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エバーグリーンからのお知らせ

2015.02.04

平成26年度 第13回講義:「SONYは復活できるか?」

講義概要

○講 師:岩見 真彦 氏(平成元年卒)
○現職等:株式会社みずほ銀行(本学ビジネススクール在籍中)
○題 目:SONYは復活できるか?

○内 容:
ソニー株式会社は、2014年3月期の決算で最終赤字を計上し、無配当に転落した。わが国を代表するデジタル家電メーカーである当社の衰退は、それ自体が憂慮すべきことであるとともに、日本のエレクトロニクス産業全体の問題を示すものである。

ソニー株式会社は復活できるか?とくに同社のコアを成すエレクトロニクス部門は黒字を回復することができるのであろうか?

まず、同社の事業と収益構造を把握することで、同社に起きている財務上の問題を認識する。ついで当社の歴史や当社に関する著書を参考にして当社の問題点を把握する。これらをもとにして、SONY復活の可能性を論ずる。

最後に、わが国の製造業が新興国との競争で劣勢に立っていること、そんななかでも競争優位を保持している企業とその運営について、OBSでの学びをみなさんと共有したい。

  • 講師紹介

平成元年に経済学科卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行。東京の各支店勤務の後、現在は、みずほ銀行札幌支店にて勤務。平成25年に小樽商大ビジネススクールに入学。今年3月に修了予定。

 

SONYのアウトラインから

 

SONYは、売上高が7兆8千億円、連結の従業員数15万人の大きな会社です。大きく分けると、エレクトロニクス、エンターテイメント、金融の3つの分野があります。一番大きな売上を上げているのはエレクトロニクス分野ですが、そのうちスマートフォンとテレビは赤字部門であり、エレクトロニクスの損益をエンターテイメントと金融で補っている状況と言えるでしょう。

世界最大の格付会社であるスタンダードアンドプアーズの格付けでは、「BBB-」(トリプルビーマイナス)であり、一歩間違えると投資適格会社ではなくなります。時価総額は2兆8千億円と大きいものの、世界企業のアップルと比べると約30分の1くらいであるというのがSONYのアウトラインです。また、2015年3月には、1,800億円の赤字を計上予定ですが、これは、上場企業でありながら3月期に配当がなくなるという状態であり、当初予算の赤字を加えると約2,300億円の赤字になります。

 

OBSのケーススタディとして~SONYは復活できるのか

 

実は、SONYの売り上げは10年前からほとんど変わっておらず、売り上げの下落が損益赤字の原因になっているわけではありません。営業利益は何度か下落しており、純資産額も凋落傾向ではあるものの、なんとか持ちこたえています。会社が危機になる際、キャッシュの支払い能力が問題になることが多いなか、SONYの場合それはさほど問題ではありません。

ただ、自己資本比率は着実に落ちてきています。組織分析をすると、高コスト体質が定着していること、事業間のシナジー効果(ある事業の存在が他の事業に良い影響を及ぼすこと)がないこと、スマートフォンやテレビなどで台湾、韓国、中国のメーカーと同じ土俵で戦ってしまい敗北していることがわかります。特にSONYの中で最優・最強と言われているのがデバイス分野であり、スマートフォンに使われる半導体パーツである「イメージングセンサー」は世界の約4割のシェアを占める強い分野を持っているのに、SONYのスマートフォンは黒字を出せていません。

 

組織分析をしたうえでの戦略代替案

 

組織分析にあたり、「バリューチェーン」という分析手法を使ってみました。「開発・製造」「マーケティング・物流」「販売・サービス」の各分野での強みと弱みを分けて見ていき、最後に横断的に見ることで会社全体の強みと弱みを見ていこうというものです。(表を見ながら)ブランド力は強いものの、非常に強いライバルもいます。かつては、トランジスタラジオやウォークマンなどSONYの製品の優位性は圧倒的でしたが今はそこまでの優位性はありません。「5force」という分析では、競合間の競争、買い手・売り手の交渉力、新規参入の脅威、代替品の脅威、というカテゴリーで見てみました。

ここで、私の考えたSONYの戦略代替案を提示させていただきます。1.アップルやサムソンを買収する。これは、エレクトロニクスで強い分野を持っている企業を買収する、ということです。2.部品供給を実施する。SONYは、ほぼ最終製品しか作っていないという会社です。社名が製品に載るというのは非常に華々しいものであり、社員にとっても誇りであり、儲けも高いです。ただ、デバイスに最優・最強のプロダクツをもっているのだから、自社の製品に使うだけではなく、他の会社に売りましょうということです。3.高付加価値製品に特化する。4K、8Kといったテレビは高い値段で売れる高付加価値製品であり、自社の中に画像と音響の両方の得意分野を持っているSONYの強みが発揮できます。スマートフォンについても、小さかったり薄かったりという特殊な高付加価値路線に特化する道が考えられます。

 

導きだされた実行推奨案~SONYは復活できる

 

以上の代替案のうち、実行推奨案は「2」です。エレクトロニクス分野の中のデバイスに、SONYにおける最強の経営資源が集中しています。しかし現在は、スマートフォンにデバイスの成果を供給しているにも関わらず、スマートフォンの収益状況は大変不調です。これを受けて、自社の最終製品に組み込むだけではなく、最終製品企業であることのプライドを捨てて、「他社にも部品供給を行いましょう」ということです。価格交渉が優位にできたり、生産を拡大できる可能性もあります。これらのことによって、「SONYは復活はできる」と私は考えています。

 

オープン&クローズ戦略が鍵

 

最後に、日本の製造業の退潮の原因は何かということをお話しします。

台湾、中国、韓国などキャッチアップ型工業国の存在は、日本の製造業の脅威であることは間違いありません。しかし、日本の製造業は、世界最多級のパテント(特許)を持っています。日本の技術関係の特許出願数は、アメリカと並ぶかそれ以上だそうです。ただ、パテントを勝手に、違法に模倣されているという事情もあります。つまり、日本の特許を使って出来上がった部品でスマートフォンやエアコンを作っても、製造工程のコストで日本の製造業は負けてしまうという構造によって、日本の製造業の勢いは弱くなっているのです。

しかし、なかには勝っている企業もあります。大阪に、商大卒の社長さんがいるダイキン工業という会社があり、ダイキンの「インバーターエアコン」は中国で技術を公開し、中国で製造しているのに製品は模倣されていません。それは、オープンにする部分とクローズにする部分をしっかりと分けていて、完璧に模倣することができないからです。分解して中身を把握しようと開けてしまうと、壊れてしまう仕組みになっているそうで、このように日本の製造業は、オープン&クローズ戦略が必要でしょう。

 

 

講義後半~商大からみずほ銀行へ

 

商大での授業は、特にマクロ経済学が楽しかったので、企業法学科から経済学科に変えました。就職の時に、銀行を受けようと思ったら「3浪の壁」に阻まれて道内の銀行には進めず、縁があって第一勧業銀行(現:みずほ銀行)に入行することができました。銀行を志望したのは、マクロ経済学を学んでいるうちに、企業融資に興味が湧いたからです。札幌、新宿、上野と転勤し、今は札幌支店で個人営業課長を務め、住宅ローンや投資信託を販売しています。みずほ銀行に関して言えば、商大を卒業して役員まで昇進することは十分可能です。商大のOBたちはとても頑張っていますし、商大は世間の評価が高いと感じます。

 

OBSへの入学について

 

受講者からの事前アンケートで、「なぜOBSに入ったのですか?」という質問をたくさん受けました。札幌支店へ転勤となり、20年ぶりに札幌に帰ってくることになったので、会社を経営する高校の同級生のところに当行と取引してくれるように足を運んだところ、彼がOBSの3期生でした。彼に薦められて、OBSにに入ることを決めました。OBSでは、分析フレームワークの習得はもちろん、アントレプレナーシップについての考察はとっても役に立ちましたし、文章力を一から鍛え直すこともできました。有形無形の財産をOBSで得られ、銀行の仕事にも非常に役に立っています。

 

紹介したい2人の人物

 

経営コンサルタントの勝間和代さんと、スティーブ・ジョブズ氏の話をします。

勝間さんは著書も多く、慶応義塾大学の2年時にCPA(公認会計士試験)に合格し、マッキンゼーアンドカンパニーに進み、メディアに登場する機会が多い人物です。「CPAの試験は短期決戦でいけると思い、短期決戦で合格した」と著書に書いており、慶応義塾大学は先輩後輩のつながりが強いので、きっとOBの先輩から情報収集し、スムーズにCPAに合格したのだと感じました。マッキンゼーでの過ごし方についても、実に上手に情報収集をしていますので、みなさんも彼女の情報収集力について、学んで欲しいと思います。

スティーブ・ジョブズ氏については、アップル社の元CEOとして知っている方も多いでしょう。みなさんの中には、「これを目指したい」、「これは自分に適した仕事だ」と考えている人も多いでしょう。スティーブ・ジョブズ氏のようにアップルを成功させることができればいいのですが、皆さんがやりたい仕事に進む前に、まず情報収集をすることが大事だということを伝えたいです。

小樽商大の先輩も、後輩をよく可愛がってくれます。先生を通じて情報収集することもいいと思いますが、実際の企業についてや資格を取るためにどんな勉強をするか、そのためにどこを選ぶのがいいかなどについては、まず先輩に聞くことをお勧めします。銀行業界についても、各メガバンクに商大のOBがたくさんいます。皆さんにはこれからの商大生活を充実させるとともに、卒業されてからも世の中に貢献し、自分の人生の充実をはかっていただきたいと思います。

 

 

質問抜粋

 

【3年生男子】

 

Q. 銀行で担当されている企業融資業務のやりがいは何ですか?

 

A. 非常に難度の高い融資案件を持ち掛けられ、それを成立させたことで、お客様がその事業の実施に踏ん切ることができた時はとても嬉しく、やりがいを感じました。逆に、担保もなく、若干赤字だった零細企業に対して資金繰りの融資ができ、社長さんに感謝された時も嬉しかったです。銀行は、担当者がいかに行動するかによって、スピードや案件の仕上がり、金利などが決まってくるので、スピードと的確な対応で先方の企業に評価され、感謝されることはやりがいにつながります。

 

【担当教員より】

 

Q. 銀行員として大事にしていることはありますか?

 

A. この業界の人間は、知識だけではなく、人間としての礼儀作法を大事にしていると思います。また、つつましやかな生活も大事だと思います。生活を乱したり、華美な生活をすると、まともな仕事ができなくなると思うからです。節度ある行動が大事です。

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