図書館から研究室訪問の記事が届いたよ。
今回訪問したのは、企業法学科の菅沼 真也子先生の研究室だよ。
まずは、先生の研究分野についてお尋ねしたよ。
Q:菅沼先生の研究分野は刑法ですね。刑法とは何か、また、学生さんは授業でどういったことを学んでいるか教えてください。
A: 刑法とは犯罪と刑罰に関する法律です。学生さんたちは、犯罪とは何か、どういう行為をしたらどの刑法の条文にあてはまるのか、ということを勉強しています。
Q:先生の研究テーマについて教えてください。
A:私は、故意論、錯誤論をテーマにしています。例えば、ここにある物が他人の物だとわかって盗れば窃盗罪になりますが、自分の物だと勘違いして持って行った場合には、窃盗罪になりません。故意がないから、窃盗罪にならないと考えるんですね。
つまり、わざとなのか、わざとじゃないのかという事が、犯罪が成立するかどうかには、すごく重要な要素になってきます。行為者の認識として、どういう認識を持っていれば犯罪の故意があったと言えるのか、ということを私は研究テーマの一つとしています。
Q:錯誤論というのは、勘違いということでしょうか?
A:そうです。例えば、行為者がAさんを殺そうと思いピストルを撃ったところ、Aさんと勘違いしてBさんを撃ってしまい、Bさんが死んでしまったとします。行為者はAさんとBさんを勘違いしているので、そこに錯誤があるのですが、この場合、行為者は殺そうと思っていたのはAさんであってBさんではなかったということにより、殺人の故意が無くなると考えるのか、それともその勘違いは刑法上考慮しなくてよいから、殺人の故意はあると考えるべきなのか、というのが錯誤論の中身です。この場合は結論としては殺人の故意は「ある」ことになるのですけれど。
こうした色々な勘違い状況を分析し、勘違いがあっても故意を認める場合と、故意を認めない場合との振り分けについて研究しています。
Q:勘違いでも罪にならないケースはあるんですか?
A:あります。例えば、モデルガンをアメリカから輸入して日本で販売をしようと考えた行為者がいました。輸入した銃は通常、発射できないように改造して日本で販売します。銃刀法で決められた改造の程度というのがあって、それをしっかりやらないと銃刀法違反になってしまうんです。それで行為者は、税関や警察に相談して改造の程度に関してアドバイスを受けて、さらに入念にアドバイス以上の改造をして販売したのですが、販売した銃は結果として銃刀法に違反するものだったということで逮捕された、という事案があります。
行為者は、自分が販売した銃の形状や機能については正しく知っていましたが、それが違法なものであること、つまり自分の行為が違法となることを知らなかった。結局そこに勘違いがあったのですが、この事案については大阪高裁で、行為者が自分の行為が違法ではないと思っていた事につき、汲むべき事情があると見なされ、銃刀法違反については無罪になりました。
Q:刑法を学ぶのは奥が深そうですね。
A:刑法は、制裁の種類としては、民事上の制裁である損害賠償などとは違ってかなり厳しいものになっています。刑務所に閉じ込めて自由を奪う、あるいは日本は死刑制度があるため、命を奪うという性質もあるので、法的な制裁の手段としては一番厳しいともいえます。
だからこそ、厳密に考えなければならないんです。多くの人が納得する結論に持っていきたい一方、条文にのっとって正しい法解釈をしなければならないため、解釈の際に複雑に考えを巡らせなければならず、またかなり理論的です。
Q:商大の学生さんたちが刑法を学ぶことは、どのように役立つとお考えですか?
A:刑法が直接役に立つということは、ほとんどないんですよ。刑法が役に立っている時というのは、人生最悪の時ですよね。自分が犯罪を犯しているか、犯罪に巻き込まれているかということになるので。
なので直接刑法が役に立つことはないのが望ましいですが、刑法を学ぶには、かなり高度な論理的思考力が必要となります。刑法の条文を覚えて欲しいとか、刑法自体を知識として身に着けて欲しいというよりも、刑法の勉強を通して、論理的思考力を養っていって欲しいと思っています。その論理的思考力は、他の学問を学ぶ際にも、また社会に出てからも役に立つのではないかと思っています。
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刑法を学ぶには、論理的思考力が必要なんだね。
菅沼先生は、バイタリティあふれる素敵な先生だったそうだよ。
菅沼先生の論文はBarrelでも読むことができるよ!
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http://hdl.handle.net/10252/00005653
研究室訪問はまだまだ続くよ。
他の先生の訪問日誌もぜひ見てね。
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