2017/09/05 研究室訪問日誌(9)
図書館から研究室訪問の記事が届いたよ。
今回訪問したのは、言語センターの石井 登先生の研究室だよ。
まずは、先生の研究分野についてお尋ねしたよ。
Q:先生は地域研究をご専門にされていますが、どこの地域のどんな研究をされているのでしょうか?
A: ラテンアメリカ地域の研究で、特にメキシコを専門にしています。主に文学に関する研究をしていますが、その中でも、メキシコのカルロス・フエンテスという作家を専門に研究してきました。
Q:カルロス・フエンテスは、どのような作家ですか?
A:代表作は昨年やっと翻訳が出版された『テラ・ノストラ』という作品です。1960年代から1970年代に、ラテンアメリカ文学のブームがありました。日本には1980年代くらいに少し遅れて入って来たのですが。
その時に、主に4人の作家が世界の文学に影響を与えたと言われています。そのうちの一人が、カルロス・フエンテスです。他の3人は、『百年の孤独』が代表作のガブリエル・ガルシア=マルケス、『石蹴り遊び』が代表作のアルゼンチンのフリオ・コルターサル、ペルーのマリオ・バルガス=リョサです。
このうち2人が、ノーベル文学賞を受賞しています。ガブリエル・ガルシア=マルケスと、マリオ・バルガス=リョサです。カルロス・フエンテスは、毎年候補に挙がるのですが、結局受賞できないまま2012年に亡くなりました。私は特に、『テラ・ノストラ』以降の、80年代から亡くなるまでの後期の作品を中心に研究してきました。
カルロス・フエンテスは、様々なジャンルの作品を手がけています。幻想小説や推理小説、歴史小説などを書いていますし、ラテンアメリカ新歴史小説と呼ばれるジャンルのものも書いています。ラテンアメリカ新歴史小説とは、歴史上の実在した人物を登場させたフィクションです。カルロス・フエンテスは、このジャンルの代表的な作家です。
『オレンジの樹』という短編集の中の「二つのアメリカ」という作品がありますが、この中にはコロンブスが登場しますし、現代の日本人も出てきます。内容自体は歴史と全く異なっているのですが、フエンテスは、登場人物の日本人を介して、NAFTA(北米自由貿易協定)を批判していると考えられています。
また、最初の短編集『仮面の日々』に含まれている「チャック・モール」という作品などは、幻想小説と言われ、メキシコの神様が出てきます。メキシコの神様というと、ここでは先住民の神様ですよね。先住民の神様が現代によみがえって、人間に酷いことをする話が出てきたりしますが、普段聞きなれない名前の神様が沢山出てきて、面白いですよ。
Q:先生は商大でスペイン語を教えていらっしゃいますね。スペイン語を話す国は色々ありますが、それぞれのスペイン語圏で、言葉の違いはあるのでしょうか?
A: ありますよ。国ごとに微妙に違います。例えばバナナを例にすると、会話の本に出ているように、プラタノ、バナナー、など色々な言い方をする。同じ場面でも使う動詞が違ったりしますし、電話での答え方や挨拶もちょっとずつ違います。国ごとの違いを比較すると面白いですよ。
Q:国ごとに違いがあっても、全く言葉が通じないということはないのですよね。
A:基本的には通じるのですが、メキシコで聞いた話では、メキシコ人がスペインのテレビ番組を見ても、言っていることがよくわからないそうです。私たち日本人にしても、同じ日本語なのに、住んだことがない地方の方言だと、良くわからないことがありますよね。そんな感じなのかなと思うのですが。
Q:スペイン語を学ぶ人たちは、数あるスペイン語圏のスペイン語の中でも、スペインのスペイン語を学ぶのでしょうか
A: そうです。スペイン語について詳しく話しますと、スペイン語を学ぶ人は必ず聞く話ですが、1492年にアントニオ・デ・ネブリハという人が、初のスペイン語の文法書(原語:和訳)を作りました。それ以降、文法の体系がきっちりできていて、それが改正を加えながらずっと今まで続いています。
スペインの王立アカデミーという組織が文法と語彙のルールを全部決めています。ラテンアメリカのアカデミーも一緒になって決めています。そのルールに基づいて教科書は作られています。どの大学でもだいたい同じだと思うのですが、その教科書を使って学ぶので、スペインの標準語を勉強しています。
Q:スペイン語を学んでいる商大の学生さんや、これから学ぼうと思っている学生さんにメッセージをお願いします。
A:アクセントをおろそかにしないでくださいと言いたいですね。日本語もそうですが、スペイン語はアクセントの位置によって、意味が違ってくることがあります。ほとんどの学生さんは、スペイン語でおしゃべりしたいと思って勉強をされるのだと思うので、それだったらアクセントには気をつけて欲しいと思いますね。
あと、日本人はスペイン語の発音がすごく上手いらしいです。国にもよりますが、スペイン語は、母音をはっきり発音するとカッコよく聞こえたりするそうです。日本語は母音をはっきり発音しますから、日本人はスペイン語の発音も上手なのかもしれませんね。
こういうことは留学しないとわからないことですよね。だから可能であれば、留学して欲しいと思います。留学に限らず、スペイン語圏の国はとっても広いので、何か興味があるものを見つけたら、ぜひその国に行ってみて欲しいですね。
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他にも面白いお話を沢山伺ったんだけど、全部を記事に出来なくてとても残念!と
図書館の職員さんが言っていたよ。
石井 登先生の論文は、barrelからも見ることが出来るよ!
・カルロス・フエンテスにおける他者への眼差
− チャック・モールの「脚注」についての検討を中心に–
石井先生がおすすめする、カルロス・フエンテスの本を何点か紹介するよ!
図書館にある本は青色に表示してるよ。
クリックするとどこにあるかわかるよ。
・澄みわたる大地
・脱皮
・聖域
・誕生日
・ガラスの国境
研究室訪問はまだまだ続くよ。
他の先生の訪問日誌もぜひ見てね。