今日は商学科の大矢先生への突撃インタビュー!
「金融」や「銀行」を研究しているって聞いて「堅いかな?」と思ったけど、とってもオモシロかったよ。さっそく聞いてみよう。
Q:先生の専門は「金融システム論」「銀行論」ということですが、なんだか難しそうですね。
いえいえ、そんなことはありません。商学と経済学の両方に関係していますが、要はマネーサプライや銀行のシステム・しくみを研究しています。
Q:まず、マネーサプライって言葉がわからないんですけど・・・。
企業がモノを作ったり、販売するにはお金が必要ですよね。そのお金(マネー)を供給(サプライ)しているのは銀行です。本当に必要なお金が企業に供給されていれば健全な経済といえるんですけど、実際にはそうでないことが多い。例えば、今、石油が値上がりしてますよね。1バレル100ドルにもなろうとしています。でも、石油1バレルを作るのに必要な経費は中東では3~8ドルといわれています。こんなに値段が高くなってしまったのは、行き場のないお金が石油市場につぎ込まれてしまったからなんです。つまり、世界的規模でマネーサプライ(お金の供給や流れ)が不健全な状態となっているといえるのです。
Q:健全なマネーサプライというのは、どんな状態なんでしょうか?
実体経済をうつしたお金の供給がおこなわれているのが健全な状態です。つまり、モノを作ったり、モノを売ったりするのに必要なお金が供給されている状態です。金融システム論とか銀行論とかいうのは、お金の流れから、経済が健全かどうかを読み取る学問ともいえますね。
Q:うーん、ちょっとわかってきたような、わからないような・・・。銀行論っていうのを、もう少し教えてもらえますか?
お金を扱っているシステムには、大きく「銀行、証券、保険」という3つの領域があります。このうち、お金を供給できるのは銀行だけなんです。例えば、日本に70兆円というお札(現金)があるとしますね。これは中央銀行である日銀が発行した分です。でも民間の銀行は、これとは別に650兆円ほどのお金を貸し出しています。現金とは別に、銀行の口座の中だけで大量のお金が動いているのです。だって今は給料やバイト代をもらうときでも、現金ではなくて銀行口座に振り込まれるでしょ?口座の中だけで動くお金が創り出されているわけです。
Q:学生さんが金融論や銀行論を勉強して、どのようなメリットがあるのでしょうか?
原油の高騰だとか、サブプライムローンの問題だとか、現在は複雑でわからないことが多い。金融論や銀行論を勉強すると、こうした問題がなぜ起きるのかを考えることができます。企業の人にとっては、自分のやっていることの意味を理解するのに役立つかもしれませんね。
Q:銀行っていうと、エリートだけど「もうけすぎ」とか「えげつない」というイメージもありますが?
そうした印象はあるでしょうね。ただ、授業やゼミなどで、銀行の社会的な役割を理解すると「是非銀行に勤めたい」と考える学生が出てくるんです。銀行も会社ですから利益を出さなければいけないのですが、一方で地域への貢献も模索しています。全体的に見れば、銀行は社会的役割を自覚しつつ新しい方向を求めて努力しているように思えます。
Q:失礼な質問かもしれませんが、金融論とか銀行論を研究していて、何が面白いんですか?
当たり前のように見えても不思議なことがたくさんあります。皆が気づいていないことを発見したときは面白いですね。特に、金融とか銀行はまず数値が先行し、何か冷たい感じがしますが、結局「生身の人間」が関わっていますから、深いところで人間の意識が変わると制度も変わるんですね。人々が、儲けだけでなくて、社会的役割が大切だと思うようになると、金融の制度も変っていくでしょう。人間の精神性が制度と密接に関わっている。そのへんが一番面白いところです。
Q:最後に、金融や銀行について理解するために、手軽に読める本があればご紹介ください。
山口義行著『経済再生は「現場」から始まる』(中公新書)を挙げておきます。この本は、地域を元気にするための金融や銀行の働きについて書いてあります。銀行は、利益を上げることと、地域への貢献のバランスをとっていかなければいけませんが、この本を読むと、実際にその例がわかります。不良債権処理の問題で銀行も企業も苦しんだのち、銀行が企業を再生しようと、どういうスタンスで取り組んだか、特に、地方銀行の社会的意義やそれを自覚した取り組みについて具体的な事例が紹介されています。
Q:なんだか、金融や銀行のイメージが変わりました。ありがとうございました。