- <担当授業>情報システム構築論、情報システム管理論、応用情報論I、情報処理(夜間主)、
研究指導(ゼミ)
三浦克宜教授
Miura Katsunori
第一に、ET計算理論の面白さを広めたい
2004年4月から現在に至るまで、等価変換(Equivalent transformation: ET)計算理論を研究の中核的な原理として採用して活動しています。ET計算理論は、私の恩師である赤間清先生(北海道大学名誉教授)により提案された問題解決方式で、25年くらい前に、その基礎理論が書かれた論文が公開されています。私が、ET計算理論を軸にして、これまで活動してきた理由は、「ET計算理論が、問題記述に関して正しく答えを導き出すための統一的なメカニズムとしてなり得るか」を究明したいと考えているためです。
2021年頃からは、博士論文で取り組んでいた「ET計算理論を基礎とするプログラム合成方式」に関する研究に再び力を入れています。この研究では、問題記述(プログラム仕様)が与えられたときに、その問題を解決する正当で効率的なプログラムを作り出す方式について議論しています。この研究によって、どんな利益が得られるかというと、例えば、「この問題を解くプログラムを作りたい!」と思ったときに、なるべく人手を介さずに、コンピュータ自身にプログラムを作らせることができます。現状では、ある範囲の問題記述に関して、確定節と呼ばれる論理式によりプログラム仕様が定義されているならば、特定のプログラムを自動的に作り出せます。
ET計算理論を基礎に、プログラム合成の真理を追求したい
修士論文では、教育工学に属する研究に従事していました。具体的には、HTMLベースの電子化テキストに対して、メモや付箋を模したアノテーション(注釈)を付与する学習支援ツールを開発していました。修士課程の頃から、プログラミングに興味を持っていたので、「分かりやすい(見やすい)ソースコードとは何か?」について、よく考えていました。
博士後期課程在学中に、プログラミング実習のTAを務めたことで、「ヒトがプログラムを作るときに、どんな流れでアルゴリズムを生み出しているのか?」について興味を持ちました。そして、その答えが知りたいと考え、博士論文では、正しいプログラムを数学的に定義しているET計算理論を軸にして、新たなプログラム合成方式を提案する研究に従事していました。当初は、「分からない」がほとんどでしたが、論理学や集合論、数学的な定理・証明に関する知識や技量が増えるにつれて、研究の進むべき方向が見えるようになり、最終的に、楽しく博士論文を執筆していました。もし「プログラム合成の真理を追求したい」と思いましたら、一緒に研究をしましょう。
制約充足問題で溢れる日々に、ET計算理論が適用できる
制約充足問題は、複数の制約条件に対して、その全てを満たす答えを見つけ出す数学の問題であり、四色問題や数独、エイトクィーンなどが有名です。「制約充足問題が日々の生活の中に?」と思ったかもしれませんが、生活の中にある制約充足問題としては、例えば、友人との旅行計画や大学での講義の履修計画などがあります。旅行計画では、予算(旅費)や人数、目的地、移動手段などが制約条件となります。ET計算理論は、このような問題を解決する際に役立ちます。
実際の問題に対して、ET計算理論を適用した事例としては、「アプリケーションの展開に適した、クラウドサービスを活用する計算基盤構成の導出方式」に関する研究があります。この研究は、JST CRESTと呼ばれる研究プロジェクトに、分担研究者として参加した際に従事していました。この研究から得られた成果により、ユーザがゲノム解析アプリケーションを展開する計算基盤を要求したときに、計算基盤の構成要素となるクラウドサービスの性能や計算基盤のネットワーク構成が自動的に導き出せるようになりました。この研究では、「様々な専門領域のユーザに利用してもらえるツールを作ろう」を目指し活動していました。
ET計算理論を知り、アルゴリズムのひらめき力を鍛えよう
私は、20年近くにわたり、ET計算理論を軸にして様々な研究課題に挑戦してきました。ここから得られた知見により、専門領域が情報科学であるかにかかわらず、ET計算理論を学ぶことに価値があることが見えてきました。そのひとつが「ET計算理論を知ると、アルゴリズムのひらめき力が鍛えられる」です。アルゴリズムとは、問題に対して答えを導き出すための計算方法や処理手順であり、コンピュータが解釈できるアルゴリズムがプログラムです。
一見すると、SEやプログラマなどの情報技術者にだけ必要なスキルのようですが、そんな事はありません。なぜなら、日々の生活は、「選択と行動」の繰り返しであり、アルゴリズムの集合だからです。ET計算理論は、大きく複雑な問題を、捉えやすい別の問題の集まりに変換することで、元の複雑な問題を解決するというアプローチを取ります。この問題分割と変換がアルゴリズムのひらめき力を鍛えるのです。ET計算理論を知り、アルゴリズムのひらめき力を鍛えて、ロジカルシンキング(論理的思考)を手に入れましょう。
学生自身が持つ課題や疑問から研究テーマを決めています
卒論の研究テーマは、例年、3年次後期が始まってすぐに決めています。プログラミングに興味がある方は、PythonやJavaなどのプログラミング言語を使って情報システムを開発していますし、一方、プログラミングが苦手という方は、収集したデータから有用な情報を取り出す数理モデルを提案しています。
三浦ゼミの基本スタンスは、「学生自身が持つ課題や疑問を研究テーマの中核に置く」なので、3年次後期のゼミは、学生へのヒアリングと、研究テーマを固めるためのディスカッションに多くの時間を費やしています。ただ、肩が凝るような話し合いではなく、世間話の感覚で進めるよう心がけているので、三浦ゼミを検討している方は安心して欲しいです。研究テーマを決めた後に、先行研究を調査したり、参考文献を読んだりする中で、卒論の研究テーマを変更する学生もいます。私のウェブサイト(K.MIURA@OUC)の「担当講義」の中にある「ゼミナール」には、これまでの卒論タイトルを掲載しているので、興味がある方は、チェックしてみてください。
関連リンク