2025.03.17
令和6年度学位記授与式(3月卒業) 学長告辞
皆さん、卒業そして修了、誠におめでとうございます。本学の教職員を代表して、心よりお祝いの言葉を送りたいと思います。また、保護者の皆様のお慶びは、いかばかりかと拝察いたします。
今日、商学部を卒業される皆さんの多くは高校生時からコロナ禍の影響を受けてきたと思います。大学入学後もオンライン授業が続き、その対応に戸惑うことも多かったと思います。クラスや部活、サークル活動で友人とともに時間を共有することも大きく制限されました。激変する環境に翻弄されることもあったと思います。しかし、それらの変化を乗り越え、卒業される皆さんに対し改めて敬意を表したいと思います。
皆さんが入学された2021年は本学創立110周年の記念の年でありました。残念ながらコロナ禍において縮小した規模での式典やシンポジウムを開催したことを思い出します。そして翌2022年に本学は帯広畜産大学、北見工業大学と経営統合し、北海道国立大学機構を創設しました。皆さんのなかにも帯広畜産大学や北見工業大学から配信された授業を履修された方もいると思います。三大学経営統合の目的の一つが文理融合、異分野融合教育の促進です。三大学間の授業の相互配信により、その成果は着実に実を結びつつあります。
今、社会は大きく変化しています。我が国は少子高齢化、長期的な経済の低迷と経済の東京一極集中、社会的、経済的な格差の拡大、DX分野の遅れなどに直面し、すぐには明るい展望を見出すことはできません。特に我々が住む北海道においては人口減少、地方経済の疲弊が急速に進んでいます。古い世代の記憶にある高度経済成長やバブル期の経済成長は過去のものです。これまでとは異なる、新しい社会や経済の在り方を模索する必要があります。若い皆さんの、既存の常識にとらわれない、自由な発想が今後の日本の浮沈のカギを握っているといえます。
日本のみならず、世界も大きく変化しています。ロシアのウクライナ侵攻から3年以上がたちました。ここにきてトランプ大統領の就任により事態が急速に動き始めています。現在の不安定な国際情勢が今後どちらの方向に進むのか注意深く見守る必要があります。皆さんには是非、身近な問題だけでなく、常に広い視野を持ち、国際情勢にも敏感であってほしいと思います。我々は否応なしに世界とつながる時代に生きているのです。
今や、世界のビジネスシーンでは英語が共通語となっています。海外ではビジネススクールを出た人材を含め、大学院を修了した人材が増え、高学歴化が進んでいます。この面でも日本の遅れが明らかになっています。日本人の賃金水準は近隣諸国にも劣るようになりました。特に管理職レベルの賃金水準はアジアの中でも大きく後れをとっています。賃金水準のみならず、世界で求められている人材と、日本において求められる人材像の乖離も問題です。これは世界と日本の経済の実態の反映でもあります。
生成AIの登場などにより、ビジネスにおいて必要とされるスキルは急速に変化しています。現在、社会人のリカレント教育、リスキリングが叫ばれています。我が国における社会人教育は残念ながら海外に比べ、遅れていると言わざるを得ません。制度的な問題もありますが、この遅れを甘受するのではなく、皆さんには是非、継続的に自ら学ぶ姿勢を身につけて頂きたいと思います。社会に出ると大学時代以上に「学び」が必要となります。職業に直結する「学び」だけではなく、人格、教養を高める「学び」も不可欠です。常に高い目標を持ち、それに向けて、たゆまない努力を継続していただきたいと思います。社会は常に変化しています。変化への対応力は継続的な「学び」からのみ得られるものです。
コロナ禍で薄れた人と人との結びつきは対面の増加とともに戻ってきています。しかし、そのつながり方はこれまでとは異なるものかも知れません。時代やコミュニケーションの手段が変わろうとも人間は一人で生きていけないことに変わりはありません。また、人は自分自身のアイデンティティをその帰属する組織や社会に求めます。皆さんはこれまで小樽商科大学の一員でありました。これからは本学の卒業生として社会に出て行かれます。
本学の卒業生で構成される緑丘会は、おそらく日本で最も強いきずなを持った同窓会の一つであると思います。2011年の創立110周年記念募金では、コロナ禍で困窮した学生のために急遽募金の目標を1500万円上積みしていただき、いち早く学生に奨励金を支給することができました。また、1億円を超える110周年の募金は学生の皆さんの課外活動などに活用されています。それのみならず、TOEICの受験料の補助、国際交流、就職セミナーなど毎年様々な支援をいただいており、皆さんの学生生活をより豊かにするために活用されています。
本学の114年の歴史は大学のみならず、卒業生とともに積み上げてきたものであります。それは世代間のバトンの引継ぎでもあります。皆さんには卒業後も同窓会組織を通じて本学とともに歩んでいただきたいと思います。大学そして同窓会は常に皆さんのサポーターであり、皆さんのアイデンティティの根底にあり続けます。
最後になりますが、皆さんは限りない可能性を秘めています。自分自身を信じ、力強く未来を切り開いていただきたいと思います。皆さんの健康と幸多き未来を祈念して、私の挨拶を終わります。
令和7年3月17日 国立大学法人 北海道国立大学機構
小樽商科大学長 穴沢 眞
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