2013.12.04
平成25年度第9回講義:「 後悔しないキャリアの選び方」(2013/12/4)
講義概要
・講 師: 東野 里絵 氏/平成11年卒
・題 目:「後悔しないキャリアの選び方」
・現職等:株式会社 HBA自治体システム本部 課長代理
・内 容:
1.はじめに
・自己紹介 ・何故小樽商大に? ・何故HBAに?
2.私のキャリア(仕事人生)を振り返る
・20代を振り返る(腰かけOLから主任になるまで)
・30代を振り返る(主任から社会人学生を経て課長代理へ)
・SE(システムエンジニア)の現実
3.人生は思い通りにならない?
4.誰でも後悔しない人生を送れる
5.最後に
・これだけはやっておいてほしい3つのこと(勉強・若気の至り・海外旅行)
・これからの新社会人に期待されること(人間魅力・臨機応変力・コミュニケーション能力)
・自分にしかできないことがある
- 講師紹介
昭和51年札幌市生まれ。平成11年本学商学部社会情報学科卒業、株式会社HBAに新卒入社。SE勤務のかたわら1年間、北海学園大学経営学部企業経営コース(夜間)に通学、人的資源管理や組織心理学等を学ぶ。平成22年3月産業カウンセラーの資格を取得。4月同社で女性2人目の課長代理に昇進。札幌市在住。
思い通りにいかなくてもそれは間違いじゃない。
講師最年少、IT業界で貴重な女性管理職
この日教壇に上がった東野里絵さんは平成25年度のエバーグリーン講座中、最年少講師の37歳。本学を卒業後、新卒で北海道大手のIT会社、株式会社HBAに入社し、社歴15年目を迎える中堅クラス。学生にとってはリアルに想像しやすい上司世代にあたるのではないでしょうか。商大という文系大学からSEの道に進み、現在は自治体関連のシステムを手がけるプロジェクトメンバーの1人として活躍中。女性管理職はまだまだ少ないと言われているIT業界で現在、課長代理の役職に就いているキャリアは、社会人学生として1年間、大学の企業経営コースで学び、さらに民間のスクールに通って産業カウンセラーの資格を取得した“自分磨き”と無縁ではないようです。講義テーマは「後悔しないキャリアの選び方」。「この講座のお話がきたとき、私でいいのかと思いましたが」と少し緊張の色をにじませながら、「じゃあ、なんで小樽商大にきたのか、から話しますね」とフランクな口調で学生たちに語り始めました。
苦手な分野だからこそ強くなりたい
大学受験のときは得意な英語を磨いて外語大に進学し、通訳になることも考えていた“文系女子”の東野さんでしたが、その一方で当時ゆるやかに台頭してきたIT分野にも関心を持っていたと言います。「数学は苦手でしたが、これからはコンピュータが使えないと、という社会の空気が気になって。外語大に落ちた時点で、じゃあ、苦手だからこそそっちの分野に強くなりたい、就職も考えると北海道なら小樽商大だ、と思い、社会情報学科に入りました」。大学を選んだ時点でSE志望と決めていたため、就活もほぼIT業界一直線。「最終面接に残れたのがHBAだけだったのでそのままお世話になることに。なんか、皆さんが期待しているようなドラマチックな理由じゃないですよね、すみません」と恐縮しつつ、「文系でもSEになれるのか?」という問いには「大丈夫」と力強く言い放ちます。「理系の知識がなくても会社に入ってからがっつり勉強してプログラムの文法さえ分かれば誰でもできるようになります」。不安な学生たちをリアルな体験談で勇気づけました。
半人前からの脱却、社会人学生も経験
20代を振り返ると、「実は寿退社希望」ですぐに会社を辞めるつもりだった東野さん。ところが現実はそうは進まなかった、と打ち明けます。「周囲にも3年で結婚退社します、と言ってたくらいなので、上司だってそういう人間に大事な仕事を与えようとは思いませんよね。つまり入社3年経っても自分は会社にとって使えない存在。そこから一人前になるまでが大変でした。上司の客先に同行し、徹底したOJTで基本を学び直す。このとき私を見捨てないでとことんつきあってくださった上司には本当に感謝しています。古い言い回しかもしれませんが、若い頃の苦労は買ってでもしておいたほうがいい。ヘコたれない精神力が30代を支えてくれます」。入社5年目が過ぎると徐々に仕事を任されるようになり、7年目には主任に昇格。仕事に慣れ、会社や組織に思うことも増え始めた頃、東野さんは1枚の地下鉄中吊り広告に出会います。「北海学園大学の企業経営コースの募集広告を見て、経営と心理学の両方を学べるところに惹かれました」。入学後は夜6時50分からの授業を目がけて会社を定時で上がり、翌朝7時の早出で前日残った仕事を片付ける。そんなハードな毎日をなんとかやりきり、1年後には見事規定の単位を取得。新しい学びを身に付けました。
「自分を知る」産業カウンセラー
夜間大学で学んだ組織心理学から興味が広がり、産業カウンセラーの資格に挑戦したときも目が覚めるような学びがありました。「他人をカウンセリングする前に自分のことをわかっていないとカウンセリングはできないんですね。皆さんへの事前課題を《あなたという人間を知らない人に説明するために1枚のレポートにまとめてください》としたのも、自分を知ることの大切さを伝えたくて。私たちは思った以上に自分のことをわかっていない。自分を見つめてはじめて相手の話を聞くスタンスが生まれます」。34歳で課長代理になってからは年上の部下もでき、今は育成責任者として部下を育てる立場になりました。「社会人になってから2つの学校に行って本当によかった。ムダなことは何一つないということがわかりました」。皆が気になるIT業界事情については「人数構成的にもいまだ男性社会ですが、女性だからといって能力や働き方に差があるわけではありません」と回答。「仕事の忙しさ次第で残業が100時間近くになったことや、担当案件の突発的なトラブルで夜中に呼び出されたこともありますが、でもこれってIT業界に限ったことじゃないですよね。少なくとも私は体を壊したことはありませんし、お客様から“ありがとう”と感謝されたりもするやりがいを持てる業界です」
社会人では遅すぎる若気の至り
学生に向けた「これだけはやっておいてほしい3つのこと」は、「勉強」「若気の至り」「海外旅行」。なかでも「若気の至り」は恋愛を含めたくさんの人間関係を経験しておくことの重要性を強調しました。「若いから大目に見てもらえる無茶や失敗も社会に出たらそうはいきません。私自身、商大のバレーボールサークルでの経験が今の土台になっています。皆さんもいろんな経験を積んでおいてください」。寿退社だったはずの道のりが今では中間管理職に。「人生、思い通りにいってないなと思うこともありますが、でも後悔はまったくありません。自分の意志次第で人生は“よかった”と思えるキャリアになるんですね。今後は“自分にしかできないこと”を探りながら人の役に立てたら、と思い、今日も役不足とわかりつつこの場に立たせていただきました。人生、悪いようにはなりません。思い通りにいかないことがあっても間違ったわけではないので気にやまないで。顔を上げて次の道に進んでいってくださいね」