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2020.03.17

令和元年度卒業生・修了生の皆様へ(学長告辞)

 

 みなさん、ご卒業・修了おめでとうございます。新型コロナウイルス感染の影響により今年度の学位記授与式を中止せざるをえなくなったことは大変残念ですが、私ども教職員は、みなさんと共に過ごしたことを誇りに思います。

 

 私は、この3月を以て、学長職任期満了となり、小樽商科大学を去ります。振り返ってみれば、私は、この6年間、卒業式告辞のなかでいつも卒業生・修了生のみなさんに同じことを言ってきたように思います。それは大体3点に要約されます。

 

 一つは、大学で学ぶことの意味、すなわち「学問」の本質です。幕末・明治の思想家・教育者であった福沢諭吉によりますと、学問とは単なる知識の集まり・体系だけではなく活動、すなわち「精神の働き」「心身の働き」を意味します。つまり、出来上がった知識を単に学ぶだけでなく、新しい知識を作り出していく精神と身体の活動にあるというわけです(福沢諭吉『学問のすゝめ』)。 
 知識や理論を学習することはもちろん大切なことです。新しい知識を得て、ものを見る目が変わってくる、世界が広がる喜びがあります。しかし、「学問する」ことは、それだけにはとどまらず、獲得した知識を使って、未知のもの、不確実なものへの挑戦でもなければならないと思います。

 

 二つめは、21世紀に入ってからの経済構造・社会構造の急激な変化です。グローバル化・デジタル化が進展し、新しい知識・技術がビジネス新興企業や新産業を次々と誕生させています。経済は国家間の相互依存を深め、ビジネスは常に国境を越えて展開されます。 他方で、深刻な人口減少は、人々の働き方を変えつつあります。個々人の生産性の向上が課題になり、働く意欲・能力のある人は性別・年令を問わず、長く働き続ける、さらには、よりよい職場を求めて転職するのが当たり前の時代がすでに到来しています。

 

 第三に、それだけ一層、変化する社会に対応できる個々人の能力が求められているのです。アメリカの著名な経営学者・思想家であったピーター・ドラッカーは、今から30年前に、「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する企業家および企業家精神(アントレプレナーシップ)」の重要性を予測しました。さらに、企業家精神は、継続的学習を必然のものとする、学習は青年期、社会人になったとき完了するものとする考えは誤りであると言い、学び続けることの重要性を強調しています。一人一人の人間が、自らの人生において、自らの意志によって、さまざまなキャリアを探し進んでいくことになると言っています。まさに今の時代に当てはまる言葉ではないでしょうか。

 

 小樽商科大学は、学部においては、特定の分野で専門知識を深める教育を心がけてきました。同時に、人文社会・自然科学、外国語など幅広い分野の知識を修得するカリキュラムを用意しています。そして、百年以上の伝統をもつ実学の精神に基づいて、実践や体験、様々な分野で活躍する人との交流からも学ぶ機会を提供してきました。なによりも、みなさんに自由な時間、ものを考えたり友人と話をしたり、課外活動に取り組む時間を保証してきました。

 

 大学院においては、数少ない国立の商学研究科として、社会の幅広い層の人々に、高度な専門知識・理論と、専門職大学院にあたっては高度専門職業人として必要な実践的な知識・能力を身につける機会を与えてきました。

 

 みなさんが小樽商科大学で身につけた能力・意欲は、これからの人生に必ず役に立つと確信しています。大切なことは、卒業した後も、常に学ぶ態度を持ち続けそれを実行することです。

 

 最後に、小樽商科大学は、卒業生・修了生(OB・OG)が現役学生を支援することの熱心さでも全国有数の大学です。みなさんのなかには、在学中に、同窓会・緑丘会から様々な支援を受けた人がいるはずです。そして、この関係は卒業後も続くと思います。ですから、今度はみなさんが後輩のために支援をしてあげてください。

 

                          
 みなさんのご健闘をお祈りしています。

 

                                           2020年3月17日
                                  国立大学法人小樽商科大学学長 和田健夫

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