平成18年9月15日制定
平成28年4月1日改正
1.目的
小樽商科大学は,『国立大学法人小樽商科大学憲章』に掲げているように,建学以来築いてきた自由な学風と実学重視の精神を継承し,さらにこれを発展させて,複雑高度化した現代社会の多元的な問題解決への貢献と人類普遍の真理探究を使命とする教育研究機関として,一層の充実を目指している。
また,社会が提起する課題に対して,具体的かつ実践的な処方箋を提供するという方針のもとに,研究成果を地域社会の活性化に還元し,社会貢献に活かすために,産学官連携活動を積極的かつ持続的に推進することとしている。
しかし,産学官連携活動を進める上では,大学や職員が特定の企業等から正当な利益を得る,又は特定の企業等に対し必要な範囲での責務を負うことは当然に想定され,また妥当なことである。一方,このような大学と企業等の性格の相違から,職員が企業等との関係で有する利益や責務が大学における責任と衝突する状況,いわゆる「利益相反」といわれる状況も生じうる。また,職員の学外での産学官連携活動によって,本来の責務であるはずの学生への対応が不十分になるなど,大学の職員としての責務が果たせなくなる事態が生じる状況,いわゆる「責務相反」という状況も生じうる。
これらの事態に対し適切な対応をしなければ,場合によっては,大学のインテグリティ(社会的信頼)を害し,結果としては産学官連携活動のみならず,大学の教育・研究活動をも阻害する恐れがある。本学のインテグリティを損なわないためには,不可避的に生じうる利益相反や責務相反に対する適切な対応が不可欠である。
小樽商科大学利益相反マネジメントポリシーは,本学が産学官連携活動を通じて社会貢献という使命を果たしていくために,利益相反や責務相反による弊害を抑え,大学と職員が公正かつ効率的に業務を遂行するための基本的な姿勢と利益相反のマネジメント方法を示すものであり,広く学内外に明示するものである。
2.定義
利益相反という概念については,以下のように整理する。
(a)広義の利益相反:
狭義の利益相反と責務相反の双方を含む概念である。
(b)狭義の利益相反:
職員又は大学が産学官連携活動に伴って得る利益(実施料収入,兼業報酬,未公開株式取得等)と,教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状況をいう。
(c)責務相反:
職員が主に兼業活動により企業等に職務遂行責任を負っていて,大学における職務遂行の責任と企業等に対する職務責任が両立しえない状態をいう。
(d)個人としての利益相反:
狭義の利益相反のうち,職員個人が得る利益と職員個人の大学における責任が相反する状況をいう。
(e)大学(組織)としての利益相反:
狭義の利益相反のうち,大学組織が得る利益と大学組織の社会的責任が相反する状況をいう。
3.利益相反マネジメントの基本的な考え方
(1) 「国立大学法人小樽商科大学産学官連携ポリシー」において明示しているように,産学官連携活動を大学の知の成果を社会へ還元するための重要な活動と位置付け,本学の責務の一つとしている。
(2) 本学が産学官連携活動を推進するにあたっては,高い透明性と公平性と中立性をもって取組み,十分な説明責任を果たす。
(3) 優れた教育と研究が大学の基本的使命であり,職員が産学官連携活動を優先させることによって,学生に対する教育面での支障が生じないよう,本学は最大限の配慮を払う。
(4) 本学が,利益相反への対応策を講ずることは,大学の本来の使命たる教育・研究に対する責務が全うされていることを担保し,大学のインテグリティを維持・確保するとともに,産学官連携の推進を図るために必要不可欠である。
(5) 本学は,産学官連携活動に関わる職員個人の責任と利益を大学が適切に分担することによって,職員が安心して産学連携に取り組めるように,利益相反マネジメントに対する適切な学内ルール及びシステムを整備する。
4.利益相反マネジメントの対象者・対象事象及び判断基準
(1)対象者
本利益相反マネジメントの対象者は,以下のとおりとする。
ア 本学の役員(非常勤を除く)
イ 本学の職員
ウ 本学において研究等を行うことを目的に,受入を許可された者
(2)対象事象
1. 「国立大学法人小樽商科大学に勤務する職員の兼業に関する規程」により許可を得て行う兼業活動
(同規程第4章第3節の「国等の行政機関の兼業」を除く。)の場合
2. 職務に関連し,報酬,株式保有等の経済的利益を有する場合
3. 職員が自らの知的財産権を本学以外の企業,大学等に承継,使用許可する場合
4. 共同研究や受託研究に参加する場合
5. 外部からの寄附金,設備・物品等の供与を受ける場合
6. 1~5の相手方等何らかの便益を供与される者に対して,施設,設備の利用を提供する場合
7. 1~5の相手方等何らかの便益を供与される者から物品を購入する場合
8. その他研究活動に関し,外部から明白と思われる何らかの便益を供与されたり,供与が想定される場合
(3)判断基準
1. 本学の職務に対して職員の個人的な利益を優先させていると判断される場合(狭義の利益相反)
2. 個人的な利益があるなしに係わらず,本学以外の外部活動を優先させていると判断される場合(責務相反)
3. 職員が本学の職務よりも本学以外の外部活動を優先させることによって,学生に対する教育面での支障が生じていると判断される場合
5.利益相反マネジメントの体制
(1)利益相反マネジメント委員会の設置
1. 本学の利益相反マネジメントに関する重要事項を審議する機関として利益相反マネジメント委員会(以下,「委員会」という。)を置く。
2. 委員会は,委員長及び委員により構成される。
3. 委員長は理事(総務担当副学長)とし,学長が任命する。
4. 委員は学科長及び学科主任,言語センター長,アントレプレナーシップ専攻長,グローカル戦略推進センター産学官連携推進部門長,事務局長とし,学長が任命する。
5. 委員会は,利益相反マネジメントポリシーの制定及び改廃,利益相反防止に関する施策の方針,利益相反に関する自己申告及びモニタリングの審査,その他利益相反に関する重要な事項を審議する。
6. 職員は,委員会の決定に不服がある場合は,学長への異議申立を行うことができるものとする。学長は必要により利益相反マネジメント委員会に再度の審議をさせ,その意見又は学外の有識者等の意見等を参考に学長が最終決定を行う。この場合,職員はこの決定に従わなければならない。
7. 委員長は委員会を原則として年1回開催する他,必要に応じて開催する。
8. 委員会の事務局は,学術情報課に置く。
(2)利益相反カウンセラーの設置
1. 職員等の利益相反問題に対する適切なカウンセリングを行うために,利益相反カウンセラー(以下,「カウンセラー」という。)を設置する。
2. カウンセラーは,利益相反マネジメント委員会の委員長が指名し,学長が任命する。
3. カウンセラーは,職員等のカウンセリングを行うとともに,カウンセリングの内容に応じて,利益相反マネジメント委員会,利益相反外部アドバイザー等と連携し対応するものとする。
(3)利益相反外部アドバイザーの設置
1. 利益相反マネジメント委員会は,利益相反に関する専門的見地からアドバイスを得るために,弁護士,弁理士,公認会計士,税理士その他の学外の専門家からなる利益相反外部アドバイザー(以下,「アドバイザー」という。)を,必要に応じて設置することができる。
2. アドバイザーは,利益相反マネジメント委員会の委員長が指名し,学長が任命する。
6.利益相反マネジメントの手続き
(1)利益相反に関する自己申告書(以下「自己申告書」という。)の提出
職員等は,上記4.(2)に該当する場合には,利益相反マネジメント委員会に事務局を通じて別途定める様式の自己申告書を年1回提出しなければならない。
(2)職員等の自己申告及びモニタリングの実施
事務局は,職員等からの自己申告の取り纏め及び評価案の作成を行い,年1回利益相反マネジメント委員会に報告する。なお,事務局は,利益相反マネジメント委員会の指示の下,必要に応じて職員等へのモニタリングを行い,適宜利益相反マネジメント委員会に報告するものとする。
(3)職員等への利益相反状況の審査結果の報告
利益相反マネジメント委員会は,職員等の利益相反のリスク等に関する審査結果を事務局を通じて当該職員等に通知するものとする。
(4)利益相反カウンセラーの活用
職員等は,自己申告書の提出時又はその他随時,利益相反カウンセラーのカウンセリングを受けることができる。
(5)プライバシーの保護
利益相反マネジメント委員会は,職員等のプライバシー保護の観点から,報酬,資産等に関する自己申告内容及び審査結果の公表については,「国立大学法人小樽商科大学における法人文書の公開に関する規程」,「国立大学法人小樽商科大学情報公開取扱要項」,「国立大学法人小樽商科大学における個人情報の開示等に関する規程」,「国立大学法人小樽商科大学個人情報開示等取扱要項」等に従い取り扱うものとする。
(6)研修の実施
利益相反マネジメント委員会は,新任職員研修をはじめとする各種研修会等の場において,利益相反問題に関する適切な対処に必要な研修を行うものとする。
7.利益相反マネジメントポリシーの見直し
国内外の経済情勢の変動や地域社会の変化,社会通念の変化,法令の改正,小樽商科大学各種規則・ポリシーの改正,利益相反事例の蓄積状況や利益相反外部アドバイザーの指摘等に適切に対応するために,本利益相反マネジメントポリシーの見直しを適宜実施するものとする。
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