科目一覧へ戻る | 2024/01/31 現在 |
科目名/Subject | 日本経済史 |
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担当教員(所属)/Instructor | 高槻 泰郎 (商学部) , 中島 大輔 (商学部) |
授業科目区分/Category | 昼間コース 学科別専門科目 |
開講学期/Semester | 2023年度/Academic Year 前期/Spring Semester |
開講曜限/Class period | 月/Mon 3 , 火/Tue 3 , 他 |
対象所属/Eligible Faculty | 商学部昼間コース/Faculty of CommerceDay School,商学部夜間主コース/Faculty of CommerceNight School |
配当年次/Years | 2年 , 3年 , 4年 |
単位数/Credits | 2 |
研究室番号/Office | 中島 大輔 |
オフィスアワー/Office hours | 中島 大輔(By Appointment) |
更新日/Date of renewal | 2023/03/01 | ||
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授業の目的・方法 /Course Objectives and method |
この授業の目的は、経済学の考え方を使って、歴史上に起きた出来事の意義を考察する能力を培うことにある。歴史上に起きた出来事の中には、現代に暮らす我々にとって理解しがたいことが少なくない。例えば、戦国武将の今川氏は、喧嘩が起きたら、その原因を問わず、喧嘩に及んだ当事者を双方ともに死罪とする法を布いていた。当時は野蛮であったと片付けるのは容易だが、極めて洗練された法(「今川仮名目録」)を布いていた今川氏が、あえてこのような極端な法を布いた背景や狙いを解釈してみることも重要ではないだろうか。 江戸幕府は数多くの「株仲間」を公認し、特定の取引について独占を認めていた。江戸幕府は独占のもたらす社会的コストについて無知であったからである。このように断じてしまえば、そこで思考は停止する。江戸時代の初期には「楽市・楽座」の方針をとっていた江戸幕府が、方針を転換して株仲間を容認するに至った背景をもう少し掘り下げて考えてみるべきではないだろうか。 江戸時代の大名は、沢山のお金を商人から借りたが、仮にこのお金を返さなくても、江戸幕府から罰せられることはなかった。そもそも訴訟になることすらなかった。「身分制の社会では仕方なかったのだ」と片付けてしまうと、多くの商人が大名にお金を貸し続けた理由を合理的に説明することはできない。また、多くの金融商人が、明治時代以降に近代的な銀行へと転身できた理由を説明することができない。 プレイヤーの合理的行動を仮定して分析を行うのが経済学であり、その対象は現代の事象に限られるわけではない。数百年前でも、数年前でも、過去に起きた出来事を正確に解釈し、その本質を見極めるためには、(A)歴史的背景を踏まえた上で、(B)論理的に考察する必要がある。(A)にあたって歴史学の考え方を用い、(B)にあたって経済学の考え方を用いるのが経済史という学問である。 この授業では、実際に江戸時代に生じた様々な経済事象について、まずは歴史学の手法を用いて事実を正確に復元する過程を紹介し(高槻が担当)、その上で当該インシデンスを理解する上で必要な経済学の理論的な道具立てを紹介する(中島が担当)。あくまでも経済史の講義であるため、比重は歴史的事象の紹介に置くことになるが、経済学を用いて過去の事象を理解するトレーニングを受講生には積んで頂くことになる。 |
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達成目標 /Course Goals |
皆さんの身の回りに、「不思議な」風習・習慣・ルールは存在しないだろうか。そういうものなのだから、受け入れるに越したことはない。そのように捉えて思考を停止し、「謎ルール」に身を委ねるのもひとつの戦略であるが、本講義の履修者には、これらについて歴史的背景から捉え直し、なぜそのようなルールが生まれ、今に至るまで維持されているのか、その合理的な理由とは何なのかを考える人になって欲しい。経済史を学ぶことは、その最良のトレーニング法である。 そこで本講義では、過去に生じた出来事を合理的に解釈し、説明する能力を培うことを目標とする。具体的には、講師が提示した様々な歴史的事例について、(1)なぜそのような現象が起きたのか、歴史的な背景を理解し、(2)その現象が持った意義を経済学に基づいて考える能力を培うことを目指す。 歴史に詳しい人材を育成することは主眼になく、歴史的知識の習得(いわゆる暗記)や歴史的資料の読解能力の習得は求めない。日本史をこれまで学んだことがない人でも、自由に考察・議論をしてもらうことを重視する。 |
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授業内容 /Course contents |
講義は面接授業の形式で計15回実施する予定である。質疑応答は、発言機会の平等化を図るため、基本的にはGoogleフォームを通じて行い、講師が応答するべきと判断した質問・コメントについて取り上げることにする。 各トピックにおけるディスカッションの活発度合いに応じて、講義時間を弾力的に割り振りたいので、以下のトピックを各回に厳密に割り当てることはしない。 <取り上げる予定の歴史トピック:担当・高槻> ●経済史学とはいかなる学問か-歴史学と経済学のハイブリッド- ●喧嘩両成敗(喧嘩をしたら理由を問わず双方死罪)は合理的か ●なぜ江戸時代の人々はコメに拘ったのか(1)-米納年貢制という不思議な貢租システムを考える- ●なぜ大坂は「天下の台所」となったのか-偶然か、必然か- ●世界初のデリバティブ取引市場誕生の背景-リスクヘッジか、投機か- ●なぜ熊本藩は全ての年貢米について、米俵に百姓の名前と住所を書かせたのか ●なぜ江戸時代の人々はコメに拘ったのか(2)-大名・農民が商品化したのはコメだけだったのか- ●大名はなぜ商人に金を返したのか-司法不在の金融市場がそれでも機能した理由- ●江戸幕府はなぜ旗振り通信を禁止したのか-飛脚で我慢できない人々と飛脚以外我慢ならない幕府- ●米価の安定はなぜ難しかったのか-基準価格の強制、恫喝、そして対話へー ●両替屋はどのようにして「銀行」となったのか-藩債処分「大打撃論」を疑う- この他、受講者の関心に応じて、また講義中のディスカッションから派生して、新たなトピックを立てる可能性がある。その場合、上記のトピックで扱わないものが出てくる可能性があることを了解されたい。 |
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事前学修・事後学修 /Preparation and review class |
達成目標の欄にも書いた通り、本講義では、歴史的知識の習得それ自体を目的としない。むしろ、現実に起きた事象を経済学的に解釈する癖をつけてもらうことを目的とするため、以下のような入門書の内、興味を持ったものに目を通しておくと、スムースに講義内容に入っていけるのではないかと考える。 ●清水克行『室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界―』新潮社、2021年。 ●梶井厚志『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』中央公論新社、2002年。 ●高槻泰郎『大坂堂島米市場―江戸幕府VS市場経済―』講談社、2018年。 本講義を履修後、経済学的に歴史上の事象を考察することに興味を持った学生は、以下の書籍にあたることで、さらに理解を深めることができると考える。 ●中林真幸・石黒真吾編『比較制度分析・入門』有斐閣、2010年。 ●ポール・ミルグロム、ジョン・ロバーツ『組織の経済学』(奥野正寛・伊藤秀史・今井晴雄・西村理・八木甫訳)NTT出版、1997年。 |
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使用教材 /Teaching materials |
講義毎にスライドとして共有・映写する。 | ||
成績評価の方法 /Grading |
受講者の人数などを勘案して、講義最終日での論述試験か持ち帰り式の論述試験のいずれかで行う。論述試験は、講義中に取り上げた経済的な事象につき、その背景や帰結を説明した上で、当該事象が有した意義を論理的に説明することができるか否かを問うものとする(100点満点)。また、講義中の議論への参加度も、論述試験への配点とは別に、ボーナス点として成績に加味する(最大20点、なお成績上のスコア上限は100点である)。基本的にはGoogleフォームに入力する質問、コメントに応じて評価する。 | ||
成績評価の基準 /Grading Criteria |
論述試験については、講義内容を正確に理解し、それを論理的にアウトプットする能力を有しているか否かによって評価する。また講義内容の理解を深めることに裨益するような質問、コメントを行ったものに対してボーナス点を与える。 | ||
履修上の注意事項 /Remarks |
アクセシビリティに関連して、合理的配慮を求める受講者は事前に教員まで連絡すること。 | ||
実務経験者による授業 /Courses conducted by the ones with practical experiences |
該当しない/No | ||
授業実施方法 /Method of class |
①面接授業/Face-To-Face class | ||
遠隔授業 /Online class |
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No. | 回(日時) /Time (date and time) |
主題と位置付け(担当) /Subjects and instructor's position |
学習方法と内容 /Methods and contents |
備考 /Notes |
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該当するデータはありません |