2012/12/28 大丸松坂屋百貨店成長の秘密とは??
今日は大学院アントレプレナーシップ専攻(ビジネススクール)が主催する,
「第10回OBSフォーラム」に潜入したので,
その模様をお伝えするね。
講師は大丸札幌店店長 香川 曉子さん!!
講演のテーマは「大丸札幌店9年の歩みと次の一歩」だよ。
司会はテレビでもお馴染みの保田先生!!
アップテンポかつさわやかな司会で,会場が一体となった楽しい雰囲気の講演会になっていたね!!
札幌駅に隣接する大丸札幌店さん。
商大生の多くは札幌から通っているので,大丸さんに立ち寄る学生さんも多いんじゃないかな??
百貨店業界全体では売上高の減少が続いている中,
大丸札幌店さんが売上高・入店客数ともに成長を続けるその秘訣とは??
バブル崩壊後に大丸松坂屋百貨店がどのような経営改革を行ってきたのか,
どのような売場作り,お客様へのアプローチを行ってきたのか,
そして,どのような百貨店を目指しているのかなど,
香川店長が優しい口調でわかりやすく解説してくれたので,紹介するね。
これまで百貨店業界は,売上高を伸ばすことだけを考えてきた業界だったんだって。
だけど,バブルの時に利益を失い,利益志向の大切さを痛感し,非採算事業や非採算店舗の撤退,
さらには早期退職制度の導入など,さまざまな経営努力を強いられてきたそうだよ!
このような経験を基に,今後生き抜いていくための経営構造改革の方針を定め,
その戦略に基づいて設置されたのが大丸札幌店なんだって!!
大丸札幌店さんが成長を続けている秘密は,
この戦略に基づいた店舗を一から作り上げることができたことが大きかったとか!!
どんな組織でもこれまでの風土を変えることがいかに難しいのかが,その裏返しでわかるよね。
店舗作りにあたっては,お客様の導線を考え,
少ない人数で効率よく動ける体制の構築を意識した「フロアレイヤー」,
「売場やレジの配置」の決定,
物流システムは完全アウトソーシング化,
さらに徹底した非販売業務の集約など
が盛り込まれていたんだって。
そして顧客に対するアプローチについても,
「第1次」,「第2次」と2度にわたる営業改革が行われたんだ。
「第1次営業改革」では,
「最大の顧客満足を最小のコストで実現する」をテーマに,
個人的能力に頼った仕事から脱却し,科学的な検討に基づいた人員配置を行ったんだ。
また,特に印象的だったのは,
『給料が高い人ほど価値の高い仕事をしているとは限らない。』
というフレーズ。
店頭・お客様重視の精神に基づき,
「お客様により良い商品・サービスを提供できている人が評価される」という素晴らしい制度!!
店舗全体が販売業務に集中できる体制を作り上げているんだね。
また,接客についても,接客して欲しい売場,接客を必要としない売場を分けていて,
売場に応じて接客パターン別を変えているそうだよ。
そして,「第2次営業改革」
当初は,
「強い販売力と高効率オペレーション力のさらなる強化」,
「小売の原点である商品力(=マーチャンダイジング力)の飛躍的向上」
をテーマに取り組んだんだって。
しかし,投資に見合った成果の上がる売場,逆に成果の上がらない売場に分かれたそうで,
マーチャンダイジング力による成長には限界があると判断。
そして,
店舗は販売サービス,仕入れは本社と明確に区分するセントラルバイイングに
取り組む方針転換を図ったんだ。
現状をしっかり分析し,この大きな方向転換を即座に図ることが出来る組織体制は大きな強みだね!!
そして現在は,「新百貨店モデル」に挑戦しているんだよ。
お客様のニーズにどれだけ対応できるのか,お客様にどのくらい新鮮な気持ちを与えることができるのかについて,
プロデュース力,カウンセリング力,マーチャンダイジング力といったマーケット対応力を鍛え,
収益性の高い売場スペースであるスペシャリティゾーン作りを目指しているんだって。
お客様に「そうそう,私はこんな場所で買い物したかったのよ!!」と思える売場作りだよ!!
このように,勉強になる内容盛りだくさんの講演会だったんだけど,質疑応答もそれ以上に盛り上がっていたんだ!!
この勢いで,質疑応答の内容も一部紹介するね!!
Q.女性の経営者としてご苦労されることはなんですか?また,なぜそこまで出世ができたのですか?
A.大丸が店頭・お客様第一の考え方を貫いているからだと思います。
「店頭で販売できる人がエライ。現場が第一」の精神ですね。やはり,お客さんは女性が多いから!!
Q.有期雇用社員のモチベーションをどのように維持されているのですか?
A.有期雇用でも社員は社員です。
他の社員と変わらず評価もしていますし,有期雇用の方が採用される場合も入社式を行い,
店長や営業部長全員が出席しています!!
Q.社員教育はどのようにされているのですか。
A.基本的には自分で学ぶ姿勢を重視しています。
そして,自ら取り組んだ学びに対して,さまざまなサポートを行っています。
また,人事配置においても,やる気と潜在能力があると考える社員にポジションを与え,
挑戦させる環境を作っています。
Q.札幌圏の顧客と本州の顧客にはどのような違いがありますか?
A.開業前に十分なマーケットリサーチを行って調査したのですが,
札幌は本州と比べて時給が低い一方で,ナショナルブランドの価格は同じです。
よって,買いやすさを追求したプライス戦略は意識しましたね。
Q.お客さんに買ってもらうための一番のコツは何ですか?
A.お客様とのコミュニケーション能力を培うことだと思います。
言葉にできない反応を見る。お客様の目の動きを見る。
お客様の視線がどこにあるのかによって,コミュニケーションの取り方,
アプローチ方法は変わってくるということを,多くの経験から学ぶことですね!
それでは最後に,今回のフォーラムに参加した商大生に感想を聞いてみたので紹介するね!!
(花田君:2年生)
大丸さんは,新百貨店モデルを作るなど従来のイメージにはとらわれない改革を
進めていることがわかりました。
そんな改革を進めることができたのは,香川店長のお気に入りの言葉である
「最初にチャレンジした人は失敗してもやり直す時間がある」
という言葉が後押ししているように感じました。
大丸札幌店の店長という自分たちとはかけ離れた存在ですが,
取り組まれていることは自分たちが商大で学んでいることの延長線上であったり,その応用だったり,
深く追求したものなのかなと思いました。
ですので,学校の講義も受けて終わりではもったいないなぁと強く思いました!!
(続木さん:2年)
このフォーラムの帰り道,札幌駅に戻り大丸を通った時,とても親近感がわきました!!
「500人の従業員でこんなに大きなビルを動かしているんだ。」とか,
「自社物件なんだな」とか,
「このレイアウトは、マーケティング的意味があってこうなっているんだ」
とか考えながら歩きました。
講演の中で3回も組織改革しているとお話があり、大丸さんの見方がとても変わりました。
また,同じ女性として,
香川店長のはきはきとした話し方、堂々とした雰囲気、質疑応答でのどの疑問に対しても
すんなり応えられてしまうところがすごいと思いました!
香川店長がどれだけ自社を愛していて、誇りを持っているかを感じることができました。
私は商業系の勉強をしていていつも感じていることがあります。
何気ない普段の買い物においても一つ一つのものすべて意味があり,
世の中の見方が変わるところが面白さあるということです。
学生の中には、このような講演会の存在を知らない人が多いのではないかと思いますが,
このように,実際に社会の第一線で働いている方のお話が聞けるのは,とても貴重だと思いますので,
お話をきけてよかったです!!