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教員インタビュー 須田珠生准教授

  • <担当科目>
  • 教育原理
  • 教育制度
  • 教職論
  • 道徳教育
  • 「総合的な学習の時間」指導法
  • 基礎ゼミナール

須田 珠生 准教授
SUDA Tamami


学校生活のなかでの「あたりまえ」を問い直す

 「校歌」の歴史について、研究をしています。

 今ではどの学校でも当たり前のように「校歌」が制定されていますが、実は、明治期から現在まで、「校歌」を制定することを定めた法令は一度も出されたことがありません。つまり、「校歌」は学校で制定しても、しなくてもよい歌なのです。学校という場は、国家によって定められた法規に基づいて、様々なことが詳細に決められています。しかしその一方で、制服や校旗、部活動のように、存在が義務づけられていないにもかかわらず、慣行的に学校に存在してきた「もの」や「活動」があります。

 制定しなくても何ら問題がない「校歌」が、なぜ、これほどまでに日本の学校に受容され、存在し続けてきたのか。このことをテーマに、右往左往しながら、研究をしています。

校歌を主題に、学校の日常に現れる教育の内実をとらえる

 ちょうど大学の学部生の時でした。実家がある旭川市に帰省した折、旭川市中央図書館を訪れたことがあります。図書館の2階にある資料室で、市内の学校の学校記念誌を読んでいたところ、かつて旭川市内にあった北海道庁立旭川高等女学校(現北海道旭川西高校)の学校記念誌のなかに、「校歌」が制定され、その「校歌」を皆でうたえて嬉しかったという記述を見つけました。

 このことが、私が「校歌」について研究をしようと思った最初のきっかけとなっています。当時の私にとって、「校歌」は、どこか教訓めいた、重々しい歌という印象が強くありました。ですので「校歌」をうたうことに「嬉しい」という感情を抱く人がいることが大きな衝撃であり、またいささか妙な気分がしたのです。ただその一方で、当時の女学生らをこんなにも魅了した「校歌」という歌について、もう少し詳しく知りたいという思いも湧き上がってきました。

 それ以来、全国各地に散在した「校歌」の史料を集め、それらをつなぎ合わせながら、歴史像を構築していく作業をしています。「校歌」に関する史料は、残存状況が非常に悪く、「校歌」を制定した学校にも、関係史料が残されていないことがたびたびあります。思うように史料に出会えないこともありますが、学校の校長室の金庫や博物館の倉庫などにひっそりと置かれていた「校歌」の史料に出会えたときは感慨深いものがあります。

『学校必用唱歌集 全』1896年(国立国会図書館デジタルコレクション)

人や地域との縁を大切にしながら

『学校必用唱歌集 全』より「校歌」(国立国会図書館デジタルコレクション)

 「校歌」研究をするようになってから、全国の学校や公共図書館、博物館、資料館などさまざまなところに足を運ぶようになりました。戦前に「校歌」を制定した学校の史料をみると、知人を通じて作詞・作曲をしてくれる人を懸命に探したり、少しでも自校の「校歌」の威信と権威を高めようと有名な作詞家・作曲家を探したり、あるいは、校長が作曲家に宛てた手紙で「私の薄給のなかから作曲料を工面するので少し金額を負けてもらえないか」と丁重にお願いしたり・・・当時を生きた人々の「校歌」に対する思いが感じられ、その時代の学校の空気感に触れることができます。これまでに各地で閲覧させていただいた膨大な史資料から得たものは計り知れません。

 また、全国の方からご自身が通われた学校の「校歌」について、お手紙をいただく機会も増えました。私一人で全ての学校の「校歌」を網羅することは、なかなか叶いませんので、ご縁に感謝しながら日々、研究をしています。

未来の好循環をつくりだす歯車に

 本学では、「校歌」の研究をしながら、主に教職課程の科目を担当しています。

 小樽商科大学では、「社会」と「英語」の中学校教諭一種免許状、「公民」、「英語」、「商業」、「情報」の高等学校教諭一種免許状を取得することができます。学年によって差がありますが、各学年10名から20名程度の学生が教員免許状の取得を目指して、取り組んでいます。アットホームな雰囲気を保ちつつ、少人数という利点を活かして、これまで自分が受けてきた教育を標準としてとらえるのではなく、自分自身の経験から得た教育観を相対化し、批判的に、時には肯定的に吟味しながら、皆で議論するスタイルで授業をしています。

 将来、教員となる学生の皆さんが、また、新たな社会の未来を担う若者の成長を手助けする、そうした好循環をつくりだすひとつの歯車になれたらと思っています。

「北に一星あり 小なれどその輝光強し」の精神で

 人から評価を得ることは生きていくうえで大切なことですが、たとえ思うような評価が得られなかったり、ちょっと変わった人だと思われたりしても、自分のしたいこと、やりたいことをするのが、自分の人生をちょっとだけ豊かにするコツなのではないかと最近考えるようになりました。

 「北に一星あり 小なれどその輝光強し」とうたわれる小樽商科大学には、さまざまなことに挑戦し、自分の可能性を広げながら「我が道を行く」ことができる環境が備わっています。入学後の皆さんと一緒に、先入観にとらわれない豊かな知を開拓していけることを楽しみにしています。


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