2023.03.17
令和4年度学位記授与式(3月卒業) 学長告辞
皆さん、卒業そして修了おめでとうございます。
本学の教職員を代表して心よりのお祝いの言葉を送りたいと思います。また、保護者の皆様のお慶びは察するに余りあるものがあります。昨年4月に本学は帯広畜産大学、北見工業大学と経営統合を果たし、国立大学法人北海道国立大学機構を創設し、その一員となりました。皆さんは経営統合後初の卒業生、修了生となります。
これまでコロナ禍においては、学位記授与式の中止や保護者や来賓の方々の列席を控える形で学位記授与式を挙行してきました。今回はようやく、卒業生、修了生そしてその保護者の方々が参加するものとなりました。例年、本学の体育館で行われてきた学位記授与式ですが、本日は久しぶりの小樽市民会館での開催となりました。
今日、商学部を卒業される皆さんは3年間に渡り、コロナの影響を受けてきました。大学院を修了される方々はほぼすべての期間を通じてコロナ禍のなかの大学院生活だったと思います。オンライン授業が導入され、その対応に戸惑うことも多かったと思います。クラスや部活、サークル活動で友人とともに時間を共有することも大きく制限されました。激変する環境に翻弄されることもあったと思います。しかし、それらの変化を乗り越え、卒業、修了される皆さんに対し改めて敬意を表したいと思います。
Adversity makes a man wise,「艱難汝を玉にす」という言葉があります。皆さんは想像していた学生生活、大学院生活と大きく異なる現実に直面しました。これを乗り越えるためにはマイナスをプラスに変える大きな努力を必要とします。人は順風のなかではなく、逆境の時に成長するものであります。コロナ禍への対応に苦しまれた学生時代は皆さんを一回りも二回りも大きくしたと思います。また、今後の人生においてもコロナ禍のなかでの経験は必ずや活かされるものと確信しています。
今、社会は大きく変化しています。日本は失われた30年といわれるように経済の停滞が続いています。周辺のアジア諸国が順調に経済発展を続ける中、アジアにける日本のプレゼンスは低下しました。同様に世界におけるプレゼンスも低下しています。少子高齢化、経済の東京一極集中、ICT分野の遅れなど、すぐには明るい展望を見出すことはできません。
特に我々が住む北海道においては人口減少、地方経済の疲弊が急速に進んでいます。古い世代の記憶にある高度経済成長やバブル期の経済成長は過去のものです。これまでとは異なる、新しい社会や経済の在り方を模索する必要があります。若い皆さん方の、既存の常識にとらわれない自由な発想が今後の日本の浮沈のカギを握っているといえます。
日本のみならず、世界も大きく変化しています。ロシアのウクライナ侵攻から1年以上がたちましたが、依然として先行きは不透明です。不安定な国際情勢は多くの地域でみられます。このような政治情勢は経済にも大きな影響を与えています。穀物や資源価格の高騰は円安と相まって我が国の経済に影を落としています。皆さんには是非、身近な問題だけでなく常に広い視野を持ち国際情勢にも敏感であってほしいと思います。
世界のビジネスシーンでは英語が共通語です。また、ビジネススクールを出た人材が増え、高学歴化が進んでいます。この面でも日本の遅れが明らかになっています。日本人の賃金水準は近隣諸国にも劣るようになりました。特に管理職レベルの賃金水準はアジアの中でも後れを取っています。賃金水準のみならず、世界でも求められている人材と日本において求められる人材像の乖離も問題です。これは世界と日本の経済の実態の反映でもあります。
現在、社会人のリカレント教育、リスキリングが叫ばれています。海外に比べ我が国における社会人教育は残念ながら遅れています。制度的な問題もありますが、この遅れを甘受するのではなく、継続的に自ら学ぶ姿勢を是非続けて下さい。社会に出ると大学時代以上に学びが必要となります。職業に直結する学びだけではなく、人格、教養を高める学びも不可欠です。常に高い目標を持ち、それに向けてたゆまない努力を継続して頂きたいと思います。社会は常に変化しています。変化への対応力は継続的な学びからのみ得られるものです。
コロナ禍で薄れた人と人との結びつきは対面の増加とともに戻っていくことでしょう。そのつながりはこれまでとは異なるものかもしれません。時代やコミュニケーションの手段が変わろうとも人間は一人で生きていけないことに変わりはありません。また人は自分自身のアイデンティティをその帰属する組織や社会に求めます。皆さんはこれまで小樽商科大学の一員でありました。これからは本学の卒業生として社会に出て行かれます。
本学の卒業生で構成される同窓会である緑丘会はおそらく日本で最も強いきずなを持った同窓会の一つであるといえます。一昨年の創立110周年の記念募金ではコロナ禍で困窮した学生のために急遽募金の目標を1500万円上積みして頂き、いち早く学生に奨励金を支給することができました。また、1億円を超える110周年の募金は学生の皆さんの課外活動や国際交流のために活用されています。それのみならず、毎年金銭的な支援を頂いており、皆さん学生生活をより豊かにするために活用させて頂いています。
本学の112年の歴史は大学のみならず、卒業生とともに積み上げてきたものであります。それは世代間のバトンの引継ぎでもあります。皆さんには卒業後も同窓会組織を通じて本学とともに歩んでいただきたいと思います。大学そして同窓会は常に皆さんのサポーターであり、皆さんのアイデンティティの根底にあり続けます。
最後になりますが、皆さんは限りない可能性を秘めています。自分自身を信じ、力強く未来を切り開いて頂きたいと思います。
皆さんの健康と幸多き未来を祈念して、私の挨拶を終わります。
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