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教員インタビュー 於保淳准教授

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於保 淳准教授
OHO Atsushi


理論言語学が目指すのは、母語に関する知識の解明

「ニセすし職人」がいる店と「ニセずし職人」のいる店、どちらに行きたいですか?
「ニセすし職人」は「すし職人が偽物」。「ニセずし職人」は「偽物のすし」を作る「職人」。うーん、どちらの店にも行きたくないですね。日本語の母語話者は、教えてもらったことがないのに、「ニセすし職人」と「ニセずし職人」は意味が違うことを瞬時に理解します。どうして教えられてもいないことを知っているのでしょうか。

どの言語の母語話者も、母語に関する知識を無意識に駆使して言葉を使っています。しかし、自分がどのような知識を持っているのかを知りません。理論言語学は、母語話者が無意識に使っている「母語に関する知識」を、理論的なモデルを作りながら科学的に解明し、なぜ人間は言語(母語)を話せるのかという問いに答える学問です。

私の専門は理論言語学の中でも、文や句の意味を研究する形式意味論・語用論です。この分野では、集合論や関数といった数学の道具を用いて、意味の構造を分析します。最近は、量を表す表現である量化子が含まれる「すべての猫」や「猫3匹」のような名詞表現について研究を進めています。量を表す表現は日常的に使われるものですが、形式意味論の観点からみてみると、まだ解明されていない部分が多く、非常に興味深い研究対象です。

身近な言葉から迫る、人間の本質

私が理論言語学に魅了されたのは、大学で初めて理論言語学の授業を受けたときです。教えられていないにもかかわらず、母語について驚くほど詳細な知識を持っていることに衝撃を受けました。例えば、「ナオキが彼を褒めた」という文では「彼」は「ナオキ」を指せませんが、「ナオキが彼の妹を褒めた」だと「彼」は「ナオキ」を指せることを瞬時に理解します。この言語の奥深さとの出会いが、私の研究の原点です。

物理学が目に見えない自然法則を数式で表現するように、理論言語学も言語現象を自然現象と捉え、その背後にある見えない規則を理論的モデルで解明します。この自然科学的アプローチも、この分野の大きな魅力です。

理論言語学では、言語データを収集・分析し、仮説を立て、それを別のデータで検証する科学的手続きを通じて、母語話者の言語知識を研究します。言語データは日常的な会話の中にも見つかります。身近な素材から研究をスタートできる点が、私の性格に合っていたのだと思います。

研究を進める中で、母語話者の知識に潜む美しく整った仕組みを垣間見ることがあります。身近な言語現象を通じて人間の本質に迫る可能性が、理論言語学の醍醐味です。

言語は多様で同等

基礎科学である理論言語学を学ぶことが、地域や社会、さらには世界が直面する困難な問題を直接的に解決する力になるわけではありません。しかし、この学びを通じて、私たちは無意識に抱いているかもしれない言語や方言への偏見に気づくことができるかもしれません。

理論言語学では、世界中の多様な言語や方言を研究してきました。その研究から明らかになったことの1つは、表面的には異なるように見える言語や方言であっても、その根底には共通する仕組みがあるということです。さらに、その表面的な違いも、実はランダムではなく、規則的に生まれていることがわかっています。どの言語や方言も、システマティックで美しい法則を持っているのです。理論言語学の視点から見ると、言語や方言に優劣はなく、すべては等しく価値あるものです。

このような理解は、私たちが多様な文化や言語に対して持つ意識を変える助けとなり、地域社会における多文化共生の推進や、言語的マイノリティに対する理解を深める一助となると思います。

理論言語学と商大生の真剣勝負

私が担当する英語学(英語言語学)の授業は理論言語学を中心としています。多くの学生は、英語に興味があるか、英語の教員免許取得を目指してこの授業を受講します。しかし、授業を取るまで、理論言語学がどんな学問かを知らない学生がほとんどです。また、理論言語学の授業は内容が難しく、授業を聞いただけですべてを理解するのは簡単ではありません。

それでも、商大の学生は非常に真面目で、授業後にしっかり復習を行い、わからないことがあれば積極的に質問してくれます。コツコツと地道に取り組む姿勢が彼らの大きな特徴です。学生たちが授業に真剣に取り組んでくれるおかげで、私も全力で授業に臨むことができ、非常に充実感を感じています。また、授業中に目を輝かせて学んでいる学生の姿を見ると、私自身も大きな喜びを感じます。

自分の可能性を広げる学びの場

小樽商大は社会科学系の単科大学ですが、実際には社会科学系にとどまらず、さまざまな分野の学びに触れることができる大学です。学生が主体的に行動すれば、それに柔軟に対応してくれる、そんな自由な環境が整っています。

私自身、大学時代に偶然理論言語学に出会い、そこから興味を持つようになりました。このように、あなたもこれまで全く知らなかった学問に出会い、予想もしなかった興味を抱くかもしれません。小樽商大では、入学時に専門を決める必要がないため、自分のペースでじっくりと学びながら興味を広げていくことができます。

もし「やりたいことがぼんやりしている」「まだ見つからない」といった悩みを抱えているのであれば、一緒に小樽商大で学び、学びの過程で自分のやりたいことを見つけてみませんか。あなたの可能性を広げる絶好の環境が、ここにはあります。


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