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エバーグリーンからのお知らせ

2014.12.10

平成26年度 第9回講義:「女性の生き方は自由自在」

 

講義概要

 

・講 師: 加藤 ひろみ 氏(昭和55年卒)

・現職等:税理士法人アグス 社員税理士

・題 目:「女性の生き方は自由自在」
・内 容:

1.私のゆっくり遅咲き人生

・ごく普通の講師がたまにいても良いのでは?私のスロウ人生についてご紹介

・大学入学から卒業まで

・結婚子育て

・初志貫徹税理士へ

・税理士事務所開業、そして税理士法人へ(現在の仕事)

2.女性の生き方は自由自在~友人・女性経営者を通して~

・いろいろな選択肢が存在している

・少子高齢化社会

・働く女性は超多忙

・社会全体でサポート(女性だけの問題ではない)

・それでも仕事も子育ても何でも欲張って生きてほしい

  • 講師紹介

札幌北高校卒業。昭和55年に本学商学部卒業後、税理士事務所に入社。結婚・出産・育児を経て仕事を再開し、一般企業の経理や保険会社の財務の仕事などを行う。平成17年に税理士登録し、加藤ひろみ税理士事務所を開業。翌年の平成18年に税理士法人アグスの社員税理士となり、現在に至る。

 

大学時代に、税理士を目指すことに

 

いまの小樽商大は女子学生が4割ぐらいだそうですが、私が入学した頃は、学年に30名弱で、全体の一割くらいでした。大学時代は4年間とにかくいろんな体験をしようと思って、フォークソング部では札幌の教育文化会館でライブをしましたし、様々なアルバイトもしました。当時は就職氷河期で、女性は結婚まで腰掛け程度で働いて寿退社するものだと思われていた時代だったので、働く期間の短い「大卒女子」というだけで、面接をしてもらえないこともありました。やはり「資格」があったほうがいいと考えていた時に、山本守之さんが書かれた「税理士になる法」という税理士になるためのバイブル的な本と出会い、資格を目指して日商簿記の検定を3年生の頃から受け始め、在学中に1級まで取得しました。


 

就職、結婚、出産、そして仕事復帰へ

 

卒業後は会計事務所に就職しました。仕事はやりがいがある反面、確定申告時期をはさむ12月から5月までの繁忙期はとにかく忙しい日々でした。仕事と平行して税理士試験の勉強も続け、卒業してから会計科目2科目に合格しました。そして、当時としては平均的な24歳の時に、公認会計士をしている夫と結婚し、妊娠8か月くらいまで働いた後に仕事を辞め、しばらく2人の子育てに集中しました。子どもが少し大きくなると、一般の会社の経理事務や、保険会社の財務の仕事をパートから始めていきました。当時は保育園も少なかったので、子どもの夏休みや冬休みは児童会館を利用しましたが、周囲には「可哀想にね」と言われて後ろめたい気持ちにもなる時代でした。その頃の仕事にもやりがいは感じていましたが、「やはり税理士になりたい」と思い立って再び真剣に勉強し、子どもが大学生になった平成17年に税理士登録することができました。

 

税理士としてスタートし独立

 

税理士にはなったものの、実務としてはブランクがありどうしようと思っていた時に、今の税理士事務所の代表から、「家賃は負担してあげるから独立してやってみたら?」と勧められ、独立することになりました。ただ、独立と言っても、今の会計事務所の中に机をひとつ置き、電話だけひいてもらったレンタルオフィスのようなスタートでした。初めは、お客様である「関与先」はゼロなので、高校や大学の友人、ママ友などに開業のあいさつ回りをするPR活動をしたり、異業種交流会に参加したりしました。

 

税理士はサービス業

 

税理士の仕事は、関与先の帳簿を付けて税務申告をして…など事務職のイメージが強いと思いますが、典型的なサービス業だと思います。月に1回関与先に伺う時には、突っ込んだ経営や管理のこと、どうやって売り上げを伸ばしたらいいか、さらには子どもの進学相談や両親の介護のことまで相談を受けることがあります。たとえば、関与先のひとつに陶器の会社があり、「販売先の開拓をしたい」と言われ、自分の趣味である旅行の経験を生かして、「あそこのホテルの売店はイメージがいい、空港のあのショップは雰囲気が合うのでは?」などアドバイスをして、その企業の製品が実際に店頭に並んだ時は嬉しかったです。

 

どんな人が税理士に向いているか

 

税理士の仕事は、関与先の顧問をして会計や税務申告・税務相談を行うのがベースですが、多岐にわたる相談を受けます。先ほどのエピソードのように会計や税務とは全く違う相談も受けますので、遊びも含めていろいろな経験をしてきた人や情報の引き出しをたくさん持っている人、人と会うことが好きな人、ストレスがたまりにくい人は、特にこの仕事に向いていると思います。そしてなによりも「経営者の悩みを他人事だと思わない心」が必要です。

 

現在の「税理士法人アグス」での仕事

 

試行錯誤しながらも、独立開業して1年後には関与先が20社くらいになりました。それらをすべて一人で担当するのは大変なので人を雇おうかと思った時に、今の代表から一緒に税理士法人をやろうと声をかけてもらい、平成18年から社員税理士になりました。

 

 

受講生から「社員税理士とはなんですか?」という質問がありましたが、「社員」は税理士法人の役員のことで、資格者のみ社員になることができます。一般的な企業の取締役というイメージです。従業員は30人ほどおり、私を含め4名が小樽商大出身で、グループ企業の「社労士法人アグス」の代表はやはり商大出身の女性です。現在私はこの法人で、月1回「巡回監査」として関与先に伺いまして、会計をチェックしたりいろいろな相談事を受けています。この他、関与先の決算月に税務申告を行ったり、相続税がこれから改正になるのでその対策や、12月には年末調整、1月から3月までは個人の確定申告と、ちょうどこれからが忙しくなります。

 

税理士になるにはどうしたらいいか

 

税理士になるには、会計科目の簿記論と財務諸表論の2科目、税法科目から3科目、合計5科目に合格しなくてはなりません。税法科目は3科目のうち、所得税法か法人税法のどちらかが必須の選択で、それぞれの科目の合格率はだいたい10%くらいです。独学では厳しいと思うので、たいてい専門学校で勉強する方が多いです。一度に5科目合格する必要はなく、毎年1科目ずつ合格することも可能なので、結婚・子育てしている女性にとっても受験しやすいと思います。全国で7万4千人税理士がいると言われていますが、女性はそのうちの10%で、だんだんとその割合は増えてきています。他に、公認会計士や弁護士になった方が税理士登録をすることも可能ですし、大学院で税法や会計を学ぶと科目免除を受けることもでき、複数のルートから税理士になることができるので、それぞれのライフスタイルに合わせて選択するといいと思います。現在、アグスで働いている従業員の中には、働きながら専門学校に通って5科目合格した人もいますし、有休を使いながら大学院に通って学んでいる人もいます。ただ、どんなルートで税理士になろうと、実際に税理士になってからが勝負だということは言うまでもありません。

 

さまざまな女性の生き方

 

一昔前までは、女性は専業主婦として家事・育児を担当するのが当たり前のように思われていましたが、今はずいぶん変わりました。家事が好きな人は専業主婦の道もあり、仕事が好きな人はずっと働けばいいと思いますので、自分の好きな道を選んでほしいです。職業柄、いろいろな女性の経営者と会いますが、子供を育てながら会社を経営している方や、離婚してシングルになってから起業した方など、悩みはあっても生き生きと仕事をしている方は経営もうまくいっていて、いつもパワーをもらっています。こんな風に女性たちが頑張っているとはいえ、まだまだ女性の働く環境が整っているとは言えません。特にご年配の男性の中には、「家事・育児は女性がするもので、家を守るのは当然」と思っている方も多いですし、無認可の保育所が多いなか、料金の安い認可保育所に子どもを預けるのは順番待ちで大変です。皆さんのアンケートに「働いていて、女性に不利だと思うことはあるか」という内容がありましたが、若い頃はそう思うこともありました。ただ、最近は偏見の少ない若い経営者も多いですし、女性の社長は女性の担当者を希望することが多いので、税理士の資格さえ持っていれば、男性も女性も変わりなく仕事ができるようになりました。

 

 

晩婚化や少子化について思うこと

 

昔と違い、今は結婚・出産は自由になりました。個人の自由を尊重しつつも、若者が「結婚したいな、子どもを育ててみたいな」と感じる社会にすることが大事だと思います。少子化対策については、税金の負担軽減、児童手当の増額、保育所を増やすなど言われていますが、私は、「子どもは社会の宝であり、社会全体で育て、サポートする必要がある」という意識改革が必要だと思います。いくら保育園を増やしたり手当を厚くしたりしても、「子どもは母親だけが育てるものだ」という認識がある限り、子どもを産みたいという女性は増えないと思います。社会や家庭での協力がとても重要で、男女関係なく、社会全体がみんなで子どもを育てるという方向に向かってほしいです。女子学生の皆さんは、これから働いていく中で何度か選択をしなければいけない時期があるでしょう。徐々に良くはなっていても、まだまだ日本は女性が出産・育児をしながら働きやすいとは言えないと思いますが、仕事も頑張って続けてほしいし、人生のパートナーが見つかれば結婚してほしいし、子どもを授かれば楽しんで育ててほしいし、欲張って生きてほしいです。

 

最後に…

 

先日、関与先の社長さんと出張に行った際、新潟県魚沼市の永林寺に行ってきました。このお寺には、日本のミケランジェロと言われる石川雲蝶さんの彫刻があるというので見に行ったのですが、そこにこんな言葉がありましたので、最後に紹介します。

10代は楽しく

20代は美しく

30代は強く

40代は賢く

50代は豊かに

60代は健やかに

70代は和やかに

80代は愛らしく

私は今50代ですので、楽しく仕事をして美しい心を持ちたいし、時には強い心で賢く豊かな人生を後悔のないように過ごしたいと思っています。ご清聴ありがとうございました。

 

<質問より抜粋>

 

Q 結婚し、子どもを産んだ後も働き続けたいが、日本では出産後仕事に復帰しづらいのでは?[3年女子]

 

A 初めから女性が働きやすいところを選んで就職するという選択もある。有名だから、大手だからではなく、働いている先輩からの生の話を聞いてから就職したほうがいい。今は大卒女子の実力もきちんと見てくれるし、企業側も長く働いてくれる女性を待っていると思います。

 

Q 学生時代に簿記1級まで取られた時や、社会人になられてから税法科目を勉強したとお話していましたが、どのように勉強されたのか?[4年女子]

 

A 簿記は元々好きだったので、参考書で勉強しました。社会人になってからは、大原専門学校に週2回通って休日に勉強しました。税法の暗記をラップ調でやるなど、なるべく楽しく勉強するように心がけていました(笑)。ナーバスになるより、ちょっとした工夫で勉強は面白くできると思います。

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