部観光学科が最初です。もともと立教大学には1946年から寄付講座としてホテル講座がありましたが、今で言う公開講座のようなもので正課ではありませんでした。その後、立教大学は1961年にホテル学科を設置しようとしますが、当時の文部省に申請して却下されました。1964年開催の東京オリンピックを前に、大卒のホテル経営幹部が産業界から求められ、それに応える意図を持った学科だったのですが、学科名に対応する学会がない、つまりホテル学会がないということが却下の大きな原因だったと、後に初代観光学科長となる野田一夫氏は語っています。そこで、1960年代に設立されたばかりであった日本観光学会の名前を拝借し、観光学科として再申請したところ、1967年の学科設置が認められたというわけです。ちなみに私は、後に野田氏が初代学長となる多摩大学に在学していました。
また、1963年には東洋大学短期大学部のなかに観光科が設置されています。こちらも東京オリンピックを見据えて、それまで徒弟制度だったホテル人材の育成を組織的に行うことを狙いとして誕生しています。同短大の観光科は後に四年制の学科として改組され、2017年からは国際観光学部に発展しています。
以上の成り立ちからもわかるように、1960年代の観光学科・観光科が当初目指していたのはホテル経営でした。現在は多くの大学に観光学部や学科がありますが、様々な理由があって、日本ではホテル経営学は主流とならず、様々な学問分野を学際的に包括した現在の状況に落ち着いています。
欧米の場合ですと、日本の観光学部とは違い、ホテル経営学が現在でもコア科目となっています。コーネル大学ホテル経営学部は星野リゾートの星野佳路社長が修士課程を修了したことでも知られていますが、現在もホテル経営のトップスクールとして実務家を養成すると同時に、世界中の観光系学部に教員を輩出しています。
ただ、現在ではホテル経営以外のツーリズム・マジメント科目のバラエティを増やすカリキュラム構成をとる大学が多くなっています。例えば、本学と学生交流協定のあるニュージーランドのオタゴ大学経営学部観光学科では、アドベンチャー・ツーリズムやエコツーリズムが盛んなお国柄を反映して、そうした観光形態に関わる地域計画・開発やアクティビティ企画・運営に関するノウハウを提供しています。新たなツーリズムのニーズに応える形で、研究の領域も教育の範囲も拡大しているのが現代の観光学の国際的潮流です。そのため、経営学的なアプローチだけでなく、様々な学問的手法が観光学に持ち込まれているのです。
Q:観光学の分野で、先生はどのような研究をされていますか?
A:私の場合は、経営学をベースとして観光を研究しています。
一つは、観光をはじめとしたサービス業は、どのように経営されれば生産性が向上し、イノベーションを起こせるのか、といったことについての研究です。私がアントレプレナーシップ専攻で担当するのは「サービスマネジメント」という科目ですが、観光産業だけでなく、サービス産業全般のビジネスモデルが研究対象になります。
もう一つは、観光まちづくりについての研究です。観光を通じて地域の問題を解決するということが最近増えてきています。例えば、産業の全くない地域が観光客を誘致することによって、経済的な活性化を図るといったことですね。まちづくりが停滞していたような地域に、観光客が来ることによって、お金の流れができたり、雇用が生まれたりして、復活の糸口をつかむことがあるんですよね。そのように、まちづくりをどうマネジメントすべきかというのを、経営学にとどまらず行政学や社会学の分析手法なども使いながら研究しています。
そういった研究は一人ではできないので、色々な分野の研究者との共同作業で進めています。
Q: お話しを伺うと、観光学はあらゆる分野を内包した学問のような印象を受けました。それで研究手法も様々な分野の手法を取り入れているのでしょうか?
A:観光学には、独自の学問的手法と言えるものは無いんです。経営学をはじめ、先行する様々な学問分野から持ってきたものが多いんですね。また、別の学問を専攻する研究者が、観光学の学会に学問的な垣根を意識せずに参入することも増えています。そういう意味でも観光学は独自の研究手法を持たない領域科学と言えると思います。観光学だけで成立はできないし、まだそういう現状にもないということですね。
もう一つは、観光学が対象にしている問題、関心が、時代によってどんどん変わっていくことにも関係しているかもしれません。今まで観光学に興味がなかった人たちも、オリンピック開催効果による外国人観光客の増加などで、観光がもたらす現象が自分と無関係ではなくなると、問題解決のためには観光学の分野に関わらざるを得ないということがどんどん出てきますよね。
小樽商大の卒業生のうち、いわゆる観光産業に進む人はそう多くはないと思いますが、どんな仕事に就こうと、観光という現象に仕事上で向き合うことは決して少なくないはずです。そして、その傾向はますます強くなって社会のあらゆる分野に拡大していっています。
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観光学は時代とともに変化し、発展し続ける学問なんだね。
このあと、図書館のサービスについて、先生と職員さんとでお話をしたよ。
内田先生は、とても爽やかな先生だったそうだよ。
内田先生の著作物はBarrelでも読むことができるよ!
以下のタイトルをクリックしてね。
・地方からのサービス・イノベーション創出 観光クラスターをめざす地域資源ベース戦略
・Strategies for Regional Innovation: A Branding Approach
研究室訪問はまだまだ続くよ。
他の先生の訪問日誌もぜひ見てね。
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