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エバーグリーンからのお知らせ

2013.11.06

平成25年度第5回講義:「キリンビールの戦略-組織活性化とそのポイント-」(2013/11/6)

講義概要

・講 師:植木 宏 氏/昭和51年卒
・題 目:「キリンビールの戦略-組織活性化とそのポイント-」
・現 職:キリンビールマーケティング株式会社 代表取締役社長

・内 容:

弊社の組織活性化に向けた取組みについて、講義させていただきます。中でも特にリーダー育成や組織力強化にフォーカスした内容(※)をご紹介致します。※キリンビール、キリンビールマーケティング全社にて推進している、リーダー育成の取組み、組織力強化に向けた活動について、「コーチング」「現場力向上プログラム(ピットインミーティング)」を具体的な事例としてご紹介致します。

  • 講師紹介

昭和28年栃木県生まれ。昭和51年本学商学部卒業後、キリンビール株式会社入社。平成21年メルシャン株式会社代表取締役社長・CEOに就任。キリンマーチャンダイジング株式会社を経て平成24年グループ再編成による新会社キリンビールマーケティング株式会社代表取締役社長に就任。東京都在住。

 

仲間を思い、自分の中からエンジンをかける。

 

商大水泳部、吉田下宿、人生の友

 

キリンビールマーケティング株式会社の植木宏社長は元小樽商大の水泳部。講義のアイスブレイクに、と当時の思い出話から披露してくれました。「私の時代は部員が少なくて部を存続するのが大変でしたが、あのときに体験したことが社会に出てからも役立っています。水泳部の仲間や吉田下宿のメンバーとの交流は今でも続く大事な絆。皆さんには勉強同様、こうした人とのつながりも大切にしてほしいと思います」。

 

たくさんの絆の中で忘れられない友の話もありました。

 

「水泳部で下宿も一緒だった一年上の勝田さん。私がキリンビールの企業説明会のときに体調を崩してしまい、彼が“代返”してくれたんです。それでなんとか就職までつながりましたから私が今、社長をしているのも彼のおかげ。勝田さんも他社に内定が決まっていましたが、実は卒業を待たずに急病で亡くなってしまいました。今でも悔しいです。キリンに入って今日まで頑張ってこれたのも彼の存在があればこそ。そんな彼の思い出が詰まった小樽から私の社会人人生は始まり、今月末に還暦を迎えるこの節目に再び小樽を訪れる機会をいただけたのは、本当にありがたいことだと感謝しています」

 

縦から横、役職から役割の結束

 

平成24年に設立されたキリンビールマーケティング(以下、KBMに略)はキリンビールの営業を司る新会社です。2つの会社を1つにした結果、従業員は総勢約3500名の大所帯。「単なる統合ではなくて新たなる創業」という植木社長の言葉どおり、設立時には推敲に推敲を重ねた「創業方針書」でトップの意志を全従業員に発表しました。従来は縦割だった組織を「横の関係」で再編成し、役職ではなく「役割」でスタッフ間のビジョンを共有させるという、非常にチャレンジングな組織構成がメディアでも話題になりました。量販企業や料飲企業・店舗に営業するカスタマー・アドバイザー(CA)と、店頭を担うマーチャンダイザー(MD)やマーチャンダイジング・クルー(MC)。かつては別々に動いていた彼らの机を並べ「ユニット」で動くチーム体制を実現したのも、その一例。「企業の底力は人。一人一人が自分で考えて動く、自発的になれる環境を整えています」

 

 

甲子園で戦ったチームKIRIN

 

この日の本題はKBMの「組織力活性化」について。「とりあえずビール」の時代は終わり、酒類を含む総合飲料業界は毎年多種多彩な新商品が発売されています。消費者が買う場所やニーズ、タイミングも多様化し、市場は年々複雑化するばかり。「ただし」と植木社長は続けます。「企業戦略が複雑高度化しても組織で働くのは人ですから、複雑・高度のままでは動かない。リーダーを育て組織内のコミュニケーションを活発にする。その手法の一つとしてKBMでは《コーチング》を取り入れています」。ここで、NHKで取り上げられた7分間の番組を流し、社内コーチングの現場を学生たちに見てもらうことに。指示出しではなく「相手の考えを引き出す」ことで次の行動に促す実例を教室中が食い入るように見つめていました。番組中「コーチングの仕掛人」として紹介された女性社員はなんと小樽商大の卒業生!「彼女も入れてキリンには現在13名の先輩が活躍しています」。植木社長の言葉にも誇らしさがにじんでいました。このコーチングを導入し昨年「社長賞」を受賞したのは、甲子園のビール販売チームです。他社の牙城を切り崩せず絶体絶命だったところを、リーダーの「自分も意識を変えるから皆さんも」という覚悟とチームコーチングの力でじわじわと挽回。「販売スタッフは皆アルバイトです。それでも自発的に“打倒ライバル”の合言葉が出るようになり、7リットルの樽替えを3分で行うなど可能な限りの努力を重ねてくれました。最終的には一人当たりの売上げが他社を上回り、私も喜んで社長賞を贈りました」

 

目標確認のピットイン・ミーティング

 

「強い個を目指すとともに、(中略)関わりあい・支えあうチームで戦うスタイルを身につける」組織を掲げるKBMではコーチングのほかにも、入社5年目に始まる4つのステージで行う「リーダー育成プログラム」が充実。さらに、年初に立てた目標を四半期ごとに検証する「ピットイン・ミーティング」を全国の営業組織68拠点で実行し、ビジョンの実現を応援しています。「レースの途中で傷んだタイヤをメンテナンスするように我々ももう一度年初の目標を再確認する。そうしてまた勢いよくレースに飛び出していく、まさにピットインという言葉そのものなんです」。講義の終わり、冒頭に一瞬流れた画像が再び登場しました。「この寄せ書きの祝辞は、私がメルシャンの社長に就任したときに小樽商大出身の仲間がお祝いしてくれたものです。

 

 

祝辞の上にKIRINとメルシャンと小樽商大のロゴが3つ入っているのがわかりますか? 私どもは営業の会社ですから《人》の会社です。人が財産です。繰り返しになりますが、企業の底力は人間の力です。自分の、仲間の人間力こそが仕事をするうえでの大きな支えになります。現場はすごく面白いですよ。達成感もある。一喜一憂しながら前進する面白さを早く皆さんにも体験してほしいですね」

 

《少年期の素振り》はがむしゃらに

 

授業後、講師控え室は「もっと話をうかがいたい」と集まった学生たちでほぼ満員状態。来年新卒の内定が決まった4年生には「新人時代はとにかくがむしゃらに頑張って。22歳23歳で会社に入ってくる皆さんは、人間でいえば《少年期》です。野球なら素振り1000回から始まるところ。そのときに頭でっかちになるよりは、とにかく言われたことを誠実にがむしゃらに頑張ったほうがいい。それで身につくことは大きいです」。ゼミや部活、サークルでリーダーを務めている立場から助言が欲しい、という声には繰り返し「ビジョンを共有すること」の重要性を強調し、「特に仲間、横とのつながりを大事にしたほうが上から言われるよりもはるかに効果的」とアドバイス。チームメンバー同士の好き嫌いにはどう対処すれば?という鋭い質問には、この日講義のサポート役として同行した同社の松崎浩樹さんに「君ならどう答える?」とパスを出すのも植木流。松崎さんも「会社以外の場面では好き嫌いが先に見えることもあるかもしれませんが、やはり業務の中で目指す方向が同じならば大丈夫。ビジョンが大切です」と語り、一枚岩の回答で学生たちを励ました。

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