国際取引法の中村秀雄先生にお勧めの本を紹介してもらったよ!
「赤毛のアン」(村岡花子訳 新潮文庫。原題は”Anne of Green Gables”)の作者であるモンゴメリー女史の記念碑が、故郷プリンス・エドワード島のキャベンディッシュ(本の中ではアボンリー)に建てられて除幕式の朝、町の責任者は「こんな所に幾人も来るまい」とほんの何客かのベンチをおざなりに並べておいた。朝になると村は車で埋まり、港は漁師の船がひしめいたという。
アンはカナダでは「女の子」だけが読む本ではなく、大の大人が安楽椅子に座って、夕食後に読み耽る本でもあるのだ。
話はいたって単純、両親をなくしたお転婆なアンが、ふとした間違いでマシューとマリラ・カスバート兄妹の家に引き取られ、成長し、結婚して子供を持つ物語である。
想像力豊かなアンは近所の池や泉を「輝く湖水」「ドライアドの泉」と名づける。どんなに美しい所かと思われるが、実際に訪れてみると(私は3度もこの村に旅行した)北海道の山や湖が何の遜色もないと感じられる、ただの、とはいえ素朴な自然である。モンゴメリーの魔法の筆にかかると、その自然はアンの世界に変貌する。
アンが希望と失望(「にんじん」とからかわれて、同級のギルバートの頭に筆記板(スレート)を叩きつけたり、赤い髪を黒く染めようとして行商人に騙されて、醜い緑の髪にしてみたり・・・)を経て、大人になっていく過程は、今でもすこしも古くない青春の書である。
この本を貫く1本の糸は、「素直な心こそが人間を育て、生かす」ということだ。
医学生になったギルバートが過労で倒れて、生死の境をさ迷ったときに、本当は彼を愛していたことを知ったアンが、それまでのことを思って後悔の涙を流した夜、そして「ギルバートは生きる」と知った朝の、天にも昇る気持ちのくだりを読んで、心が洗われた思いにならないものはいるまい。
村岡花子の訳も優れているが、原語は豊かな語彙と流れる文体を持つ立派な文学である。今でも読むたびに、辞書を引きながら全編を読んだ、留学生時代をふつふつと思い出す。
中村秀雄先生,ありがとうございました。
アニメも馴染みが深いけど,原語で読むのもお勧めなんだって!
是非みなさんも,辞書を片手にいかがでしょうか?