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エバーグリーンからのお知らせ

2013.10.09

平成25年度第1回講義:「非メイン事業の国際化」(2013/10/9)

講義概要

 

・講 師:小野寺 泰男 氏/昭和46年卒

・現職等:元 東洋ゴム工業株式会社 顧問

・題 目:「非メイン事業の国際化」

・内 容:
ゴム産業を中心として自動車部品産業の内容、発展過程、規模等をたどり、部品産業の視点から自動車のビッグバン現象と自動車メーカー中長期戦略を検証する。1999~2001での国内自動車メーカーの国際再編に対しての部品メーカーの取り組みを実例で紹介する。
1.会社の紹介
・タイヤ業界でのポジション ・非タイヤ業界でのポジション ・国内外供給体制
2.ゴム産業の概説
・世界のゴム需要 ・天然ゴム ・日本のゴム産業
3.自動車産業
・産業を取り巻く環境 ・世界需要の変化と読み取るべき事項 ・『ビッグバン』
・自動車メーカーの中長期戦略
4.自動車部品産業
・産業のポジション ・産業を取り巻く環境 ・ゴム産業との関わり ・産業の課題
・プレイヤー ・グローバル化の取り組み
5.防振ゴム事業での取り組み実例
・取り組みの変化
・(国内)統合戦略~事業拡大
・(欧州)提携戦略~国際ネットワーク体制
・(北米・中国)成長戦略~成長地域への単独進出
6.皆さんへの期待
7.新しい展開
・内燃機関→HEV/EV→FCEV⇒新しい防振システム?

 

  • 講師紹介

昭和24年札幌生まれ。昭和46年本学商学部(経済学科統計学竹内清ゼミ)を卒業。同年春から東洋ゴム工業株式会社(大阪本社)に新卒入社して以来同社一筋。執行役員、取締役、代表取締役専務執行役員を経て、平成23年顧問に就任、平成25年退任。大阪在住。

 

「一途もええけど、柳のようなしなやかさも大切に。」

 

目標から外れても修正がきく人間になる

 

平成25年度のエバーグリーン講座第1回の特別講師、元東洋ゴム工業株式会社顧問の小野寺泰男さんがテーマに選んだのは、「非メイン事業の国際化〜防振ゴム事業の展開」について。本題の前にこんなメッセージからお話が始まりました。

「事前に皆さんから寄せられた質問を見ますと“なぜ東洋ゴムを選んだのか”とか“メーカーの事務とはどんな仕事ですか?”という内容が目立ち、皆さんがキャリア形成のプロセスを一つ一つ大事に考えていることが伝わりました。ですが、私がまず申し上げたいのは“思うどおりに行かないときにどうすんねん”と(笑)。就職に限らず、決めた目標通りにいかないときにすぐに修正がきくような、柔軟に考えられる人材になる。そこが大事なんやないかなと思います」。

小野寺さんの就活時代は金融業界が花形。競争率が高いなか、目線を変えて「面白そう」と惹かれたメーカー、東洋ゴム工業に入社して以来40年の終身雇用をまっとうされたキャリアの一端をこの日、「非メイン事業」というキーワードで紐解いてくれました。

 

メーカーはつねに世界競争をしている

 

大阪に本社を置く東洋ゴム工業の設立は昭和20年、終戦の年。各種タイヤ関連をメイン事業とするほか、非メイン事業として自動車用・鉄道車両用の防振ゴム製品をはじめ各種ゴム・ウレタン製品を取り扱っています。「メーカーはつねに世界競争をしている」といい、生き残りをかけたグローバル競争の苛烈さを知る小野寺さんは、タイヤメーカー・非タイヤメーカーの売上高ランキングを詳しく解説。「メーカーが失脚する大きな要因は技術革新の失敗です。若い皆さんにはぜひとも技術革新の風を起こしてほしい」と呼びかけました。続いて紹介された世界の新ゴム消費量データによると、日本を100とした場合、2000年ではEU(187)、アメリカ(178)、中国(134)、日本(100)だった上位国が、2011年になると中国(482)、アメリカ(168)、日本(100)、インド(80)に変遷。「ゴムやウレタン製品の使用量は文化のバロメーター。経済的にも勢いのある中国、インドの台頭と重なっている」と読み解きます。

 

 

 

世紀の業界再編成に「誰と組むか」を決断

 

「皆さん、ビッグバンてわかりますか? 宇宙がもとは一点の火の玉から始まり、それが大爆発を起こして現在の宇宙ができたという話です。これからお話するのは、自動車業界のビッグバンについてです」。小野寺さんの解説によると、自動車業界の“火の玉”とは伝統的なセダン車のこと。セダンを中心点とし、ステーションワゴンやピックアップトラック、ミニバンなど全方向的に広がった市場の拡散は、自動車部品産業にも大きな影響をもたらしました。そもそも自動車とゴム産業の関わりは非常に密接で、自動車一台につきゴム部品の使用量金額は、エンジンやサスペンションまわりに活用される防振ゴムで100USドルに該当。シートクッションやドアシール、ゴムホース類を含め、なくてはならない要素になっています。

そうした関係性のなかでゴム産業を内包する自動車業界が激変したのは1999年、倒産寸前だった大手N社の経営再編に伴う業界再編成から。N社・R社の資本提携後に発表される各種新車が同一のプラットフォームを採用する「Bプラットフォーム」対策が急務だった、と振り返る小野寺さん。「どの企業と手をつなぐか、が非常に大きな鍵だった」という言葉どおり、東洋ゴム工業も国内の統合戦略として同業K社と資本・業務提携をし、さらに国外でもM社と提携することで欧州の国際ネットワークを強化。Bプラットフォームの共同開発・共同受注に成功し、その後は北米・ケンタッキー州や中国・広州に工場を建設して成長地域に進出。事業継続の足固めが続いています。

 

求められるのは「書く英語」と「変わる力」

 

講義の後半、話は再び事前の質問に対する回答へ。「“小樽商科大学を出てよかったこと”は、ここで習った英語と数学が企業の中で結構いいところまでいけたこと。ただし今はどこの大学も熱心でしょうから、あぐらをかいていいという意味じゃない」。質問が多かった英語についても「“英語を必要としない仕事”? この世にあるんかいな(笑)。事務でも営業でも新人は国際電話会議の準備を任されたり、海外の誰々と連絡をとってと言われたりするのが当たり前」。ここで大きなポイントは「書く英語を鍛えること。ビジネスのうえで自分の意図を正確に伝える手紙はとても重要」。自動車業界の世界的なM&Aを経験した小野寺さんならではの助言に皆、真剣に聞き入っていました。

最後は、「繰り返しになりますが、いま、自分が将来何になるかを一途に考えている皆さんには、変化にどう対応するかにも目を向けてほしい。風に揺れる柳と同じ。しなやかに変化できる力をつけてほしいと願っています」。業界の新人研修に匹敵するような詳細かつ貴重なデータを元にした講義に大きな拍手が送られました。

 

[Q&Aタイム]

 

競争相手は誰? 成績が雄弁に語る努力の跡

 

学生1:先ほど「競争相手をつねに明確に」というお話がありましたが、やはり競争は勝つことが大事ですか? それとも勝敗以前のプロセスのほうが大事ですか?

 

小野寺さん:競争なんだから勝つのが一番大事に決まっているんだけども、その前にね、競争相手が誰なのか、何をターゲットにしているのかをきちんと見定めてほしいな、という意味です。例えばね、就活の面接で皆、エントリーシートに書いてあることを延々と繰り返すでしょ。学生時代にアルバイトでリーダーして…とか、これ、企業にしてみたら好きじゃないタイプ(笑)。本人は精一杯アピールしてるつもりでも、他にも同じようにアルバイトでリーダーして頑張ってきた人間はいっぱいおる。そのなかで「この小樽商大の学生がほしい」と思われるにはどうしたらいいか、を自問してほしいね。

 

 

 

学生2:就活中に「方向転換」をして、事前の業界研究をあまりしていない企業を受けるとき、どのへんを強化すれば企業に目をとめてもらえますか?

 

小野寺さん:すごく難しい質問だね。企業の人事担当者はプロだけども初対面の20分30分で「人間性」がわかるというのは正直現実的じゃない。ただ、「本気でうちに入りたそうだなぁ」というのはわかる。じゃあ、一番わかるのはなぁに?といったら「成績」です。成績からその人の頑張りや努力の跡が見えてくる。一般教養は力を入れんで自分の好きな専門科目だけ優秀、という人だと、私個人的には「大学の授業をなめてんのか」と思っていい印象は持ちません。勉強が足りない人は頑張らないと。数年前まで現役で最終面接を担当していた者として申し上げます。

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