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2025.01.08

令和6年度第12回講義:影山 みゆきさん(R5 OBS修了)「流れに乗って生きる ~ジブン経営(マーケティング)のすすめ~」

講義概要(1月8日)

 

○講師:影山 みゆき 氏(2023年大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻修了/Colyzon代表)

 

○題目:「流れに乗って生きる ~ジブン経営(マーケティング)のすすめ~」

 

○内容:

私は、大学時代のアルバイトがきっかけで流通業の面白さに気づき、卒業後は道内大手スーパーマーケットグループへ就職した。OBSでその学問的な裏付けを学んだ後に、さまざまな縁に導かれて独立。現在はマーケティングコンサルタントの仕事をしている。講義では、経営学やマーケティングの観点から、学生時代のいまこそ考えたい、「自分らしさ」について、そのきっかけやヒントになるワークを提供したい。

 

 

「人生100年時代、いかに“自分らしく”生きていけるか」を考える

 

影山 みゆき 氏(2023年大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻修了/Colyzon代表)

 

 

 

 

自分らしくあるために

 

私は平成最初の年に、オホーツク圈の内陸のまち、美幌町で生まれました。高校までは地元から出たことがありませんでした。北海学園大学で経営学を学んで、2012年に卒業。旭川地場のスーパーマーケットに就職して、チェッカー業務を経験した後、入社時から希望していたバイヤーの仕事を長くやらせてもらいしました。バイヤーとは、売場に並ぶ商品の選定と仕入れ、値付けやチラシに載せる商品を決めて売上を作る仕事です。
あとで少し詳しく話しますが、その会社に9年ほど勤めたのち、食品メーカーへ転職し、小樽商科大学の大学院OBS(小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻)で社会人大学院生として2年間学びました。その後、OBSを修了した2023年の春に、Colyzon(コライゾン)という屋号で、BtoC企業向けにマーケティングのコンサルティング業務を行うために独立しました。この屋号には、「お客さまや関わる人と共に考え、分析し、成長するきっかけのような存在になる」という想いを込めて名付けました。こちら側が一方的に何かを提供するのではなく、一緒に、あるいは共同で、を意味する「Co」という接頭語を付けていることがポイントです。

 

現在は、OBSの非常勤講師のほかに、産学連携部門の提携コンサルタントとしても小樽商科大学に関わっていて、深い縁を感じます。
趣味はBリーグ観戦。バスケットボールは中学・高校とプレーしていましたが、今はもっぱら観る専門で、レバンガ北海道のゲームを観にいくのが大好きです。あとは、昨年からひとり旅にもハマりはじめました。

 

今日は、私から一方的に講義をする形式ではなく、みなさんにいくつかのワークを行ってもらいながら進めていきます。隣の人、あるいは前後の人と2名か3名のグループを作ってもらいます。

 

今日のお話のテーマは、「ジブン経営(マーケティング)」です。
人生百年時代と言われる中で、みなさんがこの先、「いかに自分らしく生きていけるか」を考えるきっかけになる時間にできれば良いと考えています。

 

というのも、学生時代から現在に至るまで、特に起業前後のこの数年、私はいろいろな場面で自分らしさについて考える時間がありました。今日この話を聞いてくださっているみなさんにも、就活をはじめ、この先の人生の中で、自分らしさについて深く考えさせられる時がきっと来ると思います。その時に、今日の話が少しでも役に立てば良いなと思います。

 

では、なぜ「自分らしさ」が大切なのか—。
みなさんもこれまでの人生の中で、「自分らしさが大事」ということをいろいろな人から言われてきたのではないでしょうか。もちろん私もそうです。でもなぜ大事かと問われると、なかなか答えに困るテーマなのではないでしょうか。
私の答えは、「自分の人生を生きるのはほかの誰でもない、自分だけだから」—。ただし、これが正解ということではありませんので、あくまで一つの考え方としてみなさんも考えてみてください。

 

いま、自分の人生を生きられるのは自分だけという話をしました。しかし、そうは言っても自分は家族や誰かのために生きたい、と考えている人がいるかもしれません。見方によっては、そういう側面があることも否定できないように思います。ただ、そのような考えを持つ人でも、日々をどう暮らしていくかを決めるのは、結局自分自身なのではないでしょうか。

 

その中で、私はいかに多くの場面で自分らしさを発揮できるかが大事だと考えています。他者との関わりがある以上、「どんな場面でも自分らしさを発揮すること」は困難でしょう。しかし、来るべき場面で自分らしさを発揮できるかどうかは、あくまで自分自身にかかっていると言うことができるのではないでしょうか。もっと言えば、人生のとても重要な局面で自分らしさを発揮することができれば、自分なりに生きている意味や価値が見出されて、その後の人生が輝いていくのだろうとさえ思っています。

 

 

「自分らしさ」以前の私-私の履歴書

 

ところで、「自分らしさ」とは何でしょう?
インターネットでいろいろ調べてみましたが、「他者にとらわれず自分の価値観や性格を尊重していること」、「自分の価値観を大切にして自然体で言動が行えること」、「周りの人があなたに対して持つイメージ」、「偽りがない本来の自分の姿」など、なんとなく同じことを言っているようで微妙に表現が違います。これと同じように、みなさん自身も「自分が思う自分らしさ」の定義を持っていることと思います。ただ、今回は共通認識を持つために、私が思う自分らしさ=「自分自身で『生き生きとしている実感』が得られていること」、を定義とします。そこから話を進めていきます。

 

さて、今回の講演にあたって、私は「自分らしさ」をめぐって、思いつく言葉をできるだけ洗い出してテキストマイニングにかけて分析してみました。文字の大きさが特徴を表しているのですが、「凝り性」や「創意工夫」が目立つ一方で、「自己否定」や「遠回り」というワードも並んでいます。さらに、「個人戦」、「何度でも」、「とことん」、「負けず嫌い」、といった言葉も結構目立ちます。
これらを総合して私を一言で表すなら、「自己肯定感の低い職人気質の人間」、だと言えるでしょう。これ自体には、中学や高校のころから、なんとなく自覚していたように思います。でも、仕事をするようになってからは、ほかの要素もちゃんとあることに気づけるようになりました。

 

もう少し掘り下げるために、今回は「自分エンジングラフ」というもので私の生い立ちをグラフ化してみました。上向きはモチベーションが上がっていて、下向きはガクンと下がっていることを意味します。

 

小学生の時は水泳に熱中していて、小さな全道大会で優勝したこともあり、グラフはどんどん右肩上がり。しかし、中学校でバスケットボールを始めて、競技自体は好きでしたが、なにしろチームプレイが苦手で思うような活躍ができませんでした。それでも、バスケが好きなことには変わりないので、高校でも競技を続けました。しかし、状況は変わらず、交友関係もあまり上手くいかなかったこともあり、どん底だったと今振り返っても思います。おまけに、大学受験では、第1志望の小樽商科大学に不合格。そう考えると、今日この場に立てていること自体が当時からすれば奇跡のような出来事で、非常に感慨深い時間だと思っています。

 

大学は、北海学園大学の二部(夜間課程)に通いました。小樽商科大学で言うところの夜間主コースですね。授業は夜に行われるので、日中はずっとリサイクルショップでアルバイトをしていました。これが後のスーパーマーケットでのバイヤー職につながるきっかけとなったのですが、この仕事がビックリするくらい楽しくて、面白かったのです。それこそ、アルバイトなのに休みも自主的に職場に行ったりするくらい本当に楽しくて。自分で仕入れて(買取して)値付けをした商品が目の前で売れていくことにとてもやりがいを感じていました。このおかげで、アパレルにも随分詳しくなりました。そして、何よりもこの時に私は初めて人から必要とされる人間になれたような気がしていました。

 

さらに、人とつながることや大人と話す楽しさを知ったのもこのころです。この感覚は、就職活動はもちろん、今でもとても役に立っています。就職活動では、合同説明会や就活関係のイベントに参加して、就職コンサルタントの方や企業の採用担当者、他の大学に通う同年代の学生など、とにかくいろいろな人に出会って話をしてきました。この中には、15年近く経ったいまでも連絡を取ったり、一緒にご飯を食べに行ったりする付き合いのある方もいるくらい、私にとっては貴重な財産となっています。

 

卒業後に就職を考えている人は、人生でたった一度の新卒で臨む就活ですが、自分が知らない世界や企業、人との出会いの場でもあります。そこで出会う人との出会いや縁を大切にしていってほしいと思います。

 

と、ここまでは結構良い話だったと思うのですが(笑)、肝心の成果は全くあがりませんでした。グループディスカッションや面接が大の苦手だったのです。東日本大震災が起きた年だったこともあり、エントリーシートを書いたり面接を受けたりした企業の数は50社を下りません。なので、就活自体は結構楽しかったのですが、活動を遅く始めた友達の方が先に就職先が決まるなどしていたので、またもやグラフは急降下です。そんな状況でしたが、4年生の秋口になんとか内定をもらうことができました。それが、一社目の旭川本社の食品スーパー(現・道北アークス)です。

 

 

 

 

達成感と共に新たなステージへ

 

就職先では、リサイクルショップでのアルバイトの経験から、バイヤー職を志望して入社したものの、最初の配属は、一番やりたくなかったチェッカーの仕事でした。接客が苦手なことに加えて、手先が不器用でお中元やお歳暮などの包装がままならないことがその理由です。同期入社の仲間はいましたが、旭川自体に知り合いがいなかったこともあり、モチベーションは低空飛行を続けました。

 

1年後、念願だった本部の商品部に異動になりました。やっとだ、と思いましたが、新店のオープンや改装で、現場にかり出されることも多々あります。あるとき、匿名のクレームメールが本部に入りました。私が態度悪そうに通路を歩いていた、とか、身に付けていたアクセサリーが気になるといった内容でした。
私はもちろんふつうに働いているつもりだったのですが…。当時の上司からは当然、ガッツリ怒られましたし、若干トラウマにもなりました。ただこの経験があったからこそ、周りからの見られ方や、周囲に目配りをする大切さを意識するきっかけにつながったので、今となってはとても良い勉強をさせてもらったと思っています。

 

商品部に配属されて3年が経ったころ、バイヤーとして独り立ちできました。担当部門は冷凍食品で、年間5億円くらいの予算を受け持ちました。念願の仕事に、私はとにかく没頭しました。残業も厭わず、データを自分なりに掘り下げて、いろいろなやり方を試しました。いわばひとりブラック状態(笑)ですが、全く苦ではありませんでした。取引先の担当者とも頻繁に意見を交わす毎日でした。

 

そんな日々を過ごしていましたが、当時の市況も相まって、全社の売上が伸び悩む中、私の担当部門は4年間で1億円ほど売上をプラスさせることができました。
毎年、12月31日の店舗の営業終了後が仕事納めとなりますが、その年は自然と達成感に溢れ、今できることはやりきったという気持ちがいっぱいになって帰宅したことを鮮明に覚えています。そのエネルギーを外に向けたとき、どうしてもやりたかったことがあったので、私は次の職場も決めずに退職することを決意しました。
やりたいこととは、OBSで学ぶことでした。

 

高倍率の中、無事合格が決まり、札幌に移ってから転職活動をしていたのですが、前々職のつながりから、スーパーの共同仕入れやPB商品を開発する企業に入社することとなりました。この会社では、営業アシスタントの仕事などを経験しました。それまでは、買う(仕入れる)立場だったのに、いざ逆の売る立場になってみると、それはそれでとても難しく、視野が拡がる良い経験になりました。

 

そんな経験を積み重ねながら挑んだOBSの学びでは、それまでなんとなく感覚でやってきたことを学問的・理論的に裏付けることができて、とても楽しく過ごせました。年齢や立場の垣根を越えて真剣に議論ができて、しかも一生の仲間となるようなつながりを得られたこの2年間は、何にも代えがたい大切な時間だったと思います。そのご縁もあって、MBA(経営管理修士)取得と同時にColyzonという屋号で起業しました。

 

 

人生のプラスエンジンとマイナスエンジン

 

みなさんにもこれからこのグラフを描いてもらいます。いま話した私の生い立ちを時系列に沿ってモチベーションの高低で描いたグラフです。このグラフは、私が就活生のときからずっとお世話になっている恩師に教えていただいたもので、「自分エンジングラフ」と言います。
グラフが上向き、つまりモチベーションが上がっているときは「プラスエンジン」が駆動していて、下向きのときは「マイナスエンジン」が回転しています。分析してみると、私のモチベーションが高まるときには、「人とつながること」、「結果に表れること」、「競争すること」、「必要とされること」、「数字を扱うこと」、「新たな知識を獲得すること」、といったことがありました。
逆にマイナスのときに起こっていたのは、「役に立てている実感がないこと」、「周りの反応を窺って行動をすること」、「敗北感を味わうこと」、「孤独感を感じること」、です。

 

このグラフの形を別のものに例えてみるなら、「人生は天気の移ろいのようなもの」と言えるでしょう。私たちの日常も、晴れの日があれば突然暴風雨が襲ってきたりします。それは偶然の重なり合いとも言うことができ、仮にどれだけ事前に対策を打っていても、そのときどきに応じて臨機応変に対応していくしかありません。

 

それでも、そこでただ偶然という大きな川になすすべもなく流されていくのではなく、「自分らしさ」をもってその流れに主体的に乗っていくことがとても大事だと思っています。その中ではもちろん、困難に打ちのめされて立ち直るのが難しい状況もあるでしょう。私自身もそういった経験はたくさんしてきたつもりです。ただ、そういうときでもただうなだれて落ち込んでいくのではなく、自分らしさを見失わなければ、きっと状況を打開できるときがくるはずです。

 

では、時間を取りますから、みなさんそれぞれにこの「自分エンジングラフ」を描いてみて、プラスとマイナスの出来事を具体的に書きだしてみましょう。そして、それぞれに共通する要素を整理してみてください。

 

グラフを眺めてみると、プラスエンジンが回っている状況では、多くの時間で「自分らしさ」が発揮されていたのではないでしょうか。逆に、マイナスエンジンのときには、自分という個性が発揮されていないことが多かったのではないでしょうか。

 

就活講座などでよく用いられる、「Will」(Want)、「Can」、「Must」という3つの円を描いたベン図を知っていますか?自分が「やりたいこと」、「できること」、「やらなければならないこと」—。この3つが重なる仕事が天職だと言われたりもします。
この図自体も分かりやすいのですが、私はこれに、「嫌なこと・避けたいこと」を加えて考えるのが良いと思っています。なぜなら、どんな人にも平等に与えられている1日24時間の中で嫌なことを少しでも減らすことができれば、時間とエネルギーの効率がグンと高まるように思うからです。とはいえ、嫌なことを100%避けていては、機会損失になる場合もあるでしょう。なので、取捨選択が大事ですが、そういう視点があっても良いのではないかと思います。
これを意識するために、もうひとつワークをしてもらいます。

 

「やりたいこと・やってみたいこと(Want)」と「嫌なこと・できれば避けたいこと(Dislike)」を、思いつくままに書いてみましょう。そのあとで、優先順位を付けていきます。とにかく書き出してみることが大事なので、まずはやってみましょう。

 

 

人生時計から、時間というリソースを意識する

 

次に、また違う視点から自分らしさを考えてみます。「人生時計」という考え方があります。言うならば、「人生100年を24時間で考えると、いま何時くらい?」というものを可視化してみることです。

 

35歳の私の例で説明します。35歳は35/100(=35%)です。1日は、24時間×60分で1,440分なので、35%だと504分(8.4時間)になります。つまり、午前零時に1日が始まってから8.4時間後。私はまだ午前8時24分にいることになります。

 

では、みなさんはどうでしょう。ご自身で計算してみてください。20歳は、午前4時48分ですね(1,440分の20%=4.8時間)。恐らく、ここにいるほとんどの人はまだ寝ている時間なのではないでしょうか。つまり、活動を始めるのはまだこれからなのです。今日一日何をしようかな、と考えるように、これからどう生きていくかを考えるきっかけになるのが、この「人生時計」です。

 

みなさんの生活も同じ24時間でも、その使い方は人によって、あるいは環境やキャリアによって大きく違ってくるはずです。私の場合、学生時代や会社員時代はさほど変わりませんでした(どちらも昼間は働いていましたから)。でもOBSの時代は睡眠時間がグンと減って、授業が終わって帰宅してから、午前2時過ぎまで課題に取り組むといった毎日を過ごしていました。独立後は、夕方に仕事を終えて食事をしたあとにまた仕事をすることもあったりするので、就寝時間は午前2時過ぎとか、OBS時代についた夜型のクセが未だに抜けていません(苦笑)。

 

そこで、みなさんも一日のおおよその時間配分を円グラフに落とし込んでみましょう。
その後で、24時間を理想的に配分した時間割表も作成してみましょう。現状の睡眠時間、大学で過ごす時間、家での勉強時間、家事の時間、移動に使っている時間、自由な時間などですね。現状はこうだけれど、理想的にはこうしたい、という整理もしてみましょう。そして、卒業してビジネスの世界に入った時、こんな時間配分で一日を過ごしたいな、という希望的構想も立ててみましょう。
要は、いま、とこれから。24時間という限られたリソースの中で、自分はどんな時間の使い方をしたいのかを考えてほしいのです。

 

そこで、みなさんも一日のおおよその時間配分を円グラフに落とし込んでみましょう。
その後で、24時間を理想的に配分した時間割表も作成してみましょう。現状の睡眠時間、大学で過ごす時間、家での勉強時間、家事の時間、移動に使っている時間、自由な時間などですね。現状はこうだけれど、理想的にはこうしたい、という整理もしてみましょう。そして、卒業してビジネスの世界に入った時、こんな時間配分で一日を過ごしたいな、という希望的構想も立ててみましょう。
要は、いま、とこれから。24時間という限られたリソースの中で、自分はどんな時間の使い方をしたいのかを考えてほしいのです。

 

ここで「ジブン経営(マーケティング)」という今日のテーマに立ち返ります。
ビジネスの世界もそうですが、戦略的に自分を動かすためには、身の回りにあるリソースをどう有効に使うかが問われます。そして、そのリソースの代表的なものは、時間にほかなりません。
ただ、時間には自分でコントロールできる時間と、できない時間があります。自身の置かれている環境やライフスタイルによってもその時間配分は大きく変わります。ですから、先程の同じグループのメンバーでも、時間の使い方は全然違っているはずです。

 

私がこれを強調する理由は、「やりたいことは無限でも、時間は有限」だ、と思っているからです。先程書いていただいた「Wants&Dislikes リスト」には、多くのやりたいこと(Wants)が生まれてきたことでしょう。しかし、それらのやりたいこと(達成すべき目標・目的)に対して、時間は、とりわけ自分がコントロールできる時間は、つねに不足していると言っても過言ではありません。それゆえに、その限られた時間の中で、やりたいことをひとつでも多くできる人生を歩めると幸福と感じるのかもしれないと思います。

 

ところで、どこかの授業で習ったかもしれませんが、リソース(資源)とは何だと思いますか。
リソースには形のあるものと、ないものがあります。有形のリソースとしてよく言われるのは、ヒト、モノ、カネです。みなさんでいう人の資源としては、家族や親戚、友人・知人、学校の先生たちなど、これまで出会った人が該当すると思います。
一方、形のない資源としては、いま言った時間のほかに、情報が挙げられます。さらに、企業で言えばブランド力や実績、ノウハウなど、知財と呼ばれる類いのもの。その人自身が持つ経験も重要なリソースです。
先ほど、「やりたいことは無限でも、時間は有限」という話をしましたが、時間だけではなく全てのリソースには限りがあります。ですから、「選択と集中」がとても大事なのです。

 

 

 

 

経営とマーケティングの枠組みの中に自分を置く

 

もう少し専門的な話をします。これも恐らく授業で聞いているとは思いますが、経営とマーケティングの位置づけに関して簡単に整理します。
経営(Management)とは、「事業目的を達成するために継続的・計画的に意志決定を実行に移して、事業を管理・遂行すること」です。そして、マーケティングとは、「お客様ニーズをつかんで、戦略的に需要の拡大と新たな市場開発を図る活動」です。つまり、お客様や社会(市場)から自社が選ばれるためにさまざまな活動に取り組むことが、マーケティングなのです。したがって、経営とマーケティングはそれぞれ独立しているものではなく、マーケティングは、経営の重要な一部に位置づけられると言えるでしょう。

 

私は仕事でいろいろな企業の方と関わりますが、営業やマーケティング部門以外の人たちには、自分の仕事は自社のマーケティングとは関係ないと思っている人が多くいるのが実態です。でも、企業の経営は、商品開発や財務、システム、営業、マーケティングなどが密接に関わり合って成り立っています。つまり、社内のどんな部署も、市場から選ばれるために存在しているわけです。

 

これは、今日の講演タイトルにもある「自分自身のマーケティング」でも同じだと思います。みなさんが卒業後、就職・進学・起業のいずれの選択肢を取るにせよ、社会から選ばれる存在になっていく必要があります。

 

企業のHPには、その企業が掲げる「Mission(自らの使命・社会への約束)」、「Vision(ミッションの実現に向けて目指す姿)」、「Value(ミッションとビジョンの実現に向けた価値観や行動指針)」、が掲げられていて、この実現のために具体的な戦略と戦術が展開されています。それらと自分のやりたいことや目指す姿が重なる、あるいは共通点を見つけることができれば、きっと“みなさん自身にとって”良い会社に巡り合えることでしょう。これは就職活動だけではなく、起業や進学でも同じことが言えます。取引先や協業先、進学先を選ぶときにも、この視点を持っていれば、何かに迷ったときのヒントになるように思います。

 

そこで、今日はこれを最後のワークとして、「ジブン経営(マーケティング)」という枠組みで考えてみたいと思います。
シートにある「目標」、「目的」、「戦略」、「戦術」、「リソース」、「アクションプラン」といった項目を、「ジブン経営(マーケティング)」の戦略として、埋めてみましょう。ただし、目標といっても、それほど大げさに考えなくて大丈夫です。先ほど書いていただいたやりたいことリストの中で最も順位が高かったもので良いと思います。

 

例として私が書いたシートをお見せします。
私の今年の目標は、「年間40日は生活圏外に行く」というもので、出張を含めた国内外への旅で考えました。
何のために?という「目的」は、さまざまな地域の文化や空気に触れることで、知見を広げて自分の引き出しを増やすため。非日常空間でリフレッシュする、という狙いもあります。そして、そのことにどんな価値を持たせるかという「戦略」では、これまで以上に取引先から信頼されるパートナーになることだと考えています。それをどうやって実現するかの「戦術」には、旅先で出会う人たちと交流したり、話題の施設やイベントに足を運ぶことが必要です。さらに、これを実行するために活用する「リソース」としては、スケジュールを調整して時間を作ることが必要です。そのために、今日からすぐに取り組めるような「アクションプラン」は、行き先と日程を具体的に決めて、チケットを取ることです。

 

というように、まずは1つでも多く埋められるように考えてみてください。
少し恥ずかしいかもしれませんが、全部埋まっていなくてもOKですから、企業が経営方針を発表するように、みなさん自身も「ジブン経営(マーケティング)戦略」を周りの人に発表してみてください。そして、これが結構大事なのですが、最後のアクションプランでは、「○○○したいと思います」ではなく、「○○○していきます」、ときっちり宣言してみてください。これによって、目標を達成しようという意識が自ずと高まっていくはずです。発表が終わったら、互いに発表者への敬意と激励を込めて拍手を贈りましょう。

 

 

フツーになるな、スゲーになるな、ジブンになれ!

 

今日のまとめに入ります。
今回は「自分らしさ」をめぐって話をしてきました。「自分らしさ」とはつまるところ、人生を豊かにしてくれるものにほかならないと思います。

 

人生を豊かにしてくれるもの—。それは人との出会いと学び、そして仕事や趣味。どれも大事なことですが、これらの全てを一回で経験できるのが「旅」だと思います。そのことに気付いたのがつい最近で、冒頭でも話したように最近は「ひとり旅」にハマっていますし、意識的にその時間を増やすようにしています。

 

私がそう考えるようになったのは、昨年、生まれて初めて海外に行ったことがきっかけです。アメリカのシリコンバレーで開かれたセミナーに参加するために、海を渡りました。子どものころから飛行機が苦手で出不精だった私ですが、この経験は自分にとってものすごいインパクトを持ちました。世界の広さや、自分が生きてきた世界の小ささに改めて気づくことができ、それまではあたりまえだと思っていた日本の良さを知ることができたのです。そして偶然にも、八村塁選手やステフィン・カリー選手が出場するNBAの試合を生で観ることもできました。そのほかにも、現地ではさまざまな経験をしましたが、たった一回の出来事でこんなにも人生が変わるとは思ってもいなかったので、ある意味この30年以上という時間をもったいなくしていたという後悔から、いろいろな場所へ足を運ぶようにしようと決めたのです。

 

よく「学生は時間があるけどお金がない、社会人はお金があるけど時間はない」と言われます。リモートワークでできる仕事が増えたとはいえ、会社に入るとなかなか自由な時間が取れないのが現実です。今は学生対象の格安旅行などもたくさんあるはずなので、いろいろ探してできる限り旅をしてほしいなと思います。

 

これからの時代、DXやAIは更なる進化を遂げていくことでしょう。しかし、これらがどれだけ発達しても人間から決して奪われないものがあると私は思っていて、それが「自分らしさ」なのではないでしょうか。だって、自分らしさを持てるのは、自分しかいないのですから。

 

仕事柄、私はたくさんのデータを扱いますが、モニター上で見る数字は、あくまでも過去の結果に過ぎず、実際に店頭に立つと、AIには予測できないであろう人間の心理や行動に気付くことがたくさんあります。みなさんもそうですが、私という人間は、私という「自分らしさ」を基盤に、毎日その時その時の感情や経験が掛け合わされてできていて、変化や成長を絶えず繰り返しています。だからこそ、表面的な知識や過去の情報はデータベースやAIに任せて、その上にオリジナルの創造力を磨いていくことが大事だと考えます。

 

先程、一日の時間配分の話をしましたが、ここでみなさんに、「1日の1%を自分の未来のために投資」することを提案します。1日の1%とは、1,440分の1%、つまり約15分。言うなれば「一日15分のススメ」です。

 

日々の生活を振り返ってみてください。なんとなく動画を見たり、SNSを見たりして時間が過ぎ去っていることはありませんか?
長い時間を確保して何かをしようと思うと、なかなか継続しなかったりするものですが、15分であれば捻出できそうな気はしませんか。これまではなんとなく過ごしていた15分を新しい勉強でも読書でも、あるいは日記を書いて内省の時間にしてみても良いでしょう。
この1%が積み重なって大きな効果が出ることを、「マージナルゲインの法則」と言います。一日15分を一年間続ければ、一年後には38倍にまで成長するそうです。みなさんは、このたった15分を含めて、これから先どんな時間の使い方をしていきますか?

 

最後に、私がこれまでの人生の中で影響を受けた人たちにいただいた言葉をアレンジしてみたこの言葉を贈ります。
「人生は早い者勝ち競争ではありません。全ての人が1人の例外もなく、いつかその人なりの形でヒーローになる可能性を持っています。フツーになるな、スゲーになるな、ジブンになれ」—。

 

みなさんの周りには(私の周りにも)、この人には敵わないな、すごいな、という人が少なからずいることでしょう。でも、その人に近づこうとしていくら努力しても、その人にはなれません。その人に近づく努力をしながらも、大切にすべきなのはあくまでも「自分らしさ」です。

 

井上雄彦さんの名作「スラムダンク」には、負傷で倒れた桜木花道が交代を勧告する安西監督に、「オヤジの栄光時代はいつだよ… オレは今なんだよ!!」、と感情を爆発させるシーンがあります。
スラムダンクが好きなので、ふとしたときに、私はこのシーンを思い浮かべます。

 

みなさんもこれから先、たくさんの栄光時代を積み上げていってください!

 

 

 

 

<影山みゆきさんへの質問>担当教員より

 

Q 学生諸君には、社会人が夜や週末に集まって学ぶ大学院について、イメージがわきづらいかもしれません。あらためて、影山さんが学んだOBS(小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻)とそこでの学びはどのようなものでしたか?

 

A 同級生は35名くらいで、新卒の人から定年退職をされた60代の方まで、さまざまな年齢の方が集う学びの場でした。現役の経営者や企業人、公務員、そして起業を計画している人など、生い立ちや学ぶ目的も多様です。講義の内容は、大づかみでいうと経営学の理論と実践です。経営の課題解決をめぐって理論を学び、具体的なケースを題材にしたディスカッションを行って、さらに深掘りしていきます。平日は18時30分から21時40分まで、期せずしてそのまま飲み会やお茶会になることも少なくありません。帰宅してからも、夜中過ぎまでレポート作成などがあり、ハードだけれど充実した日々でした。

 

 

Q OBSでの学びは、いまの影山さんにどのような糧になっていますか?

 

A 複雑な情報を整理・分析するフレームワークの使い方など、いろいろな思考のツールが得られたので、実務で活かすことができています。また、修了後にもつづく、年齢を超えた学友たちとのつながりもありがたいです。一方で、OBSでの2年間が夜型の勉強生活だったので、いまだに夜型の暮らしが抜けきらずに少し困っています(笑)。

 

 

<影山みゆきさんへの質問>学生より

 

Q やりたいこと、やってみたいことは人によってさまざまだと思うのですが、影山さんが、どんな人でも共通して学生時代に取り組んでおいた方が良い、と考えることは何でしょうか?

 

A 最後の方でもお伝えしたことですが、旅に出る経験を重ねると良いと思います。私が旅の魅力や価値に気がついたのは昨年のことですが、学生時代にこういう経験をしていれば良かったな、とつくづく思いました。特に旅先でいろんな人と言葉を交わしてみることが大切です。社会には、自分とは全く違う環境や価値観の中で育った人がたくさんいます。それをこういう世界で生きている人がいるんだ、と気づくだけで、自分がいかに小さい世界にいたかを知ることができるでしょう。
また、これは旅に限らずですが、自分よりも年上の人たちと話す経験をたくさんしておくのが良いと思います。社会人になって最初に接するのは大体年上の人ばかりですから、その練習にもなります。その意味では、大学の中でも、先生たちとコミュニケーションをたくさん取ってみても良いでしょう。最初は緊張するでしょうが、先生たちは必ずそんなあなたの気持ちを受け止めてくれるはずです。

 

 

Q 私は自分のやりたいことを見つけて、いまがんばって取り組んでいます。でもこの努力が実を結ばなかったらどうしよう、と不安な気持ちもあります。モチベーションをどのようにキープしたり、さらに高めていけば良いでしょうか?アドバイスをお願いします。

 

A 私は飽き性なので、モチベーションを維持していく難しさはよくわかります。大きな目標をひとつ決めたなら、その最終ゴールに向けて、ステップを細かく刻んでいけば良いと思います。遠くを漠然と見据えて不安を募らせるよりも、1日1日小さな歩みを続けていって、毎日少しでも進んでいることを確かめられるようになれば、暗闇の中でも歩いて行けるのではないでしょうか。そして、たとえわずかな前進だったとしても頑張った自分にご褒美を用意するのはいかがでしょうか。おしゃれでも、スイーツでも、自分が喜ぶものであれば何でも良いと思います。あとは、自分の取り組みを内省する意味でも、日記を書いてみるのも良いと思います。それを後々読み返してみると、きっと自分の成長した姿を客観的に俯瞰することができると思いますし、文章力をアップさせる効果もありますよ。

 

 

Q 影山さんは自己肯定感が低かった、と自己分析されていたましたが、私もそうです。マイナスエンジンの力を弱めてプラスエンジンをパワーアップしてくためには、どうすればよろしいでしょうか?

 

A 私にもたまに、どうしてもやる気が起きないときがあります。以前だったら、その自分に嫌悪感を抱いていましたが、最近はしかたないな、と思えるようになりました。なので、そういうときは多少の罪悪感は感じつつも、何時間もSNSをぼーっと見続けていたりすることがあります。流行りの言葉で言えば、「〇〇キャン(キャンセル)」の世界と言えば伝わるでしょうか。そんなことを言いつつも、大体のことは時間が解決してくれると思います。マイナスエンジンが無限ループを始めてしまったらちょっと大変ですが、その手前でだらだらしているうちに、さてそろそろやるか、と自然にスイッチが入ったり、案外他のことに取り組んでいるうちにあまり気にならなくなったりするものですよ。

 

 

Q 最初に勤めたスーパーマーケットのバイヤー時代に、売上をグンと伸ばしたというお話に興味があります。具体的にどんな策を講じたのでしょうか?

 

A 私はグロサリー(加工食品・日用品)部門の中でも冷凍食品を扱っていました。スーパーが売上を増やすためにやれることは、お客様の数を増やすか一人のお客様に買っていただく金額を増やすかのどちらかです。その中で、最も手っ取り早い方法は、他店より安くすることだと思います。いわゆる「客寄せパンダ」的な商売ですが、これでは利益が上がりません。企業が存続するためには、売上だけでなく利益を確保することも重要です。理想は、単価を下げずに売上と利益を拡大させることです。
では、これを実現するためにはどうすれば良いか—。例えば、競合店で売っていない商品を探してきたり、ポイントをたくさん付けたりすることなどがありました。あるいは、その冷凍食品にひと手間加えるだけでできるレシピ提案も有効でした。他にも工夫したことはありますが、日々試行錯誤を繰り返した結果がお客様の評価として数字になって表れます。ただ、当時はなんとなくの感覚でやっていた部分が多いので、これらの理論的な考えをOBSの授業で学んだときは、その答え合わせができたような気分になりました。

 

 

担当教員より

 

Q 最後に学生たちへ、大学生活へのヒントを提供していただく意味も込めてお聞きしたいと思います。マーケティングには前提となるお客さまの存在が欠かせません。そこで、自分を効果的に社会にアピールする自分マーケティングの枠組みでは、顧客をどのように設定したり考えれば良いでしょうか?

 

A そうですね。まず顧客以前に考えておきたいのは、「自分が本当にやりたいこと」や「なりたい自分」を想像してみることでしょうか。もちろん、それは途中で変わっても全然問題ありませんし、さまざまな経験を経ることでその姿は変わっていって当然だと思います。ただ、一旦「ありたい姿」を見据えた上でそこからバックキャスティング(逆算)すれば、設定すべき顧客も自ずと見えてくるのではないでしょうか。
その際に私が有効だと思うのは、AIなどの力を借りることもそうですが、まず家族や友人、あるいは自分が話してみたい(学んでみたい)人の知恵を借りることもその助けになると思います。
スマートフォン一つで世界中の人達と簡単につながれる時代になりました。その意味では、数名を経由すれば大体の人には会える時代になったとも言えるでしょう。要は、強い気持ちさえあれば大体誰にでも会える時代だということです。そのくらい、世の中はいろんな人がいろんな人と、いろんな風につながっています。ですから、そのことを踏まえて、周りの人、特に大人たちの力は遠慮なく借りてみると良いと思います。それが効果的に使えるのは、学生の特権だと思いますし、「立っている者は親でも使え」の精神は意外と大事です(笑)。そうやっていろいろ動いていれば、その時々で、自分にとって大切な人やカギが見えてくるのではないでしょうか。

 

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