- <担当授業>
- 学部:財務管理論
- 大学院(アントレプレナーシップ専攻):ファイナンスⅠ、ファイナンスⅡ(企業価値経営)
手島 直樹教授
Tejima Naoki
ダメな会社がアクティビストを引き寄せる
私はアクティビストというかなり特殊な投資スタイルを実践する株主に関する研究をしています。アクティビストは企業の弱点を突き、経営者に対してさまざまな要求を行うため、株主という極めて重要なステークホルダーでありながら、企業は徹底抗戦をする傾向があります。
ただし、ターゲットとなる企業は株価低迷など弱点を多く抱えるため、自らの正当性を訴えることは困難です。
そこで、財務アドバイザーやリーガルアドバイザーを雇い、多額なフィーを支払って追い払おうとします。アクティビストによる株主提案に対する取締役会の反論ほど面白い読み物はありません。自社のパフォーマンスは棚に上げて、よくここまで株主を批判できるものだと感心します。
嫌われ者のアクティビストが正しいことが多い
私の専門はコーポレート・ファイナンスという分野ですが、この分野でケーススタディを行うと、ほぼ必ずと言っていいほど、アクティビストのターゲット企業が好例となります。これは、アクティビストの企業に対する提案が、コーポレート・ファイナンス理論に基づく合理的なものだからです。
例えば、使いもしない資金を念のために積み上げる経営者が日本には多いのですが、アクティビストはそうした企業をターゲットとすることが少なくありません。不要な資金は株主に還元する方が、資本効率性も改善しますが、提案がどれだけ合理的であったとしても、多くの経営者はアクティビストのものであれば、エゴもあり徹底抵抗します。そして、最終的にアクティビストの意見を取り入れると、株価が上昇するという結果になることが多いのです。
上場企業の無駄な資金は、まわりまわって地域・社会に還元される
アクティビストの行動が地域・社会に直接的につながっているとは考えにくいですが、アクティビストの要求を聞き入れ、不要な資金を抱える企業が株主還元を通じて資金を手放せば、その資金を得た株主が有効に活用すると考えられます。
ベンチャー企業に投資することはその一例です。その企業が成功すれば、雇用が増えたり、税収が増えたりと地域・社会にプラスの効果をもたらすのです。
このように資金を循環させることにより、眠っていた資金が有効活用されるのです。
また、アクティビストの中には、投資で稼いだ莫大な資金でフィランソロピー活動を積極的に行う人たちも少なくありません。企業経営者には嫌われますが、地域・社会には必要とされているのです。このように、アクティビストには「花咲じいさん」のような側面もあります。
ファイナンスのセンスのある学生が多い
ファイナンスは、数学や統計学といった計算をベースにする分野ですが、商大生は計算が得意な学生が多いので、ファイナンスのセンスがある学生が多いです。
外資系投資銀行や資産運用会社などにもっと多くの学生が進んでも良いのではないかと思います。給料も良いし、成長のスピードも加速させられます。
「田舎の三年、江戸の昼寝」と言われますが、こうした企業でキャリアを積めば、地域格差を一気に挽回できます。
コーポレート・ファイナンスは都会の学問である
私が北海道に引っ越して10年ほどが経過しましたが、北海道の企業からコーポレート・ファイナンスに関する相談を受けたことは一度もありません。相談があるのは、ほとんどが東京の企業です。
これは、地方には上場企業が少なく、コーポレート・ファイナンスの理論など誰も知らないため、実践する機会すらないことが原因です。地方では、地銀からお金を借りて、無事に返すことがコーポレート・ファイナンスなのです。
一方で、東京の一流上場企業においては、コーポレート・ファイナンスは経営の中心に位置づけられています。
東京の一流上場企業に入社し、ビジネスパーソンとしてのスキルを素早く高めたい向上心のある学生には、コーポレート・ファイナンスは強力な「武器」となるのです。
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