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教員インタビュー 乙政佐吉教授

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乙政 佐吉教授
OTOMASA Sakichi


業績測定・評価システムをいかに設計・運用するか

専門分野は『管理会計』になります。管理会計は、経営者や経営管理者の意思決定に有用な情報をいかに算出するかを考える学問分野です。企業経営において、経営者や経営管理者はさまざまな意思決定を行っていますが、事業は順調に展開されているのか否かを判断したり、事業の管理責任者はうまく管理を行っているのか否かを評価したりすることもあります。業績結果から、事業そのもの、あるいは、事業管理責任者のコントロールを行う仕組みを業績測定・評価システムと呼びます。

何を業績として測定・評価するか、すなわち、売上や利益のような貨幣単位で示される財務指標を中心とするのか、あるいは、顧客満足度や市場占有率といった貨幣以外の単位で示される非財務指標によって補足するのかによって、業績測定・評価システムをどのように設計するのかは変わってきます。どのように設計するかが変わってくれば、どのように運用するかも変わってきます。ひいては、業績測定・評価システムの設計・運用方法が組織成員の行動に影響を与えます。戦略を確実に実行するために、業績測定・評価システムをどのように設計・運用するのが望ましいのかについて研究を続けています。

実体験上の疑問を解消すべく大学院へ

大学卒業後、民間企業で経理をしていた頃、予算管理を担当していましたが、自分の行っている業務にどのような意義があるのか見出せませんでした。そこで、他の会社でも予算管理とはこういうものなのか、もっとすぐれた運用をしている会社はあるのか、理論ではどのように運用すべきとされているのかといった疑問を解消すべく、退職して大学院に進学しました。

大学院では、バランスト・スコアカード(BSC)という、財務指標の限界を克服すべく非財務指標の利点を生かすよう開発されたシステムに注目しました。BSCさえ導入すれば企業経営は万事うまくいくと思えたからです。しかしながら、理論上優れていても日本企業にBSCはあまり普及していません。導入しても組織に定着する前に頓挫する企業もあります。本来のBSCでは想定されていない運用をする企業もあります。大学院で研究を開始して以来、現在に至るまで、理論と実務の乖離を埋めるために、なぜBSCは普及しないのか、なぜ導入に失敗するのか、どのように運用すれば成果を得られるのか、について考え続けています。

地方自治体の業績管理システムの実態解明へ

2015年2月、地域経済の活性化、および、地域の活性化に貢献する人材の育成を主たる狙いとして、小樽商科大学と北海道財務局とのあいだで、双方のネットワークや資源を活用するための包括連携協定が結ばれました。また、包括連携協定のもとで、双方の有志メンバーからなる自治体会計チームが結成されています。自治体会計チームは、地方自治体の財務分析手法の課題を明らかにした上で、財務分析の有用性をいっそう高めるために共同研究を開始しました。

北海道の各自治体において財務の健全性を保つことは喫緊の課題です。しかしながら、現状において、北海道の各自治体がどのように財務健全性を管理しているのかについては必ずしも明らかになっていません。それゆえ、自治体会計チームは現在、北海道の各自治体が実質赤字比率のような財務指標を含む業績指標をどのように管理しているのかについて、実態を明らかにすることを最終的な目的として、北海道の各自治体に対して調査を行っています。

「探偵ナイトスクープ」のようなゼミを目指して

「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、さまざまな謎や疑問を徹底的に究明する」は、ご存じの通り、「探偵ナイトスクープ」というTV番組の前口上です。乙政ゼミでは、管理会計を主テーマとしていますが、卒論のテーマに縛りを設けていません。「探偵ナイトスクープ」の前口上のように、さまざまな謎や疑問を徹底的に(おもしろおかしく)究明してもらいたいと考えています。

卒論で行うことは、「自分で問いを立てて自分で解くこと」です。文献を読む、仲間に相談する、沈思黙考する、解き方はさまざまです。ゼミの方針として、導き出した答えが正しいかどうかよりも、自ら考え抜いた過程や結果を、わかりやすい文章にまとめて、論文として世に問うことを重視しています。

問題に正解はありません

小学校から高校まで、基本的に問題は与えられてきたと思います。なおかつ、与えられた問題に対して覚えこんだ答えを吐き出すことによって評価されてきたはずです。それにもかかわらず、社会にでれば、状況は変わっていきます。そもそも問題が与えられることもほとんどなければ、正答といえる答えもありません。

大学でも授業を受けて学んでいきますが、授業そのものが将来的に役に立つかどうかは正直なところわかりません。しかしながら、大学では、文献を読んだり、教員や仲間と議論したり機会はおそらく増えていきます。文献や議論を通じて考え抜くことが考える力を鍛えてくれます。一朝一夕にはいかないにしても、考える力を養っていくことが社会に出てから生きてくるでしょう。


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