2019.09.20
令和元年度学位記授与式(9月卒業) 学長告辞
告 辞
この9月に卒業される16名みなさん、ご卒業まことにおめでとうございます。私ども教職員は、みなさんと共に過ごしたことを誇りに思います。
みなさんにとって、小樽商科大学はどんな大学だったでしょうか。
小樽商科大学は、特定の分野で専門知識を深める教育を心がけてきました。同時に、人文社会・自然科学、外国語など幅広い分野の知識を修得するカリキュラムを用意しています。そして、百年以上の伝統をもつ実学の精神に基づいて、実践や体験、様々な分野で活躍する人との交流からも学ぶ機会を提供してきました。なによりも、みなさんに自由な時間、ものを考えたり友人と話しをしたり、課外活動に取り組む時間を保証してきました。
みなさんは、それらを十分に利用し、知識、能力、態度を身につけて卒業されるのだと思います。私は、この数年、本学の学生が、ゼミナール活動、課外活動、学生ベンチャーなど様々な分野で、受賞したり社会で高く評価されている姿を見て、大変心強く感じております。これからも実学精神を発揮してくれることを期待しております。
この5月には、年号が変わりました。年号によって時代を区切るとすれば、平成の30年は、一言で言うと、数々の災害と社会変革に見舞われた激動の時代でした。
我が国を襲った大規模地震、水害、火山噴火そして原発事故は、安全神話に対する考え方や豊かな社会における人間関係の在り方を根本的に変化させました。
平成に入って早々に発生したバブル崩壊は、我が国を経済大国の地位から引きずり下しました。その後は、低成長、高齢化、財政赤字に悩まされ、苦しみ続けています。他方で、平成の時代に拡大したグローバル化と急激に発展したデジタル化(ICT技術の発展、データ社会、人工知能の発達など)は、わが国の経済構造、ビジネスのありかた、さらには社会構造まで大きく変えようとしています。
技術革新が進行し、新興企業や新産業が次々と生まれている時代です。それに伴って、働き方も変わっていかざるを得ない。国全体の人口は減少しているにもかかわらず、働く人の数は増え続けている。この就業人口の増加を牽引しているのは女性や高齢者・シニアです。とくに女性の就業率の向上はめざましく、生産年齢人口に占める割合は主要先進国並みになりつつあります。「人生100年時代」とも言われます。おそらく、みなさんは、60歳過ぎても、70歳になっても働き続けると思います。一つの会社で働き続けるよりも、よりよい職場を求めて転職するのが当たり前の時代になりつつあります。
ご存じのように、経団連は、昨年、採用活動の自主ルールを今年度を以て廃止することを表明しました。このルールが守られていないこと、一括採用の方法では、企業が求める人材・能力の見極めが困難であることなどが背景にあると言われています。そして、経団連の働きかけで、経済界と大学が直接、継続的に対話する枠組みとして「産学協議会」を設置し、大学教育や採用方法に関する話し合いを始めようとしています。大学教育では、文系・理系を越えたリテラシー教育、成績・卒業要件の厳格な評価、海外留学やギャップイヤーの促進、教育の質保証、学習成果の可視化などが話題とされています。経済界が、ここまで大学教育に関心を示すとは、正直驚きを禁じ得ません。
それだけ一層、変化する社会に対応できる一人一人の能力が求められているのです。それは、採用の時だけではありません。就職後も同様です。アメリカの著名な経営学者・思想家であるピーター・ドラッカーは、今から30年前に、「変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する企業家および企業家精神(アントレプレナーシップ)」の重要性を予測しました。さらに、企業家精神は、継続的学習を必然のものとする、学習は青年期、社会人になったとき完了するものとする考えは誤りであると言い、学び続けることの重要性を強調しています。一人一人の人間が、自らの人生において、自らの意志によって、さまざまなキャリアを探し進んでいくことになると言っています。まさに今の時代にあてはまることばではないでしょうか。
私も、同じことを、みなさんにお伝えしたい。みなさんが小樽商科大学で身につけた能力・意欲は、これからの人生に必ず役に立つと確信しています。大切なことは、卒業した後も、常に学ぶ態度を持ち続けそれを実行することです。
最後に、小樽商科大学は、卒業生(OB・OG)が現役学生を支援することの熱心さでも全国有数の大学です。みなさんのなかには、在学中に、同窓会・緑丘会から様々な支援を受けた人がいるはずです。そして、この関係は卒業後も続くと思います。ですから、今度はみなさんが後輩のために支援をしてあげてください。
みなさんのご健闘をお祈りしています。
2019年(令和元年)9月20日
国立大学法人小樽商科大学学長 和田健夫
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