一般教育等の岡部善平先生から、お薦めの本を紹介してもらったよ!
なぜ選ぶたびに後悔するのか 「選択の自由」の落とし穴 (バリー・シュワルツ著/瑞穂のりこ訳、ランダムハウス講談社 2004年)
友だちとレストランに入って注文をする。食べたいと思ったものを注文したはずなのに、友だちが食べているものを見ているとどこか自分の食べているものよりもおいしそうに見えてくる。あるいは、欲しい品物が複数あって、さんざん迷ったあげく一つの品物を買いはしたものの、選ばなかったものが何となく気になってしまう。こんな経験、したことがないでしょうか。もしメニューが1種類しかなければ、もし手に入れることができる品物が1つしかなければ、こんな思いをすることはないでしょう。数多くの選択肢があり、比較的自由にそれらのなかから選ぶことができるゆえに、かえって物足りなさや後悔を感じてしまうのです。
まあ、食事の注文や買い物程度なら大した問題はないのですが、自分で選んだはずの仕事や学校、人間関係に不満や後悔の念を抱いてしまうとなると、ことは深刻です。
「本当にこの選択でいいのだろうか」
「自分の判断は間違っていないだろうか」
「自分は本当は何が欲しいのだろう」・・・・・
選択ができるというのは、案外厄介なことです。
本書は「選択の自由」がもたらす矛盾と、それへの対処法をわかりやすく解明しようと試みています。
私たちは何かを選択するとき、自分がもっとも欲しいもの、自分にもっとも合ったもの、つまり「最適」を選ぼうとします。確かに自分の欲望が満たされるに越したことはありません。しかし、こうした私たちの姿勢、価値観が思わぬ問題を生み出す場合もある、と著者は考えています。最高のものを求め、期待を高めるあまり、「もっといい選択があったのではないか」と自らの選択に満足できなくなってしまうからです。選択肢が増えるほど、そして選択の自由度が増すほど、自らの判断に自信が持てなくなり、深刻なうつ状態すら生み出すことすらあります。これは、自由で豊かな社会、個人の欲望を最大限に尊重する社会が抱える根本的な矛盾ということができるでしょう。
誤解のないように言っておきますと、著者は(そして僕も)決して「選択の自由を認めるべきではない」とか「縮小すべきである」と主張しているわけではありません。「選択の自由」には負の側面があり、それに対処する術をもっている必要があると指摘しているのです。
豊富な事例とデータの盛り込まれた、ユニークな著作でしたよ。