「ひな祭り」に関する本を紹介します
今日は桃の節句。女の子の健やかな成長を祝うひな祭りですね。
まだ雪に覆われた小樽ですが、少しずつ日が長くなってきたのがしみじみと
嬉しく思われる春の佳き日に、図書館に立ち寄って、文学に描かれた雛の節句に
触れてみませんか?図書館の中筋から図書館の本に載っている名作を紹介させていただきます。
松尾芭蕉の句 「草の戸も住替る代ぞひなの家」
「奥の細道」に出てくるこの句は、高校時代、国語の教科書で習った、
という人も多いかもしれませんね。
旅の門出に、住み慣れた家を次の住人へ譲るにあたり、芭蕉はしみじみと
出立した後のこの家の様子を思い描くのでした。
自分が長く一人住まいをしていたこの家に家族連れが入居して、
さぞ賑やかにひな祭りを祝うのであろうな・・と。
芭蕉の心優しさが偲ばれる一句ですね。
出典:『おくのほそ道: 現代語訳/曾良随行日記付き
[松尾芭蕉著] ; 潁原退蔵, 尾形仂訳注. -- 新版. -- 角川書店, 2003.』
請求記号:G 9.2||04373||323470
芥川龍之介『雛』
「箱を出る顔忘れめや雛二対」蕪村の一句から始まるこの物語は、
明治時代の家庭の日常が生き生きと綴られてゆき、
最後に、冒頭の句に込められた深い意味を知ることになります。
裕福な商家で育った15歳の少女が、家の没落によって豪華な雛飾り一式を
売られてしまうことになり・・。厳格な父も、強気の兄も、そして病身で
余命いくばくもない母も、皆が悲しみをこらえ、雛を手放す前夜を迎えます。
別れる前に一目お雛様を見たいと駄々をこねる少女を叱り続けた父が、
深夜ひとりで雛段を飾り、じっと動かず見つめているラストシーンは、
何度読んでも心が熱くなります。
出典:『教科書に載った小説 佐藤雅彦編. -- ポプラ社, 2008』
請求記号:G 9.2||04649||328859
泉鏡花『雛がたり』
作者の思い出のなかで妖しく動き出すひな人形たち・・。
「絵雪洞が桃のような灯を点し」「朧夜に遊ぶ裳の紅、袖の萌黄」
幻燈のような雛飾りの光景を、鏡花ならではの美麗な文体で描いた掌編は
まさに詩の世界です。ちょっと怪談めいた雰囲気もあり、母への思慕が切なく満ちて、
短いながら読み応えのある作品です。
出典:『鏡花短篇集/ 川村二郎編. -- 岩波書店, 1987. -- (岩波文庫; 緑(31)-027-6).』
請求記号:GB 12.1||00086||145885
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