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エバーグリーンからのお知らせ

2018.10.10

平成30年度 第1回講義:「地方行政をマネジメントする—自治体運営の現状と展望・地方創生に向けた取り組みの現場から」

講義概要(10月10日)

 

○講師:加藤 剛士 氏(平成5年商学部管理科学科卒/名寄市長)

 

○題目:「地方行政をマネジメントする—自治体運営の現状と展望・地方創生に向けた取り組みの現場から」

 

○内容:

日本各地の自治体は、高齢化と人口減少に苦しんでいる。このままではやがて地方が消滅するという衝撃的なレポートが発表されたのが2014年。そうしたダウントレンドへの対抗軸として構想されたのが「地方創生」という国の政策だ。生まれ故郷の市長となった立場から、地方創生の現場でふるさとの未来を見据えて取り組んでいることを解説したい。

 

 

 

地方創生の現場から地域と日本を考える

 

 

加藤剛士氏(平成5年商学部管理学科卒/名寄市長)

 

 

 

 

国難としての人口減少

 

 

 

私は典型的なUターン人生を歩んでいます。名寄で生まれましたが、子どものころは名寄を出たくて仕方がありませんでした。高校で旭川に行き、そこから商大で4年間学びました。そして東京の生命保険会社に就職したわけです。しかし東京で5年間暮らしながら、故郷に帰りたくなり、父が経営する企業(ホテル・飲食業)に入りました。若いときにはあれだけ飛び出したかったふるさとですが、東京から見るとなんてすばらしいところなんだ、と気がついたのです。そしてたくさんの方に応援をもらって2010年に名寄市長選に立候補して、市民の皆さんに認めていただき当選することができました。39歳で、当時は道内最年少市長。しかし翌年夕張市で鈴木直道市長が31歳で当選したので、記録は大幅に破られてしまいました(笑)。

今日は、現在の自治体が抱える重たい課題や、これからの可能性を、現場の声として聞いていただきたいと思います。

 

いま全国の各地が共通して抱える重大な問題は、住民が高齢化して人口が減っていくことです。日本の人口は、10年前の2008年がピークで、1億2808万人。いまはそこから3百万人ほど減っています。百万都市3つ分ですね。10年前から、有史以来はじめて人口が減り始めた日本ですが、生産年齢人口(15歳〜65歳未満)は実はすでに20年前から減っていました。1998年の8700万人がいま7600万人くらいになっています。ですからどの業界でも、人手不足が起こっている。日本は90年代はじめにバブル崩壊といわれる不況期に落ち込み、30年近くそこから立ち直れないでいるわけですが、2008年にリーマンショック、2011年の東日本大震災などがあって、人手不足の実態は混乱に埋もれていた感があります。しかしこの5年くらいでその問題がいよいよ顕在化してきて、いま一気に目の前に現れている。人口減、とりわけ生産年齢人口減による人手不足。これは国難と言えるほどの事態です。

 

話が大げさだと思う人がいるかもしれません。人口が減っていくとなぜ問題なのか—。それは、端的にいった経済から文化や福祉まで、社会全体がまわらなくなってしまうからです。社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の研究では、もしいまの出生率がずっと続くと、百年後の日本の人口は5千万人くらい。3百年後にはなんと5百万人を切ってしまいます。そこまでいけばもう日本消滅です。

出生率という言葉を使いました。人口に対する出生数の割合です。正確には合計特殊出生率といって、ひとりの女性が生涯に産む子どもの平均的な人数。その時点の人口を維持していくためには、これが2.07以上なければなりません。でもいまの日本は1.44しかありません。

私が生まれた1970年には2.13ありました(団塊の世代が生まれた終戦直後は4以上)。出生率はなぜ下がっていったのでしょうか。

大づかみでいえば、経済成長によって大都市に人口が集中して、核家族化など家族の形態が変わりました、一方で女性の社会進出があり、さらには子どもをおじいちゃんおばあちゃん、さらには地域全体で育てるという環境がなくなってしまいました。大都市圏ではそれが顕著ですね。東京の合計特殊出生率は1.24で全国最低です。これはなんとなく納得できますね。そして次に低いのは、なんと北海道で1.29。さらに、全道人口の三分の一近くがいる札幌に限ると1.16。一方で東京も札幌も、まだ人口が増えています。札幌の場合は主に高齢者です。出生率の低い都市に人口がいびつに集まってしまうので、全体の出生率が下がってしまうのです。大都市が出生率の足を引っ張っている。これが実態です。

ではどうすれば良いでしょうか。

道内外の中小都市が、東京や札幌に人口が流出していくのを止めれば良いのです。全国のそれぞれのまちが個性豊かに人々を引きつけて、このまちでずっと暮らしたいと思う人を増やしていく。極への集中をやめて、魅力的なまちが自立的に分散して国全体を成り立たせていく—。「地方創生」という考え方の核心はそこにあります。

 

先日(2018.9.6)の胆振東部地震では、厚真町などの大きな被害に加えて、北海道全体が停電してしまうという前代未聞の事態がありました。効率を求めるあまり進めた過度な一極集中(厚真火力発電所)の発電の仕組みが、結果的にシステム全体をとても弱いものにしてしまっていました。名寄でも多くのまち同様、停電でミルクが搾れないために乳製品がスーパーの棚から消えてしまいました。しかし理不尽なことに、牧場では出荷できないミルクを捨てていたという事実があります。飲食店も、全国チェーンの店よりもまちの定職屋さんの方が復旧は早かった。小回りの効くローカルな形態は、多少効率は悪くても、リスクには強いのです。首都圏や関西圏でも大地震の可能性が具体的に懸念されている今日、日本列島全体として集中しすぎた人口をばらしていかなければなりません。そのために、中小都市は自らもっと魅力的になっていかなければならないのです。

人口が減らない社会を作るために、出生率を上げるほかに手はないでしょうか。いえ、例えば外国から移民を受け入れるという方法もあります。世界全体で見れば、現在の人口73億人に、毎年1億人ほどさらに増えています。日本はこれまで原則として、専門的な技術や知識をもつ高度人材を除いて移民を受け入れてきませんでした。政府は新たな在留資格を設けて、この枠を農業や建設といった分野にまで広げようとしています。これが実現すれば年間10万人くらいに増えていくようです。しかし日本の人口は年間50万人のペースで減っています。移民ではやはり足りません。

また、AIやIoTなどに代表される科学技術の進歩によって働き手不足はなんとかできる、という考えもあるでしょう。しかし、技術が人間自体を生み出すわけではありません。だから抜本的な解決にはならないのです。人口を増やすためには、出生率を上げること。これにつきます。口で言うのは簡単ですが、これがどれほど難しいことか。私は行政の現場でそのことを痛感しています。

 

 

ウィンタースポーツにフォーカスした名寄市の取り組み

 

 

全国スケールのことを説明してきましたが、ここからは名寄市のことを皆さんに知ってほしいと思います。

名寄市は旭川から北へ70キロほどで、人口は2万7700人あまり。基幹産業は農業で、とくにもち米の生産は全国の1割を占めます(稲作の北限地帯なのです)。名寄のもち米は冷めても硬くなりにくいので、伊勢(三重県)の「赤福」のように、全国の和菓子にたくさん使われています。あの「雪見だいふく」にも使われています。

ほか、グリーンアスパラの生産量は実は道内一番。かぼちゃは2位で、スイートコーンは5位。残念ながらあまり知られていないのですが、天塩川流域の名寄盆地は寒暖の差が大きいので、甘くておいしい野菜ができるのです。近年はひまわり畑からひまわり油を取っています。また天塩川と名寄川の合流点に生まれたまちですから、開拓時代から交通の要衝でもあります。日本海とオホーツク海を結ぶ中継地として、いま鉄路は宗谷本線だけですが、かつては名寄駅には名寄本線と深名線も結ばれていました。

名寄市立総合病院は上川北部地域の中核病院で、日本最北の救命救急センターがあります。また1960年創立の名寄女子短期大学がもとになった名寄市立大学(4年制)は日本最北の公立大学で、自衛隊名寄駐屯地も、日本最北の陸上自衛隊駐屯地です。

名寄もまた人口が微減する都市ですが、近年の取り組みによってそのペースの歯止めがかかりつつあります。その主な取り組みを説明します。

 

 

力を入れているのはまず、「関係人口を増やす」取り組みです。

 

 

市民の人口が増えるのがベストですが、出生率を上げたり移住民を増やすのは、容易なことではありません。そこで私たちは、どんな形でも名寄に関わる人を少しでも増やそうと考えています。それは例えばふるさと納税をしてくれる方、農産物を買ってくださる市外の方、旅行者、スポーツ合宿で滞在する若者たち、名寄とビジネスをしてくれる企業など。つまりSNSでいうフォロワーを増やす挑戦です。

 

とりわけ私たちは、厳冬期にはマイナス30度にも下がる日本有数の寒冷積雪地という立地を活かして、まちを日本のウィンタースポーツの拠点にしようと考えています。私たちは20年ほど前から、名寄のパウダースノーは日本一だ、と全国にアピールしてきました。そしてスキー場やジャンプ台、クロスカントリーのコース、カーリングホールといった施設を充実させながら活用して、大学・実業団の合宿や全国レベルの大会の誘致に取り組んでいます。

ウィンタースポーツの合宿による市外の選手・関係者の宿泊数は、ここ数年で2.5倍ほどになり、昨シーズンは8千人を超えました。

 

今年(2018)3月には、JOCジュニアオリンピックカップ(全日本ジュニアスキー選手権大会兼全日本小・中学生選抜スキー大会・ノルディック種目)を開催しましたが、3回目の開催でした。冬季国体もこれまでに2回開催しました(1979年・2003年)。今年の1月には、名寄市北国博物館で「名寄ゆかりの冬季五輪選手と国体メモリアル展」といった企画展を開催して、市の内外にウィンタースポーツの拠点としての名寄を訴求しています。こうしてほかのまちにはない、名寄ならではの個性にフォーカスした施策を展開しているわけです。

雪と氷は世界中にありますが、本当にスキー・スノーボードに適した上質な雪が降るのは、世界中で、ヨーロッパ・アルプス、北米のロッキー山脈、そして日本の山岳地帯、この3つしかないと言われています。意外に思われるかもしれませんね。そして一方で、温暖化の問題がある。本州方面ではもう3月に大会を開くことは難しくなってきています。しかし名寄なら十分に余裕を持って可能です。温暖化は、名寄のような厳寒の地の背中を押してくれる絶好の好機でもあるのです。

 

またいまアジア圏でウィンタースポーツが盛り上がっています。台湾にできたカーリングのチームがこの冬は名寄のカーリングセンターで合宿することになっています。そして2022年に北京で冬季五輪を開催する中国でもスキーブームが起こっていて、中国は国策としてスキー人口を10年で3倍にして、大規模スキー場を新たに300カ所作る、などという話を聞きました。しかしほとんどが人工雪のスキー場です。人工雪でスキーを覚えた人たちは必ず天然雪で滑ってみたいと思います。そのときとてもたくさん日本に来てくれるでしょう。ニセコや富良野にはもう余地がないかもしれません。名寄を売り込む大きなチャンスです。

 

2016年、名寄市はリレハンメル・オリンピック・ノルディック複合の金メダリストである阿部雅司さんに、特別参与という役職で市の職員になってもらいました。スポーツ振興アドバイザーとして、ウィンタースポーツをめぐる市の施策の立案や実務に関わってもらっています。合宿や大会の増加も、こうしたことが功を奏しているわけです。一方で、スポーツはアスリートのためだけにあるのではありません。私たちはウィンタースポーツを、医療と健康、そして教育の分野に結びつけながら、合宿の誘致などに医科学的なアプローチを取り入れたり、子どもたちの体力アップや心の成長にも結びつけています。近年はノルディックウォーキング、モーニングラン、ナイトランなどを楽しむ市民のサークル活動が盛んで、昨年からはじまった冬のマラソン大会(なよろサンピラースノーマラソン大会)も話題を集めています。医療の面では、市立総合病院を核としてスポーツと医療を組み合わせたヘルスツーリズムの振興も視野に入れています。

地域の個性的な産業文化としてウィンタースポーツを位置づける私たちは、その象徴的な意味を込めて、国が現在構想しているウィンタースポーツのナショナルトレーニングセンターの誘致にも取り組んでいます。

 

 

まちに大学がある意味

 

 

ウィンタースポーツに加えて、重点施策のもうひとつの軸が、「名寄市立大学を活かしたまちづくり」です。名寄市立大学は、日本で最北の公立大学で、(源流は戦前にさかのぼりますが)1960年に創立した名寄女子短期大学を2006年に4年生大学として再編しました。保健福祉学部1学部からなる、保健師や管理栄養士、社会福祉士、幼稚園や特別支援学校の教諭など、国家資格をもつ職業人を養成する大学です。来季には学生数が800人ほどになります。人口3万人弱のまちで800人の学生は、とても大きな存在といえます。女子が8割で、地元からは毎年5%ほどしか入れない、高いレベルをもって道内外に開かれた学びの場であるといえます。

「関係人口」の文脈で言えば、この大学は名寄の関係人口を確実に増やすことができます。2年前には学内に「コミュニティケア教育研究センター」というシンクタンクを設立しました。名寄市を中心にした道北地域との協働によって、保健医療福祉、保育、教育、産業の振興などに関する課題の発見と解決に取り組む組織です。

この大学は、成り立ちの基盤を地域との関わりに置いています。学生は特別支援教育のサポートや子ども食堂の運営に関わったり、商店街活動や町内会の行事などに積極的に参画することでも単位が認定されます。単位を離れてそうした場にボランティアとして関わる学生も少なくありません。農業の現場などでのアルバイトも、まちにとって大切な働き手です。また厚生労働省のジョブコーチ(障害者職場適応緒サポート)養成研修の場として、研修会には道内外から人々が集います。

 

市立大生の9割は卒業後に市外に出ます。地元に受け皿が足りないので、残念ですが仕方ありません。でも例えば名寄を離れて道内で活躍する保健師は60名以上います。同窓会組織も活発に活動していますから、かれらが道内外で活躍してくれることで、名寄の関係人口は確実に厚みを増していきます。来年度からは、ふるさと納税を同窓会への寄付としても活用させてもらうことになりました。その一部は奨学金に充てます。これは地域の公共性に根ざした公立大学だからこそできる仕組みです。

 

 

広域行政の選択と集中

 

 

人口が減っていく厳しい時代を、地方行政はどのように乗り切ることができるのか、具体的な施策の方針について話してきました。ひとつは、これまで述べてきたように「関係人口を増やす」ことです。そしてもうひとつあげたいのが、政策の「選択と集中」です。

この背景には、人材や財源という限られた資源をどのように効率的に活かして行くかという難問があります。名寄市ではいま、「立地適正化計画」を進めています。住宅地、商店街、公共的な都市機能のあるエリアといった、市内のゾーニングのそれぞれに拠点を再設定することで、まちづくりの計画面積を効率的に減らしていくのです。また市内にはさまざまな公共施設がありますが、これらの総面積を、集積したり複合化、あるいは民間との協働によって、ゆっくりと削っていく計画が進められています。建て替えなどのタイミングでこれを図るのです。

行政サービスと公共施設の集積化や複合化をめざす「選択と集中」では、市内に限らず、周辺の自治体が広域の連携を組むことが欠かせません。例えば名寄市立総合病院にはいま70人以上のドクターと740人以上のスタッフがいて、四国に匹敵するほどの医療圏を受け持っています。周辺自治体にドクターを派遣したり、市外から患者さんを受け入れるのでこの規模があります。広域圏の中で医療資源を名寄に集積することで、まわりの自治体は医療分野の予算を軽くして、その分ほかの分野に当てることができる。

高等教育の分野では、名寄市立大学がそうした中核の位置づけにあります。各自治体がそれぞれの得意分野を担って共有しあえば、広域の行政を全体として効率的にまわしているわけです。観光も、まさに広域の連携が欠かせない分野ですね。道北ではいま、広域連携でサイクルツーリズムの振興に取り組んでいますし、日本有数の大河天塩川を活かした自然体験型観光を盛り上げようとしています。

 

地域連携ではもっと大きなスケールのことも実践されています。名寄市は東京の杉並区と交流自治体協定を結んでいて、物産展やツアー、スポーツ交流などを重ねています。ちなみに杉並区は静岡県の南伊豆町とも協定を結んでいますが、南伊豆町に杉並区民専用の特別養護老人ホームを作って話題を呼びました。都内ではコストがかかりすぎてできないことを、交流する自治体の協力を得て実現したわけです。

 

強調しておきたいのは、「選択と集中」は、机上のプランだけで進められない、ということ。ほかのまちと連携するのであればなおのことです。選択に洩れたことで短期的に不利益をこうむる人たちが必ず出ます。そういう方々も納得するような合意を形成していくための情報の公開と、市民と行政、市民同士の議論が欠かせません。時間がかかっても、これを疎かにしてはならない。いまは少し不便になるけれど、名寄が元気な名寄であるためには仕方がないな、と受け入れる覚悟を持たなければならない局面が誰にでも来ます。そして、たくさんの話合いの中からは、行政任せではなく自分たちの手で主体的に地域を動かしていこうという気持ちがいっそう自然に育まれるでしょう。自治の精神がこうして鍛えられていくことがとても大切なのです。

 

「地域愛」を強く持つ人が暮らすまちは強いまちになります。経済や人口の規模、公共施設の優劣といった表面的な数字とは別の次元で、自分が暮らすまちを誇りに思えるかどうか。そのために関係人口を増やして、まちの特色や個性をさらに伸ばしていく—。住民の皆さんには、まちの先人たちが何を考えてどんなことをしてきたのかを、あらためてちゃんと知って敬意を抱いてほしい。そのことを正しく具体的に伝える、子どもたちへの教育もとても重要です。

 

地方創生は、単なる地方のエゴではありません。日本の人口がどんどん減っていく時代。これからは大都市集中を止めて、全国の各地域が自治の精神と自立の方法を磨いていくことではじめて、日本という国が持続的に成り立っていくことができます。そうして育まれる地域愛の基盤があってこそ、愛国心も自然に芽生えていくはずです。

 

最後にひと言。名寄市役所は、若い優秀な人材を求めています。いま6人の商大卒業生が活躍していますが(私を入れると7人)、皆さんの針路の選択肢にどうぞ名寄市もいれて見てください。私の話は以上です。

 

 

 

 

<加藤 剛士 さんへの質問>担当教員より

 

 

Q 学生諸君が講義に臨む前の課題図書として『地方消滅(増田寛也)』を上げられました? その狙いは?

 

A 今日私が話したことは、この本が述べている内容を道北の現場から説明したものと言えます。人口が減る一方では、とりわけ地域に若い女性が減っていくと出生率の低下がさらに進み、やがてその地域は消滅してしまうかもしれない。国難であるそのたいへんな問題に対して名寄市がどう取り組んでいるのかを話したいと思いました。

 

 

Q 自治体間の個性競争はさらに進むと思われます。今後のビジョンを聞かせてください。

 

A どんなまちでも、オンリーワンは必ずあります。大事なのはまちの主体性です。そのためには先人が積み上げてきたことをしっかりと踏まえて、市民の皆さんの地域愛をさらに育んでいきたいと思います。一人ひとりの心に自ずから育ってくる地域愛。それがすべての基盤になります。

 

 

 

 

<加藤 剛士 さんへの質問>学生より

 

 

Q 東京で暮らして気がついたふるさとの良さとはどのようなものでしたか?

 

A 人と人のつながりですね。厳しい自然の中で、人と人がつながって暮らしている実感が持てます。東京で生まれ育った人なら東京でそういうことを感じていられるのでしょうが、私には無理でした。毎日通勤だけに3時間かかる生活になじめなくて、ここで結婚して子どもを育てられるだろうか、と悩みました。ただ、名寄の良さを知ったのは名寄を出たからこそ、でした。若い人が一度ふるさとを出ることには意味があると思います。

 

 

 

Q 市長になって良かったことは? そして投げ出したくなるときはありませんか?

 

A 行政には、たくさんの当事者や関係者が複雑に関わり合っています。ですからことが何の問題もなく進むことはあまりありません。その意味で一瞬投げ出したくなるときは、たくさんあります(笑)。しかし次の瞬間には自分を奮い立たせます。私の仕事は、自己否定と自己肯定の繰り返しです。いま思えば初当選のころは無我夢中で、ノリでぶつかっていったこともありました。3期目の今は、いろいろな責任をさらに実感しています。市長になって良かったことは、この立場で、超有名な方から知られざるユニークな人など、いろんな方と直接話ができることですね。

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