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エバーグリーンからのお知らせ

2013.10.16

平成25年度第2回講義:「40年史観で見る“世界”,“日本”,“北海道”」(2013/10/16)

講義概要

・講 師: 舟本 秀男 氏(昭和41年卒)

・現職等: 現「財界さっぽろ」代表取締役社長 / 元 日本NCR取締役

・題 目: 「40年史観で見る“世界”,“日本”,“北海道”」

・内 容:

1.1865年に日本は開国、1905年の日露戦争勝利までの40年間で日本は世界列強の仲間入り。1945年に終戦を迎えゼロからの出発に。戦後40年間で日本は国民の懸命な努力で世界第二の経済国になった。しかし1985年のプラザ合意を起点にバブルが崩壊し「失われた20年」に。では、1985年からの40年後、2025年(皆さんが中核となって活躍する時代)はどうなっているのだろうか。

 ・「ミゼリー指数(インフレ率、失業率、ジニ係数)」

 ・「アベノミクスの経済効果」

 ・「人口増加と食糧・資源の供給」

 ・「地球温暖化と気候変動」

の各点から見ていく。

※8つのティッピングポイント(地球を激変させる要素)が地球環境にもたらす影響

 -チャドの砂塵

 -海洋大循環

 -氷山・氷床の変化

 -モンスーンの変化

 -エルニーニョ

 -熱帯雨林減少

 -メタンハイドレード

 -海洋CO2吸収

2.北海道が優位性を発揮できているだろうか?

  • 講師紹介
 

昭和18年北海道留萌市生まれ。昭和41年本学商学部(管理科学コース)卒業、日本NCR株式会社入社。函館、札幌、東京、米国本社で勤務。平成12年日本NCR退社後、舟本流通研究室代表を経て、平成19年より株式会社財界さっぽろ代表取締役社長に就任。札幌在住。

 
 

十人いれば十通りの見方がある。物事を多面的に見る力。

 
 

40年かけて作った国を40年でゼロに

 

今期2人目の特別講師、舟本秀男さんが選んだ題材は、「40年史観で見る“世界”“日本”“北海道”」。『昭和史』の著者半藤一利が提唱する「40年史観」という枠組みを借り、いまの学生たちが社会人として活躍する2025年までの歩みを検証します。“舟本流40年史観”は日本が鎖国から開国に踏み切った1865年からスタート。40年後の1905年日本は日露戦争に勝利し、近代国家として世界の列強に肩を並べる躍進の時代が始まりました。ところがその後太平洋戦争に突入し、1945年の原爆投下により敗戦国に。「40年かけて作った国を40年で滅ぼしたことになります」。そして戦後の焼け野原から立ち上がった日本が再び勢いを取り戻し始めたところで、1985年の「プラザ合意」が引き金となり狂騒的なバブル時代が幕開け。バブル崩壊後の日本経済はいまだ低迷の時期に終わりが見えず、果たして2025年を迎えたときに世界、日本、北海道はどうなっているのかーー。その検証に舟本さんは「アベノミクスによるデフレ脱却?」と「地球温暖化と気候変動」という2つのキーワードで話を進めていきました。

 

国債の価値が下がれば金利は上がる

 

舟本さんが現職で代表を務める『財界さっぽろ』ホームページの「社長ブログ」では、多角的な視座から考察する歴史・経済・風土観を発信中。講義当日スライドに映し出された「アベノミクスシナリオ」も、「これを作るまでに20冊近くの本を読んだ」という膨大な情報からアウトプットされた“舟本編集”の貴重な教材です。異次元(金融)緩和・財政出動・成長戦略という「三つの矢」から始まる一連の流れを解説し、途中「国債の価値が下がると金利は上がる。これは今後の経済状況を読み解くうえで非常に気にかけておきたいところです」と、チェックポイントを押さえる名講師ぶりも発揮。さらに、「もしアベノミクスがうまくいかなかったら?」という場合の「アベノリスクシナリオ」にも踏み込み、「今後皆さんが経済ニュースを理解するときの参考になれば」と、物事の表裏を読み解く実例を示してくれました。

 

 

足音近づくニュー・ノースの時代

 

続いての「2025年を占うための観点」は「地球温暖化と気候変動」について。学生が聴講前に基本知識を予習しておく事前課題にもなっていた「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)の「AR4」(第4次評価報告書)中、舟本さんは特に脚注に記載されている「地球を激変させる8つのティッピングポイント」に注目。8つの内容「チャドの砂塵」「海洋大循環」「北極・南極の氷山氷床溶解」「モンスーンの突然の変化」「エルニーニョ・ラニーニャ」「メタンハイドレート」「アマゾン熱帯雨林減少」「海洋のCO2吸収」を順に紹介し、ここでも「メタンハイドレートはCO2の20倍の温室効果があり、海底に眠る有力な資源だという一面だけをとらえてはいけない」と、複眼的な視点の必要性を強調します。さらに膨大な参照文献の中から環境研究者のローレンス・C・スミスが執筆した『2050年の世界地図』を引用し、2050年までに大きく発展していくことが予測される北緯45度以北の地域が「ニュー・ノース」と位置づけられていることに着目します。「札幌は北緯43度、旭川は北緯45度。日本のなかでも北海道だけがニュー・ノース地域に隣接し、札幌と同緯度のロシア・ウラジオストクとも近いなど非常に有利な位置にいるといえます」。データが語りかけてくる明るい希望を学生たちと共有しました。

 

北海道の《風林水菜》で苦難を克服

 

きたる「ニュー・ノース」時代に向けて北海道が持つ優位性、資源とは何か。舟本さんはそれを「風林…火山と続けたいところですが、私の場合は水と菜、《風林水菜》」と名付け、自説をこう展開します。「道北の稚内エリアがポテンシャルとして持つ陸海からの風力発電、すなわち《風の力》と、森の国といわれるドイツの森林率40%をはるかに上回る《森林率70%》、地下に眠る《豊かできれいな水》、多種多彩な《農産物》。これから世界で最も欠乏するものがすべて北海道にはある」。この日初めて聞いた《風林水菜》の文字が学生たちの心に深く刻まれた瞬間でした。 “舟本流40年史観”の締めくくり、1985年の「プラザ合意」から始まる40 年間は世界的経済の混迷や世界規模の環境被害といったシビアな課題と向き合う時代になる、と指摘しつつも、舟本さんからのメッセージは「2025年は人類の叡智で苦難を克服。ここにいる皆さんの力でそれを実現してください」。その頃には30代を迎え、北海道、日本そして世界を担う学生たちに力強いエールを送りました。

 

[アフタートーク]

 

調べて正確に書く長文主義のすすめ

 

終わりに「今日ご紹介したのはあくまでも私の見方です。十人いれば十人違う見方がある。ですから、皆さんにも日頃から異なる見方の人たちと話し合う機会をたくさん作っていただきたい」と語りかけた舟本さん。講義後の控え室では、学生からの事前質問でも多かった月刊誌『財界さっぽろ』のお話をうかがいました。「確かに皆さんが指摘するように出版業界は今後ますます厳しくなると思います。業界の勝ち組に残るには、読者の知りたいことを書く。ためになることを書く。私が社長に就任してからは30代40代の記者を最前線に起用し、読者と同じ目線を大切にしています。そしてもうひとつは、正義を貫くこと。不正は叩き、頑張っていることは応援する。この真摯な姿勢を貫いていけばきっと読者はついてきてくれると信じています」。

 

 

学生へのアドバイスは「どんなIT時代になっても基本は“人から学ぶ”です。先輩、仲間、お客様、周囲の人たちからおおいに吸収してください。それから今はツイッターなどでさらりとその場の気持ちを書く短文主義が流行っているようですが、やはり私のおすすめは長文主義。不確かなことや間違っていることをそのままにしないで、きちんと調べてまとめて正確に書く。ぜひ身につけてほしい力です」。

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